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昼下がりはガーデニングを

「魔女様、庭で野菜を育てたいのですが、お許しいただけますか?」


 思い立った気持ちをそのまま告げると、彼女は驚いたように顔を上げる。


「食べ物は王宮から届けてもらっていますが、できるだけあなたに採れたてのものを食べてもらいたいと思って」


 それから……といつかの未来を想像し、続ける。


「果実の実る木も植えたいし、景色を一変させるくらい美しいお花も植えたいんですよ」


 ダメですか?と尋ねると、彼女はぴくっと飛び上がったのちにふるふると頭を振った。


「良かった! ここは広い土地なので、きっといろんなものが育てられると思うんです」


 まぁ、天候が天候のため、うまく育つかは定かではないが、そのあたりは王宮の魔女に相談しようと思う。


 何が起こるかわからないこのご時世で、自分たちの口にするものくらいはなんとかしたいと考えていた。


 できるかできないかはわからなかったけど、試してみるに越したことはない。


「日中、結構時間をもて余すことが増えたんです。新しいことができると嬉しいです」


 思ったままの気持ちを伝えると、彼女はぽかんとした様子でこちらを見ていた。


「魔女様もよかったら一緒にどうですか?」


 普段、室内にこもっている彼女だ。


 いつも何をしているかはわからないが、せっかくなら外へ出るきっかけを作れたらと軽い気持ちで誘うも勢いよく首を振られる。


 俯いた頬がまたほんのり赤く染まっていたため、嫌な気持ちはしなかった。


 早速王宮に宛てた手紙を書こうと意気込んだとき、ちょうど窓の外から「クククククッ」という声がして、あの丸い鳥がやってきたことを悟った。


 窓の外をふよふよと自由に飛んでいて、ますます彼女は困惑した様子だ。


「魔女様、ご紹介します。あちらの生き物が王宮からの荷物を運んできてくれるのですよ」


 見に行きますか?と尋ねる前に彼女は立ち上がり、窓のそばへ寄る。


「荷物を置いたら触れることもできるくらい小さくなりますよ」


 なんという生き物なのかはわからないが、深い深い強く結界の張られたこの地に難なくやってくる不思議な生き物だ。


 彼女に危害を加えることはないだろう。


「話しかけてあげてください」


 そう言って扉に向かうと、答えはしなかったものの興奮した様子の彼女がついてくる。


 表情は相変わらず長い前髪で見えなかったが、心なしかいつもよりウキウキしているように見え、自然と頬が緩んだのがわかった。

 

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