表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
17/22

その十六:イオタ

タンポポの綿が飛ぶ頃、彼女は約束を思い出しそして旅に出る。

ぶらぶらとその約束の目的地にまで。

そんなエルフの旅路です。


「サーナっ!」



 イオタは私の名を叫びながら追って来る。

 でも私は止まらない。


 今もし止まってしまったら、私はイオタを受け入れてしまいそうだった。



 もう終わりにしなくてはいけない。

 定め有る者とそうでない私たちは一緒にいられない。

 そんな事は終わりにするべきだ。


 そして私は今だに彼を忘れる事が出来ないでいる。



「サーナっ! ちょっと待ってくれ!!」


 それなのにイオタは私をってくる。

 駄目なのに、いけないのに。


 しかし私の走るスピードはだんだん遅くなり、イオタに抱き着かれる。



 ばっ!

 抱きっ!!



「待ってくれサーナ! やっぱりごまかせない。俺は君の事が好きだ!」


「!?」



 イオタのその言葉を聞いて一瞬息が止まる。

 正直とてもうれしい。

 それと同時に決してそれを受け入れてはいけない気持ちが津波のように押し寄せて来る。



「……イオタ、ごめんなさい。それはダメ。もう終わりにしましょう」


「嫌だ! 俺やっぱり自分の気持ちに嘘がつけない。好きだサーナ、君がエルフだろうが何だろうが関係ない! 俺が好きになったのはサーナ自身なんだ、種族や年齢なんか関係ない!!」


 ぎゅっと後ろから抱きしめられるその腕の力が強くなる。

 その力強い抱きしめに私の心はグラグラと揺れる。



「でも…… 私は以前の彼を忘れられない。そしてあなたはきっと私を残して先に死んでしまう運命よ?」


「そんなの関係ない! 俺は君が好きなんだ!!」



 イオタのその強い思いに私はいけないとわかりつつも、彼を見る。

 そこには優しい笑顔のイオタがいた。


 

 私はその彼の瞳を見つめ、引き寄せられるように彼と唇を重ねるのだった。 




 * * * * *



「……夢見たい」


「どうしたのサーナ?」



 そろそろ夜が明ける。

 私はベッドの中でイオタに優しく抱きしめられたままそう言う。

 

 結局私はイオタを受け入れてしまった。

 そしてイオタに抱かれた。


 抱かれている間、彼の姿がチラチラと脳裏をよぎったが、それでも今はイオタを愛おしく思う。

 そう、もう彼とはお別れなんだ。

 そして今の私にはイオタがいる。



「なんか、彼からの呪縛から解き放たれたみたい……」


「何それ?」


「うん、昔の彼氏に私はこの二百年間ずっと縛られていたんだと思う。彼が私を守って身を挺して身代わりになったあの時からずっと。だから守られるはずの無い約束をずっと信じていた。ううぅん、本当はそんな約束守れないの知っていた。でも、信じたかった。だから今回このジマの国に来たのは彼との約束を果たしに、そして最後のお別れを言う為に来たの……」



 イオタに私の本当の気持ちを伝える。

 するとイオタは私をぎゅっと抱きしめて軽く口づけをする。



「大丈夫、今後は俺がサーナを守る。この命続く限りぜったいにだ」


「ふふふふ、すぐに寿命で死んじゃうくせに…… 私も好きよイオタ……」



「サーナ……」



 初めて自分からイオタに「好き」と言ってしまった。

 しかしそれはたとえ短い命の彼であっても、彼を愛すると言う覚悟の表れ。




 私が自分の気持ちを言うと、イオタはまた優しくキスしてきて私を抱くのだった。

  


面白かったらブックマークや評価、ご意見ご感想をよろしくお願い致します。

誤字脱字等ございましたらご指摘いただけますようお願い致します。


*読んで頂きありがとうございます。大変申しわけございませんが本作は不定期更新となります。どうぞご了承いただけますようお願い致します。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言]  ツッコミいれちゃダメ?  例の指輪があんじゃん! とか、イオタお前はアレじゃん! とか、200年がーなんて言う前にそれのゆうに何倍もの時間、本命を待たせて浮気三昧の最低野郎にコレを聞かせて…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ