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騎士たちの再会とそれから

 三キロほど離れた農村部に到着した俺たちは、他の騎士立ちと合流することになっていたため、予定していた場所にモフモフを着地させる。


 すでに到着していたらしい騎士たちは俺らの姿が見えるなり、跪いていて出迎えているため俺の顔を引きつらせた。


「ご無沙汰しておりま……」


「いい。楽にしてくれ」


 魔女様を抱えたまま着地をし、余計なことは控えてくれと頭を抱えたくなりながら彼らに向き合う。


「彼女が王宮の魔女様の孫娘のフローラ様だ。失礼のないようにしてくれ」


 彼女を傷つける者は何人なんびとたりとも許さないという視線を向けつつ彼女を紹介する。


「フ、フローラです。今日はよろしくお願いします」


 自分の足で地面を踏み、おずおずと彼女が頭を下げる。


 銀色のリボンでまとめられた長い黒髪がぴょこっと動き、可愛い。


 騎士たちが息をのんだのがわかり、もし失礼なことをぬかそうものなら許さん……と思った時だった。


「よ、よろしくお願いします!」


「フローラ様、はじめまして!」


 わっ、と声色を変えた騎士たちが口々に声を上げ、表情を明るくする。


 予想とは違い、場が和んだ様子にホッとしたが、これはこれで非常に気に障る。


「おい。馴れ馴れしくするな」


「わー、隊長ぉぉぉお!!! お久しぶりです!!!」


「会いたかったっす!!」


「あれ、ちょっと前より男らしくなってません?」


 彼女を無粋な騎士たちから守ろうと前に出るも今度はこちらがしがみつかれることになる。


 懐かしさもあって不覚にもにやけてしまうのをぐっとこらえる。


「背が伸びましたね!」


「毎晩激痛に悩まされたよ」


「ますます隊長のファンが増えそ……いえ、支持者が増えそうですね」


「隊長、顔っ! 顔!」


「わっ、美形が台無しです!」


「……失言には気をつけろ」


 王宮で騎士として活動してきたときはこうして彼らと冗談を交えながらともに背中を預けてきていた。憎めないやつらである。


 が、彼女の存在を忘れて浮かれているわけにはいかない。


「魔女様、騒がしいやつらですみません」


「あなたの同僚の方ですか?」


「そうです。王宮にいたときは世話になっていました」


「頼もしいですね」


 昨年の春と違うのは、彼女が柔らかな笑みを見せるようになったようだ。


 見た目は全身真っ黒な黒装束ではあるが、俺の中ではまるで春の妖精のようだ。


「……おい、にやにやするのはやめろよ」


 元部下たちからの視線も忘れない。


「いやいやいやいや、噂は本当だったんだなぁと思って」


「噂?」


「隊長がフローラ様にぞっこんであの森に匿って独り占めしてるって」


 騎士たちはこの上なく楽しそうに顔を見合わせて笑う。


「そ、そんなことになっているのですか? 違います、彼はちゃんと騎士として……」


「大丈夫ですよ、魔女様。まぁ、本当のことです」


「ち、違うでしょう。こういうのはちゃんと訂正しないと……」


「確かに。誰がそんなことを言いふらしているんだ? ……まぁ、いい。俺のことはどうでもいいが、彼女にとって不名誉な噂であれば聞き流してくれ」


 だいたいはわかる。


 俺の動向を把握している人たちはだいたい知れている。


「噂の発信元に遭遇したら伝えてくれ」


「いや、直接聞こう」


「えっ……」


「言いふらしたのは、わたしだ」


 まわりの騎士たちがすぐさま跪き、振り返った時にひとりの男と目が合った。


 アベンシャール国の第三王子がそこにいて、げっ!と漏らさなかっただけ褒めてほしいと心から思った。

 

 




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