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復讐者の再生

　はい、第八話です。

　私生活の方が立て込んでいたため、投稿の期間がかなり空いてしまいました。

　コイツたるんでるなと思った方は、是非最後まで読んでいって下さい。

　初めて異形と対峙しているアレリウスは、想定よりも苦戦していた。

　明らかに普通では無い見た目と動きに加え、盾で攻撃を防ぐ度に感じる、もはや別種なのかと思う程のパワーにアレリウスは戸惑いつつも戦っていた。

「見た目同様、動きが全部異質だ・・・。だが、動きはもう見切った！」

　そう口にし、第四の腕に持った盾で異形の攻撃を弾き、巨大なランスで心臓部を貫いた。

　その直後、異形は無様に地面へ倒れ込んだ。貫いた箇所に心臓はきちんとあったらしく、一撃で仕留めることが出来た。

「ふぅ・・・。案外あっけないもんだな――」

　アレリウスは一段落した瞬間でも気を抜くことなく、後ろから聞こえた急接近する僅かな足音も聞き逃さなかった。

　とっさにその音の方向へ盾を向けた。そして盾を貫いたのはグリモリングではなく、人間だった。

「なっ・・・何だお前！？」

　アレリウスは後ろへ飛び退き、幻覚を見たかのように驚いた。幸いなことにその攻撃は第三、第四の腕に持った盾を貫いただけで、彼自身へのダメージは無かった。

　そして謎の攻撃の正体は、幻覚ではなく確実に人間だった。

　銀髪のロングヘアーに黒い面で顔を覆い、薄黒く軽い鎧を身に纏っている女性であり、人間であることへの確信が確かになって驚きがますます大きくなっていく。

　そしてその女は漆黒の鎧を纏った腕を振り上げ、剣をアレリウスへ向けて再び斬りかかってきた。

「だからっ！何なんだお前っ！？」

　女の攻撃は激しく、明らかに戦い慣れていた。

　身を躱しながら質問を続けるアレリウスに対して、女はこう言った。

「・・・貴様を殺しに来た。それだけだ」

　女は一言答え、今までよりも格段に速い一閃を放ってきた。

　アレリウスはランスで攻撃を防いだが、あまりの威力に体勢を大きく崩してしまった。地面に腕を付いて女が追い打ちをかけた瞬間、アレリウスの第三，四の腕が女の腕を掴んで受け止めた。

「この腕は飾りじゃねえんだ。きちんと意識してないと死ぬのはそっちだぜ！」

　そう言った瞬間、アレリウスは女の下方からランスを突き出した。しかし、全て読まれていたかのように、紙一重で躱されてしまった。

「これもダメなのか・・・！」

「やはり対人戦慣れしていないようだな。動きが簡単に読めるぞ」

　そこからのアレリウスは防戦一方。時々反撃に出るも、対人戦の心得があるわけでは無いため全て躱されるか弾かれ、相手からの攻撃を防ぐばかりだった。

「その腕は珍しいが、武器を一つしか持っていないなら脅威では無いな」

　そんな余裕を見せているものの、アレリウスが少しずつ自身の動きに追いついてきていることに、内心焦りを感じ始めていた。

　それでもランスは女には全く届かず、アレリウスが息を切らし始めた頃――

　突如として女の側面に大剣が飛んできた。

　とてつもない速度で突っ込んできた大剣をギリギリで躱した女だったが、剣の飛んできた方向からアセロンが走ってきて女を蹴り飛ばした。

　アレリウスは開いた口が塞がらなかった。

「そいつは俺が相手する！お前はリオラの方へ加勢してやってくれ！」

　アセロンがアレリウスの前に滑り込み、女との間に割って入ってきた。

「あ、あぁ・・・分かった」

　アレリウスは動揺しつつも武器を持ち直し、リオラの元へ走っていった。

『アセロン、奴は異形を引き連れて来た上、アレリウスの命を狙っていた。あの女と何か繋がりがあると見ておいた方がいいだろう』

『俺も少し考えていたところだ。戦いながら探っていくとするか』

　するとアセロンに蹴り飛ばされた女が起き上がってきた。

「貴様は確か・・・アセロンとか言ったな？仕留め損ねたとは情けない・・・」

「“仕留め損ねた”だ？お前、俺のことを知っているみたいだな。何が目的でこんなことをしている？その異形は何だ？」

「フン、そんなこと私を倒してから聞けばいいだろう？」

「確かにそうだな。いいぜ、かかってこいよ」

「さっきのは驚いたが、流石にそんな体で相手になる訳がない。それに武器は私の後ろにあって貴様は丸腰だ」

　挑発するかのように言ったアセロンとは違い、女は勝ちを確信したようにして言った。実際、アセロンも片腕しかない状態では対人戦慣れしたような勝つことはできない。そう、“片腕だけ”では。

　そしてアセロンは頭の内でこう言った。

『ノク、“あれ”をやるぞ』

『了解した』

　その直後、アセロンの欠損した左腕の先から、新たな左腕が生えてきた。

「ッ・・・！！」

　あまりの衝撃に女は絶句していた。

　そしてアセロンの顔を見ると左目が開いており、そこには眼球が復活していたのだ。

「貴様は・・・どうして“それ”が出来る！？」

　女は思わず聞いた。

「どうしてと言われても・・・俺だってよく分からねえよ。　俺は一度死んで、そして生き返った。その際にこの再生させる力を手に入れた。それぐらいしか知らん」

　淡々と説明になっていない説明をするアセロンへ、女は彼の大剣を渡すまいと攻撃を仕掛けた。その攻撃はアレリウスと戦っていた時よりもさらに速く、激しいものだった。

　アセロンはその攻撃を躱し続け、遂に反撃に出た。その反撃は、おおよそハンターと呼ばれる者に似つかわしくない、拳を相手の腹に叩き込むものだった。

　その攻撃は女の体勢を崩し、アセロンは続けて攻撃を浴びせ続けた。その拳は常人離れしており、女の鎧にひびを入れていき、兜を破壊した。

　兜が破壊されたことにより女の素顔が露わになり、女は地面に膝から崩れ落ちた。

「そのパワーは、まさか・・・！」

　女はまさしく虫の息と言わんばかりの息遣いだった。

「確かに、武器を使った対人戦には慣れてないさ。でも、こっちの方なら慣れてるんでな」

　すると突然、ノクがアセロンに言った。

『コイツの傷を見ろ。少しずつ癒えているように見える。』

　ノクがそう言ったため、アセロンが女の顔に目を向けると、殴られたときに付いた傷が癒えていることに気がついた。

『確かにそうだな。やはりコイツからは、何か良い情報が聞き出せそうだ。』そして続けて、「お前、この再生能力について何か知っているな？まぁ言われたとおり、また後で話を聞かせてもらおうか」

　その直後、アセロンは側頭部めがけて蹴りを加えた。相手の事などお構い無しだ。そして女は気を失い、地面に倒れ込んだ。

　するとアセロンの左目がどろりと溶け落ち、彼の左目は元の閉じた状態に戻った。さらに、左腕の新たに生えた部分も崩れ落ち、元の腕に戻った。

「さてと・・・絶対にやらないといけない事が、まだあったな」

――――――

「ふぅ、ありがとうございます兄さん」

「いいってことよ。それよりもアセロンの所へ急ぐぞ！」

「・・・はい！」

　リオラはアレリウスの加勢を持って、グリモリングの群れを仕留めきった。そしてアセロンの元へ向かおうとした時、

「もう片付いた。帰ろう」

　そう言ってアセロンが女を抱えてやってきた。

「お前勝ったのか！？すげぇな！」

　アレリウスはアセロンの元へ駆け寄っていった。

「ああ、案外苦戦させられたな」

「でもお前喧嘩強いからな～。・・・お前なんか変わったな。勝ったのにいつもよりテンション低いし、全体的に物々しいというか・・・」

「・・・そうなのか？まあいいだろ、こいつを頼む」

　アレリウスはアセロンから女をもらい受け、先に村へと帰っていった。

「アセロン、兄さんを助けてくれてありがとうございます」

　リオラはアセロンに一言そう言った。

　だが、二人はあの異形の死骸を組合へ提出するための作業が残っていたため、それを進める必要があった。

　その作業中にリオラは、異形の死骸に謎の痕跡があることに気がついた。

「アセロン、ここに噛まれた後があります。それも噛まれた言うより、捕食されたかのようです」

「大方、死骸に群がる動物でもいたんじゃないのか？」

「それもそうですね。作業は終わりましたし、帰りましょう。・・・アセロン、顔に血が付いてますよ？」

「あ、本当だ」

　そうリオラは言い、アセロンの顔を拭った。

「一体どんな傷を負わせたらこんな返り血が付くんですか・・・」

「・・・俺も分かんねえ」

「そうですか。今はそんなこと、どうでもいいですけど！」

　そしてリオラはアセロンの手を握って一緒に村へ帰った。この日はリオラが普段できない二次会が開かれた。

――――――

　翌日アセロン達が異形の死骸を見に行った時、その死骸は血痕一つ残すことなく、その場から消滅していた。

　第八話を読んで下さり、ありがとうございます。

　初投稿の分際で投稿間隔をここまで開けたのは、生意気だと私も自覚しています。

　これからはモタつかないようにしようと思うので、これからもよろしくお願いします。