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呪われた森と現れた騎士

「うわっ……」


 さすがに馬がその森に足を踏み入れたとき、声が漏れていた。


 その日はとても良く晴れていて、まさに乗馬日和だった。


 出発をしたときはまだ少し肌寒いように思えたものの春の日差しに照らされ、馬を走らせているうちに少しずつ汗ばんできたのがわかった。


 明るい、希望に満ちた一日だ。


 そう思えたほどだった。


 ほんの数分前までは。 


 太陽が消えた。


 雲が出てきたわけではない。


 木々が日差しを遮っているのだ。


 徐々に光が失われていく。


 同時に霧も現れ始めたため、さすがに不気味さを感じられずにはいられなかった。


 いつの間にか、温度が下がっていた。


(本当に、こんなところに……)


 人が住める場所とは思えなかった。


 何度か人が変わったように奇声を上げて逃げ帰ってきた騎士のことを思い出した。


 再び戻されそうになり、大人気なく泣きわめくものもいた。


 彼らはこの土地に監視役として送られるたび、恐ろしい形相で戻ってきた。


 ある者は病に倒れた。


 噂が噂を呼び、この地に行くことを拒む騎士が増えた。


 誰もが拒絶を繰り返すこのタイミングを機会と捉えた俺は、逃すことなくこの地へ行くことを騎士として志願した。


 もちろん、父も母も反対した。


 やるべきことはまだまだあった。


 兄たちに頭を下げた。


 強くなりたいのだと説得した。


 向かうなら今しかないと思ったからだ。


 半ば反対を押し切る形でここは向かう許可が下りた。


 二人体制で向かう予定だった監視役もなかに相方が見つからず、待ってなんていられないとしびれを切らした俺は、一人で馬を走らせることになった。


 弱音なんて吐いていられない。


 呪いがなんだ。


 自分ならそんなものを吹き飛ばしてやれると信じていた。


 強くなりたい。


 もっともっと強くなって、大切な人を守りたい。


 願いは何よりも強かった。


「あと少し!」


 自身に言い聞かせるように大きな声を上げるとあちこちにこだまして、さすがに気味が悪くぎょっとしたものの、曇りかけていた心が少しずつ晴れていく気がした。


(あと少し!)


 馬は走る。


 走り続ける。


 この森にたどり着くには、この馬が必要だった。


 この馬しか森の奥に導かれないようになっていた。


 一日かかるか二日かかるか、はたまた一ヶ月かかるかもしれない。


 そう言われていたのに、半日も経たないうちにこの地にたどり着けたのは幸運だった。


 この森は、人を選ぶ。


 そして、この馬は森の奥に住む恐ろしい魔女のもとへと導く、唯一の馬だと言われていた。

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