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一度唱えたら死ぬ呪文  作者: モノ創
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シーズン1 第二章 交流戦

 第二章交流戦


 局長室に折り畳みデスクを広げてお茶の席を用意された。そこで美萩のビンタを謝罪され、金は払うから問題にしないでくれと持ち掛けられた。僕はわざとしかめ面を浮かべて交渉難航の演出をした後、両親が死んで行く当てがないと情に訴えると、有栖がその言葉に乗っかって僕をチームに引き入れたいと局長に懇願した。美萩が口を開こうとするも、局長に叱られて静かになり、局長の快諾により美萩のチームへの正式な入隊手続きが始まった。といっても、適当な書類を書いてハンコの代わりに指印を押して終了だ。僕は訓練を受けていないので銃の所持は不可と言われ、魔法での攻撃もしてはならないということだけ念を押された。魔法化学特別合同防衛軍は幾つかの部隊に分けられており、美萩はその一つの副隊長ということも説明を受ける。今日はたまたまこれから模擬戦が行われるということで見学を奨められた。時間まで三時間ほどあるということで、図書館へ行くと告げると、施設内の図書室を使用して良いと許可を貰った。

 現在、本を読み始めてから二時間半が経過していた。重要そうな内容をまとめたメモ帳を胸ポケットに入れて、会場の一つ上の階に当たる地下5階に向かう。途中で局長と同じようなスーツを着た男女に、変態を見るような目を向けられながら到着した。

「着替えを用意するのを忘れてましたね」

 エレベーターを降りると、僕に気が付いた局長が声を掛けてきた。今は七三に分けられたもふもふの毛を身に付けている。局長以外は僕を怪訝そうな顔で凝視した。酷い人は、何だあいつと聞こえるように呟いていた。局長と僕を含めて十人が集っている。

 そんな彼らを無視して内装を確認する。スポーツジムの休憩所のような簡易ベンチが三列並んでいて、その奥は全面がガラス張りになっていた。左右に細い通路が開けていて、相変わらず無機質なコンクリートの壁が続いている。

「まあいいですよ。この服新しいですし」

「そ、そうですか。冬馬さんが良ければいいんですよ。ええ」

 明らかに場違いな服装で居られることが迷惑なのだろうが、僕は全くお構いなしである。本心は見えていても、建前上とはいえそう言われるのだから文字通り言葉に甘えよう。

「お言葉に甘えて」

「全く意地悪がお上手で」

 局長は口角を上げて場を和ませると手招きをした。

「こちらへ」

 皆の前へ立つように指示を出し、大きく一つ咳払いをして注目を集める。

「本日は良くお集まりくださいました。彼は本日新たに部隊に加わった冬馬明くんです。さあ。自己紹介して」

 聞いてないぞと局長を睨むが、局長は予期していたのか既に目をそらしていた。

「えー…ただいま紹介に与りました冬馬明といいます。以前は人を観察して、良き方向に導くといった…占いのような仕事をしておりました」

「詐欺だろ」

 また誰かがぼそりと呟いた。この人らは傾聴という行為を知らないのだろうか。

「そうとも言えますが、犯罪ではありません。ありもしない力があると言って水晶を売ったりとかはしてませんでした。ただ、話を聞いて、仕草を観察して、良い導きを与える」

 本当は犯罪に当たる行為もしていたがそれは内緒にしておくことにする。

「そういうお仕事です。そして本日、僕の能力を認められてこちらへ招待いただいたというのが半分、僕が志願したというのが半分ということで、入隊する経緯は以上となります。力を余すことなく存分に能力を発揮したいと思いますので、ご厚意に。よろしくお願いします」

 局長は、ありがとうと言ってから僕の前に出て場を締める。

「さ。試合の時間ですので席についてください」

 皆はぞろぞろと左右の廊下へ向かった。

「何です。あの感じの悪い人たち」

「まあ世間で言う所のライバル会社って感じですよ。上は国ってことで同じですけど、部隊の戦績によって給与も変わるし、待遇も違ってきます」

「競争相手ってやつですか」

「そうですね…」

 そう言うと局長は口を開いたまま悩んだ様子で僕を見ている。

「ああ」

 察した僕は口火を切る。

「局長が敬語なのはおかしいですよね」

「そうだね。みんなにビンタの件を伏せていてくれたのはありがたいけど、つまりそれは」

「僕は貴方の部下であり、敬語を使わないといけなくなるような問題は無かったと。そういうことですよね」

 局長の肩の力が抜けて自然な体勢になる。軽くなった丸い体を上手に動かして右側の通路へと進む。

「この先に観覧席がありますので」

 局長に続くと、まるでスポーツ会場のような光景が広がっていた。巨大なガラスを前にして一人掛けの席が積み立てられ、地下六階のグラウンドが見えるようになっていた。ガラスの先には人工芝が広がっており、野球もサッカーも同時に行えそうなほどの大きさだった。僕らは一番前の席に座る。

「凄いだろう。僕らの上には一般客用の席が用意されているんだ。ほら、向かいの席が見えるだろう」

 鼻を高くしながら説明している局長に従って遠くの方に目を向けると、オープン席が階段状に並んでおり、私服の人々が祭りのように騒いでいるのが見えた。

「年に一回開かれる交流戦は、市民にも予告され、抽選で場内に入れる人が選ばれる。残念ながら当選しなかった者はテレビ中継で、という感じだ。まあそれは知ってるか」

 局長がどこからかリモコンを取り出してボタンを押すと、巨大なガラスが両サイドに開いて、壁の中へと消えていく。すると場内の熱気、客の歓声、実況解説の声が響き渡った。まるでオリンピックのような盛り上がりだった。

「本日の目玉は何と言っても魔法地区の砦、魔法特化部隊でしょうか」

「最近波に乗っているチームですからねぇ。やはり科学よりも魔法の方が利便性が良いと証明してくれそうですよね」

「対して科学地区の要塞、科学特化部隊はどう動くか、意見を貰えますか」

「そうですね。やはり銃が要になってくると思います。魔法は体力を消耗するのに対して、銃は引き金を引くだけですからね」

「そうですね。銃にも魅力はありますが、やはり扱いづらいというのが難点でしょうか」

「ええ。銃は重いですし、狙うのが難しいというのが欠点ですから、技術で補うしかありません」

「どちらも一長一短ということですね。さて、では本日はホーム戦となります。今まで目立った戦果の無い魔法科学特別合同防衛軍はどうでしょうか。因みにこちらは設立して三年余りの新設部隊で、主に特別区を管轄としています。十五部隊ある中で、どの隊も拮抗した力関係であります」

「…設立当初はいいとこどり部隊と呼ばれるくらいでしたがねー…。今では解散の声も上がってますからね」

 冷やかすように笑う実況者に釣られて、解説者も引き笑いを立てている。その解説で、スーツの人たちが厳しかったのは僕に対してだけでなく、局長に対してでもあったのだと理解する。誰彼構わず逮捕するような美萩の能力で副隊長になれるくらいだから、やはりその程度の力量なのだろう。

「散々言われてますけど」

「言わせておけばいい」

「自信ありそうな物腰ですね」

「ああ。今年は自信があるからな」

 局長は見てろよと言わんばかりの眼差しで会場を見守っている。僕もそれ以上は言わずに下を見る。

「おっと、選手が入場してきました!先ずは部隊の象徴とも言えるこの隊服!ローブに杖の伝統的スタイルで登場です!続きまして、科学部隊の生みの親であるアメリカ連邦捜査局を模した制服!」

 二つの制服が奇麗に足を揃えて行進する。一部隊に三百はいるだろうか。一歩芝を踏むたびに地鳴りが起きて建物が揺れている。寸分たがわず動く体は本当に人の脳で操作しているのかと疑いたくなる程に圧巻だった。

「最後に日本の防衛省と同じ隊服であります。深い青緑が特徴的な合同部隊の入場です!」

 一際数の少ない部隊が最後に入隊してくる。他の部隊の半数もいないじゃないかと驚きを隠せなかった。

「あれ…僕らのチーム…?」

「そうだ。一チーム四人から五人で形成されている。それが十五部隊で約七十人だ」

「まじかよ…」

「それでも、防衛省が直々に創った部隊なんだぞ」

「でも成績は悪いって…」

「だから見てなさいって」

 突っ込み所満載の部隊に呆れながら、入場行進を見飽きた僕はメモを開いた。

 ここは魔法と科学が混在する世界。主に都会では科学が発展し、田舎では魔法が発展した。魔法は自然エネルギーを利用しているのに対し、科学は鉱石などを原料とする。人や流通が溢れる都会では科学が、自然に満ちた田舎では魔法が発展するのは当然のことだった。人が走ったりするエネルギーとは別に、チャクラと呼ばれるエネルギーを持っていると考えられていて、魔法はそのチャクラを消費するようだ。チャクラが底を尽きても死ぬことは無いが、無気力となり行動不能となってしまう。そして、この世に生まれたすべての人は、言葉を喋るように魔法の使い方を理解する。魔法にはそれぞれ得意不得意があり、例えば火が得意なら水が苦手というように不便さも与えられている。問題はここからだった。魔法個性という潜在意識に眠った一撃必殺の呪文が、各個人に備わっている。その人間のモノゴコロがつく頃合いに個性が確立され、個性によって得意不得意も同時に確定する。魔法個性は誰に教わるわけでもなく、身体が勝手に制御しており、自身の意思で発動することも出来る。魔法個性はチャクラ形成の源となっており、その魔法個性から少しずつチャクラを放出して魔法を行使する。要は、でっかいチャクラの塊をチビチビとけち臭く使っていくというわけだ。だから魔法に得意不得意が生じるという理論のようだ。勿論、チャクラはしばらくすれば回復する。魔法個性の塊を発動させるには特殊な詠唱が必要で時間が掛かる。使い方次第で天変地異をも起こせるほどの強力な魔法となってしまい、一度唱えたら死ぬ。つまり、この世界の人は、皆一様に爆弾を抱えて生まれてくるということだ。従って、国は厳重な国民の管理と外交を行っているというわけだ。血液検査で個性を把握しており、検査を受けない人物を要注意人物としてリストアップし、各地の行政で共有しているようだ。血液検査協力の対価として国民保険や年金、児童保護手当などを受けられるという制度を敷き、なるべく検査させるように努めている。それでもテロの脅威は絶やせない。国内外問わず、どこの誰かも知らない奴がいきなり呪文をぶっ放すやもしれないという状況なのだ。その最悪に備えて、勇士を集って育成している。いつ何時も国民のために命を投げると誓った集団。それが我が国日本の軍隊である。

 メモに集中していると、横から肩を小突かれる。

「それ今読む必要があるのか?もう始まるぞ」

「テロを未然に防ぎ、呪文には呪文で対抗する。国民のための呪文である。でしたっけ」

「ああ。日本軍の誓いだな」

「どうして彼らはそこまでして軍に入るのです」

「そんなの、個人に聞いてくれ」

 局長は真面目な顔で答える。きっと、隊員各々に生半可じゃない覚悟と想いがあるのだろう。局長の態度からもただ事ならぬ圧を感じた。

「ちなみに、どういった形式で試合が運ばれるんです?」

 局長は驚いてこちらを振り返る。

「見たこと無いのか?」

「あ…ええ。興味が無くて…」

 信じられないと呟いて、局長は詳しいことは省くと前置きして端的に説明してくれた。

「この中から、各所属隊で予選を潜った五チームが、その隊を代表して他の隊と戦闘する。戦闘の目的は人質の救出。勿論危ないのでダミー人形だ。屋内で立て籠もった犯罪者を全員捉え、無傷で人質を助け出すと満点。人質が傷を負ったり、隊員が負傷したり、敵が死亡したりするとマイナス。減点方式で採点される。総当たり戦で、一試合毎に採点され、合計点が高いチームで順位を振る。採点者は行政の主体である内閣だ。秀でた戦果を残したチームは賞与と昇格が約束される。因みにこの私は、ちょうど十年前の交流戦で昇格し管理職になり、今では隊を率いている」

 軍の全員を集めておいてたった十五チームしか出場しないと言う。なんて贅沢な催しなのだろうと感心する。そして、局長はさらりと過去の栄光をひけらかした。

「そんな局長の隊が成果を残していないってどういうことですか」

「まあ私は今年から就任だからね。以前の局長はコネ入社みたいなもんでそりゃあ酷かったよ」

「なるほど。ってことは、ここが局長の見せ場というわけですか」

「そうなるな」

 局長は低く唸ってから僕の目を直視して緊張を感じさせる声色で言った。

「冬馬くん。美萩の件を抜きにして言わせてもらうが…。私には君がどうも軍の厳しさが分かっていないように思える。軍とは命がけで市民を守る捨て身のヒーローだ。この試合を見て心に刻んで欲しい。もしも、無理だと思えば辞退してもらって構わない。私だって、死ぬのは怖い。銃弾が脇腹に穴を開けたこともある。想像を絶する痛みと、犯人や被害者の歪んだ人間性が直に自分の身も心も侵食する。それに耐える覚悟あるなら、有栖くんだけではなく、私からも是非とも力を借りたいと思っている」

 だらしなく見えていた局長の皺が、今では歴戦の証のように思える。鋭い目付きに、要所要所で垣間見える緊張を与える話し方は、数々の戦場を潜り抜けた末、身に付いたものだろう。人を騙しながら飯を貪っていた自分とは違う世界の住人だと理解できた。こんな僕が、本当に隊員として認めてもらえるのだろうかと不安だった。局長はそんな僕の感情を読み取ったのか、肩の強張りを解すように手を置き優しく微笑んだ。

「君は戦わなくていいんだ。勿論、現場で色々なものを直視することは必要だろうが、君の役割は」

 そこまで言って肩にある手を僕の額に移動させて人差し指で小突く。

「ここを使うことだ。我々のサポートだよ」

 僕は局長の目を見て答える。

「推理をしたり、人を操ったりするには自信がありますが……正直、僕みたいな人間が正義のヒーローを名乗っていいんでしょうか…。ほら…詐欺とかやってましたから」

「本来なら君は罪を裁かれるべきだが、人殺しをしていないならばまだ更生の余地はある。罪滅ぼしとして活動してもいいじゃないか。それとな、犯罪者、特に重罪を犯す人間は自分の中の正義が確立していることが多いんだ」

「…と、いいますと」

「信念を持って行動しているということだ。人を殺そうと思うほどの信念に、私たちは真っ向から戦わなければならない。だから私たちは犯罪者以上の揺るがぬ信念を持っている。君は、何を持っているかを探すところから始めるんだ。何が君にとって一番大事なのかを見つけなさい。それが見つけられたら、私は君の罪を受け入れて雇うことを約束しよう。それまで君は隊員では無く、美萩の不注意によって迷惑を被った被害者としてしか見てやれない。有栖の要望で一応は雇うと言ったが、私は自分を持たない人間はすぐに切り捨てるぞ。美萩を訴えたければ訴えればいい。私や行政が彼女のために司法と戦う」

 口調は優しさを繕っていたがその裏には、文字通り本気が伝わった。これまで親に翻弄されて生きてきた僕は、思い返してみれば信念なんてものは持ち合わせていなかった。初めてぐうの音も出ないほどの論理的な攻撃を受けた感じがした。先生に叱られたことは一度もなく、親からは罵声と暴力を受けただけだった。諭されるというような、叱られるというような、そんな局長の話し方に心身を貫く痛みを覚えた。これが敬うべき先人の教えというやつなのだろう。僕はそれに真摯に向き合わなければならない。ここで目を背けたら、反面教師としてきた無力な両親と同じになってしまう。

「初めてです。あなたのような尊敬できる方に出会えたのは。僕は局長の言うような、信念を持った人間といは程遠い世界の人間です。でも、もう少し時間をください」

 局長は再び笑みを浮かべる。

「さあ、試合開始のホイッスルだ」

 僕の新たな人生を知らせるようなそのホイッスルは心臓を震わせるほどに響き渡った。

 会場ではいつの間にか二チームを残して消えており、合わせて九人だけがグラウンドに立っていた。向かって右側のチームが一人不足している。明らかに不利になるだろうがそれで良いのだろうか。加えてもう一つ疑問なのは、人質はおろか、何の工夫も施されていない真っ平なままのグラウンドだった。

「あれ、人質とか、セットとか何もないんですか?」

「これからだ」

 局長の返答を合図に、僕らの足元に半透明なスクリーンが出現し、そこにライブ映像が流れ始める。遠くて良く見えなかった選手の顔が映し出されて、第一試合を行う選手が一人ずつアップされていく。先ずは右に待機する防衛省のユニフォームの選手だ。つまり、局長が管轄する内の一チームだ。局長の表情筋が僅かに硬直するのが分かった。最初にアップされたのは三十代半ばと見える屈強な男だ。鋭い一重でありながら、輪郭や口元が柔らかさを醸し出しているイケメンだ。自身でもそれを自覚しているようで、茶髪をオールバックで整えるというナルシストヘアを決めている。右目のすぐ下に大きな傷跡が残っており、その古傷さえも戦士の勇ましさを際立たせていた。遠目から見る感じは他の隊員よりも一回り大きい。続いて隣にいる女性にカメラが向いた。美萩だった。

「一試合目からか…」

「君の所属することになるかもしれないチームだ。良く見ておきなさい」

 自分が出場するわけでもないのに胃が軋む。美萩の次は有栖が映し出されるが、相変わらずのメイクやハイヒールはそのままだった。後ろから非難のざわめきが聞こえる。当然だ。最後に身長は有栖よりも少し小さいながらも筋肉質な男が映る。ヘアスタイルは奇抜なもので、四角い顔にヘルメットのようにフィットしていた。一重で小さな目をしており、髪型以外は、どこにでもいそうな筋肉お兄さんという印象だ。会話の音は拾えていないが、振る舞いを見ている限りこの二人は近しい関係だろう。彼は面白いことに手には杖を持っており、杖は遠距離でのサポート役ということを物語っている。その筋肉は何のためにあるのだろうかと解説者も突っ込みを入れていた。それから向かって左側の五人組にカメラが移動するも、こちらは全員フードを深く被っていて顔は見えなかった。前が見えているのかと不思議に思うも、解説者の一言で疑問は解消された。

「魔法を極めた人々には、第三の目が開眼されると言われています。彼らはその目で会場の全てを見切っているとインタビューで話していました」

「今では科学に頼った人が増えつつあり、その目を持つ人は少数であると言われていますが、魔法特化部隊の隊員は皆その目を持っているのでしょうか?」

「いやーそこまでの情報は開示されていないようですね」

 実況と解説の掛け合いが一段落ついた刹那、二チームの丁度真ん中に巨大な建物が地中から出現し、それと同時に両チームが勢いよく走り出す。

「さあ今試合の舞台となりますアメリカ大使館が出現しました!両チーム攻防の準備を整えるため一目散に駆け出します!」

「ではここでおさらいをしていきましょう。今回は魔法科学部隊が人質の救出を、魔法特化部隊が人質の守備を行います。人質は大使館二階の一室、会議室に捕らえられています」

 そこまで話し終えると、スクリーン上に大使館の構造を簡単に示した図が表示された。マップは公平を保つためか、正方形の箱庭で、中央を境に対称的に造られている。建物一階の北と南に出入り口が用意され、入ると正方形のエントランスに迎えられる。エントランスから右へ向かうと娯楽室が、正面へ向かうと中央螺旋階段が設置されていた。娯楽室からは、緊急避難経路として細長い通路が伸びている。二階へと続く階段と敵側の娯楽室へ繋がる道と二分化されていて、連絡通路を使って二階へ上がると、マップ中央に当たる会議室が、縦長の長方形に見える。中央螺旋階段を上がると、同じ会議室へと辿り着け、学校の教室二部屋分はありそうな、横に長い長方形の部屋に見える造りになっていた。窓は一切存在しない。

「君ならどう動く?」

「そう言われましても…人を観察するのとは違うしなぁ」

「取り敢えずの考えを聞かせてみたまえ」

 この建物設計だと、どちらの階段を使っても正面衝突は避けられない。救出側の勝利条件は人質の救出であって敵を殺すことじゃない。従って敵よりも先に人質の場所へ辿り着ければ良いのだが、人質という足手纏いを抱えながら帰路に就くのすら難しそうだ。

「難しいですが…とにかく、人質を助け出すことが最優先ですから、最短ルートの螺旋階段を駆け上がり、どうにかして敵を階段で食い止めて、会議室から脱出するってのがセオリーというか、安牌な考え方ではないかと…」

「まぁそうだな」

 局長は不敵な笑みを浮かべながら顎に手を置いて試合を観戦する。この感じだと間違っているのだろうと思うも、僕も戦いを見守りたかったので何も言わなかった。

「さあ両チーム建物内へ入り込んだようです」

 守備側は躊躇なく三人と二人に分かれて両階段から上がっていく。開けている螺旋階段に三人割いたのは正解だと思った。狭い場所に数を投入しても窮屈で動けないからだ。次に救出側が映し出されるが、どういうわけか美萩が連絡通路を一直線に駆け抜けている。これには実況も驚きの声を上げていた。

「これは…裏を一人で取るつもりなんでしょうか…。人数不利を覆すには虚を突く必要があると考えたのでしょうか。それにしても一人では無謀に思えます」

「では、どういう作戦なら正解と言えるのでしょう?」

「私の意見はあくまで解説者の意見として聞いていただきたいのですが、人数が不利ならば一点集中が良いのではないかと思われますね。セオリー通りで行けば部隊を半分で割って、会議室へのエントリー場所を正面で叩くでしょうから、そこを狙って二人ないしは三人に分かれた相手に四人で畳みかける…。こうでしょうかね」

「なるほど。確かに、螺旋階段と非常階段は距離がありますから、援護にも数十秒掛かりますもんね」

 解説者の言う通りかもしれないが、それではその一発目の衝突で時間を稼がれたら結局は人数不利になってしまうし、四対四で拮抗し敵の五人目が裏を取るかもしれない。

「おおっとここで敵側の娯楽室に到着した美萩選手。一度停止して仲間の様子を待つようです」

 美萩は娯楽室のビリヤード台に身を隠し、耳元で小さな球を発行させて待機している。有栖が無線のように使用していたことからも、あれがこの世界の通信手段なのだろうと推測できた。美萩の映像からローブの三人組へと切り替わり、三人組は螺旋階段を上り切ろうとするところだった。

「さあここが恐らく最初の衝突です!」

 しかし、実況の盛り上がりとは裏腹に、対面する螺旋階段には人の影すら見えなかった。実況も解説も困惑したような声を出している。映像は忙しなく別のカメラのものを出す。次は行方不明だった有栖達がアップされた。有栖の方は三人で行動しており、解説者の先ほどのセオリーを無視した立ち回りで、非常階を駆け上がっていた。

「こ、これは私の考えと正反対の攻め方…」

「な、なんと、要となる螺旋階段を捨てて非常階段に戦力を注ぐ魔法科学チーム!対になる非常階段での攻防!ここが最初の衝突となりますが、救出側三人に対して守備側は二人!!」

 有栖は宙からレイピアのような細長い剣を生成し右手で握る。最年長の男は有栖の前へ出ると、彼もまた宙から小型のピストルを生成して、すぐさま構えて弾を放った。

「実弾!?」

「そんなわけないだろう」

「…ですよね」

 弾は奇麗に真っ直ぐ飛び、螺旋階段で惚けているローブの三人組を通過し、対面した二人に直撃したように見えたが、分身が解けるように白い煙を上げながら消えてしまう。

「身代わりを使っていた守備チーム!上手に初手のリズムを掴みます!」

 どちらかというと忍術のような魔法にしてやられてしまった救出チームの流れは悪い。煙はすぐに空気に溶けたが、その一瞬でローブの男の片方がパントマイムを終えていた。

「確か、杖を持っていたらあの動きしなくてもいいんですよね?」

「なんだそんなことも知らんのか。むすびは杖と併用すればより高い位の魔法が出せる」

 結というのがあのパントマイムの正式名称だったことを思い出す。時間が無かったので細かいことまではメモが出来なかったのだ。

「さあここで高火力の魔法が繰り出されます!」

 ローブの男は動きを止めて大きく円を描き、結を締めて杖をかざすと先端から轟々と燃え盛る拳大の火の玉が出現し、有栖達を目掛けて飛んでいく。それは一瞬の出来事で、火の玉は目にも止まらぬ速さで放たれたと思ったが、瞬きを終える頃には炎は跡形もなく消えていた。局長以外が、何が起きたのか分からないと言った声を上げている。

「一体…これは…」

「恐らく…恐らくですが、有栖選手が炎を消し飛ばしたのだと……」

「な、なるほど」

 局長は実況者の言葉を鼻で笑う。

「なーにがなるほどだ。普通の人間にはあの神業は理解出来んよ」

「神業…?」

「ああ。魔法ってのは丁度同じ火力でぶつかり合うと、何事も無かったかのように衝撃も発せず消滅する。相手の魔法の威力を瞬時に見極め、自身も同じように魔法を調整してぶつけなければならない」

「それって凄いことなんじゃ」

「そうだ。ほとんどの人間は見たことすらない。だから神業って言ったんだ。有栖は頭が良いと思われがちだが、容量が良いの間違いなんだ。難しいことをやってのける実力がある。本人は小手先だけで生きてきただけとか言ってるが、そんなもん、普通の人間には出来まいよ。レイピアにチャクラを集中させて、魔法を放つ要領で何でも切ってしまう。彼女に魔法は効かないんだ」

 僕らと同じように、炎を放った本人も口をあんぐり開けていた。最年長の男はその隙を見逃さなかった。再び射撃を行うと、今度は命中したようでローブの男の一人が後ろに吹き飛んだ。撃たれた男の周囲からは青い液体が渦を巻くように出現し、男を呑み込むと地中へ消えてしまった。

「残念ながら守備チーム一人脱落です!これで人数はイーブンとなりました!しかし、対面している非上階段での戦闘では三対一の圧倒的有利を作り出しています!螺旋階段からの援護はあるのか!?」

 実況の気迫に観客も興奮し、雄叫びを上げて局長の隊を応援し始める。美萩たちにそっけなかった解説者も驚きが隠せないようで呆気に取られている。会場の盛り上がりを理解したように、ヘルメット男が決め顔で結を始めた。

「分身を使っていたもう一人はどこへ消えたのでしょうか」

 解説者が思い出したかのように話し始める。その答えは次の瞬間に明らかとなった。結を終えて杖をかざすと、ローブの男が半透明な状態で発見される。

「なんと!魔法の効果を打ち消す解除魔法を使用!」

 僕の頭に幾度目かの花が咲いたのを察した局長は説明を挟む。

「これも有栖がやったのと同じものだ。敵の魔法と同じ火力、同じチャクラ量で相殺する。ただ、有栖は目で見た魔法に対してだったが、じょうは可視化できない魔法を解いた。これは、敵のチャクラコントロールの癖や残量を理解していないと無理だ。あとは感とかな」

 盛というのがヘルメット男の名前だろう。盛は有栖よりも凄いことをやってのけたという認識で良いのだろうか。それにしても、会場中が沸き上がるほどの能力を持った人々がこうも一つの隊に集まるものなのだろうか。

 隊員や局長に対して謎が深まるばかりだが、会話のネタを残して置くことも大切だろうと、それは彼らに直接質問してみることにした。

「さあここからだぞ」

 局長に呼応するかのように再び大きなアクションが起こる。

 守備側の螺旋階段から九十度カーブして拳大の光の玉が飛んでくる。透かさず有栖が消滅させるが、その間に螺旋階段にいた三人の内二人が、会議室の中央に座る人質を挟むように展開していた。これで人質を回収することは困難となった。

「既に一人葬ってますから、これ以上の減点は痛手ですよね」

「うむ…そうだな。だが、ここまでは作戦通りだよ」

 局長の顔に曇りは無く、むしろ自信に満ちたようにも捉えられる。スクリーンでは有栖が片手で結を始めていた。姫を庇うように男二人が前に出て有栖を隠す。続いて螺旋階段に残ったローブの男も結を開始した。会議室内の二人と非常階段の一人は、救出チームの攻撃に備えて身構えている。

「ここで守備チームは第三の目をより大きくするようです!」

「第三の目は、結びを重ねることによってより遠くのものがより鮮明に見えるようになります。恐らく次のステップでは箱庭全部が見えてしまうと思われます。救出チームは目を探さなければ作戦が筒抜けとなってしまいますが、果たして破壊することが出来るのでしょうか」

「まだ目は小さくて我々もどこにあるのか終えていませんが、現在はどの程度見えているのでしょう」

「螺旋階段に無人であるということに気付けなかったということは、恐らく自身の周辺又は人質周辺にしか飛ばしていないんでしょうね。それに目を飛ばすには相当なチャクラを消費しますから、今結を行っている彼しか目を飛ばしていないんでしょう。それを皆で共有していると思われます」

 僕はメモしたこと思い出して、確認するために手帳を開く。

「魔法区域に住む人々は、なるべく顔や名前を晒さないようにするという伝統がある。そのため、ドローンのように遠隔操作のできる目を飛ばして周囲を見ることが当たり前のようにできなくてはならないという習慣が存在する…ですね」

「そうだな。そんな常識的なこと一々メモするの?」

「癖なんですよ」

 無理に誤魔化したがそれ以上は追及されなかった。

「結を終えて両者動きます!」

 有栖の壁となっていた二人は遂に会議室に入り込み有栖の姿を露呈させる。有栖をカメラが捉えた刹那、彼女の体は消失してしまう。

「消えた!?」

「いや!見てくださいあれ!」

 螺旋階段にいたローブの男がぐったりと倒れている。そこには有栖の姿があった。

「なんということでしょう!一瞬にして螺旋階段の男を気絶させてしまったのでしょうか!?」

「恐らくそうでしょう。気絶は捕虜の判定ですので減点とはなりません」

 会場で戦う本人たちを含め、全員が彼女の瞬間移動に圧倒されている中、敵側非常階段からローブの男が盛たちのところまで吹き飛んでいった。

「な、なんとぉ!今まで息を潜めて獲物を狙っていた猛獣が、今ようやく解き放たれました!」

 本人が聞いたら血相を変えて襲い掛かってきそうなワードを並べて実況が吠える。試合開始直後に敵側娯楽室まで一直線に走っていた美萩が、全員の注目が逸れたタイミングを計らって裏を取ったのだ。第三の目も、恐らく有栖を警戒してばかりで美萩は視界の外だったのだろう。こうして、守備側の残る二人は会議室内で挟まれる形となった。

「一人は退場、一人は気絶して、残るは二人。さらに守備チームを囲む陣形が整いました」

 残された二人は人質を放棄して互いに背を合わせる。この人数差で受けの姿勢を取り続けるのは厳しいと判断したのだろう。美萩と対面している男が結を始めて攻撃の構えを見せた。そうはさせまいと美萩は銃を取り出すが、男は結をやめて防御に入る。銃弾は男の眼前で明後日の方向へ弾き飛び、情けない音を立てながら地を転がっていた。そして、再び結を始める。美萩は同じように銃弾を放つが、これも同様に弾かれた。次に、有栖側を向く男は、結をすることなく杖を三度地面に叩きつけた。男の全身から紫色のオーラが沸き上がり、足元のコンクリートが砕けて宙に浮きあがる。

「ドラゴンボールかよ…」

 男が再び杖を叩くと、杖の先から無数の触手が出現し、有栖達を目掛けて勢いよく突っ込んだ。非常階段は三人で動き回るには狭すぎると判断したのか、最年長の男が会議室に入り込み、攻撃してくる触手に対して銃弾をねじ込む。触手は後ろへ仰け反るも、銃弾を咥えたまま戻って来た。リロードの動作に入るのを目視した盛がカバーに入る。杖をバットのように振り上げて触手に打撃を与えて遠ざけた。

「魔法使いを肉弾戦へと引きずり込みました!これで互いに結を行う余裕は生まれない!」

 実況者の言う通り、盛は杖を振り回して右往左往する触手を避けている。最年長の男も銃弾で何とか攻撃を弾くのが精一杯のようだ。対する美萩は銃を宙へ戻すと、対峙する男に合わせて結を始めた。

「硬直していた二人は、互いに結を始めました!一体狙いは何なのでしょうか!?」

 次に有栖が映し出される。有栖は前で苦戦を強いられている二人を放置して、美萩と同様に結を行っていた。

「援護をしないという選択!会議室内では数多の触手が二人を苦しめています!」

 触手は次第に見境なく大暴れを始めて、会議室内に飾られる写真や本棚を粉々にしながら二人を襲う。盛の防御が追いつかなくなってき始めた頃、美萩の方で動きがあった。

「結を終えた二人は近距離肉弾戦に発展しています!」

 ローブの男は青白い雷を美萩へ放つも、美萩は有栖と同様に瞬間移動で回避して一気に距離を詰めていた。男は美萩から離れられるほどの余裕は無く、盛のように杖をバットとして操り美萩と交戦する。美萩は拳を緑に光らせて殴り続けていた。

「魔法の力を体へ宿す肉体強化!」

「肉体強化の魔法の基礎は、全身へ流れるチャクラを増幅させること。従って、体力を大きく消耗しますが、体の一部へ集中させるというテクニックを用いることで体力温存を図っていますね」

 ボクサー顔負けの殴り合いの末、美萩のアッパーが顎に食い込み、男は宙を舞って動かなくなる。迫力満点の戦いに観客の盛り上がりは絶頂に達した。

「決まったー!残すは一人!しかし、彼は術中につき後ろがフリーであります!このまま後ろからやられてしまうのか!?」

 最後に残った男は後ろの様子に気付いたようで触手を数本後ろへ回す。美萩は咄嗟に飛び退いて防御の体勢を余儀なく取らされた。

「何とか危機を凌いだ守備チームだが、未だ不利には変わりありません!」

 スクリーンは有栖を映し出す。すると、会場の熱狂がどよめきに変化する。

「こ…この結は…」

 有栖を包み込むように筒状の紋章が浮かび上がっている。地雷メイクを纏った少女を飾り立てるように謎の紋章が体に纏わりつき、会議室内が夕暮れ色に染まっていく。それを見た美萩たちは持ち場を離れて身を隠してしまった。ローブの男は有栖の結を恐れるように後退りして、全触手を自分の前に出して壁を作る。

 観客席にまで伝わる異様な空気に息を呑んだ次の瞬間、有栖の体がふわりと浮き上がり、御子を舞うようにひらりひらりと男へ近づいてレイピアをゆっくり突く。少し間を置いて、有栖にくっついていた文章が触手を介してローブの男に付着した。直後、一本の線が男の心臓を貫いた。紋章は橙色の火花を撒き散らして触手を溶かしてしまう。有栖は溶解する様子を見届けることも無く人質を担ぎ上げて螺旋階段を降りていく。美萩たちも同様に、自分たちが入場してきた扉から堂々と出てしまった。

「し、試合終了…です…」

「あれは…超上級の肉体強化ですよね…?」

 試合終了のホイッスルが鳴り響いた後も会場は混沌としていて、ちらほらと拍手が起こるだけだった。

「えっと…勝ったんですよね?」

「そうだ」

 局長は満足そうにそう言って席を立つ。

「二回戦以降はいいんですか?」

「ああ。私の本命はあの隊だしな。一日中ここで座っているわけにもいかんだろ。どうせ彼らが一位さ」

 相当な自信があるような口ぶりと会場のざわめきを見て、僕の所属する隊はもしかすると普通じゃないのかもしれないと思った。戦う上で強いに越したことはないが、そうなると僕は、横から口を出すだけに過ぎない立ち位置になってしまいかねないという懸念が生じた。

「それで、君はどうするんだ。本番はもっと残酷で惨いぞ」

「ええ。分かっています。取り敢えず、少しの間は体験入隊ということで、ここで面倒を見てもらってもいいですか」

 局長は小さく頷いて優しく微笑んだ。

「死なないように努力しなさい。結果を残しなさい。いいね」

「はい」

 不思議と背を伸ばして直立していた。局長の言葉の重みに体が無意識に反応している。それに気付いて、少し恥ずかしくなり着席した。元の世界の大人は、敬うに足る人物は存在しなかった。言葉一つで立場の違いを感じさせられたことなど初めての体験だった。ここでなら、変われる気がする。心の中でそう呟いて、観戦を再開した。美萩たちの隊は、局長の予想通り一位という結果で終わった。会場中が沸き上がり、快挙として称えられることとなった。


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