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プロローグ

『あなたが好きだと何度も思い続けるの』


 母がよく言っていた。


『その気持ちは嘘をつかない。その子を見て、好きなんだって心から思うの』


 俺は笑うことができなくて、感情を表すのが苦手な子どもだったから。


 母は、何度だって言った。


『心の中で、しっかりと伝えるの』


 そんなことできないと言うたびに同じ言葉を繰り返された。


 好きだと言葉に出来ないのなら、その子の前に立ったとき、心から思えばいいのだと。


『そうすれば、いつかちゃんと相手に伝わるはずだから』


 無理だよ。


 僕にはできない。


 何度言い返したって、母には敵わない。


 彼女は何度だって俺の頭を撫でて言い続けた。


『ジャドール』


 ある日、彼女は歌うように言った。


 異国の言葉だった。


『魔法の言葉を教えてあげるわ』


 それは、かつて母が父のもとに嫁いできたと同時に捨ててしまった言葉だということを大人になってから知った。

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