物語を創る
これは、彼の始まりの物語。
18時3分、北区 リアシュタッド。
辺りに漂う血の匂い、その中心にソレは居た。貼り付けたような笑みを浮かべ、自らが手を下した哀れな愚者たちに腰掛ける彼の周りには血のついたナイフが幾本も飛び回っていた。
「いやぁ、暇ですねぇ……はっはー」
独特な笑い声が廃墟に響く。先ほどまで自分に向かってきていた者たちは1人残らず物言わぬ骸となった。異能の操作すらままならない素人がなぜ自分を襲ってきたのだろうか、退屈ゆえに湧き上がるあくびを噛み殺しながらチラリと死体に目を向ける。
「怒り、憎しみ、無念……ん? あーあ、そういうことでしたか」
男の顔に刻みつけられた最後の感情を口に出すうちに、あることに気づく。
彼の顔は数日前に殺したある娘とどこか似ていた。
「よく見ればどこかで見たような面影を残す顔ばかりじゃあないですか。つまり、みーんなこの僕、薬師寺 ミライに復讐しにきたって訳だったんですねぇ……残念」
スッと骸の山から立ち上がり何歩か距離をとって振り返る。
「それならそうと言ってくださいよ。そうすればもっと、楽しめたんですがねぇ。はっはー」
やれやれ、とでも言いたげに首を振り。悪魔はその場所を後にした。