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勇者パーティーから追放されました(泣)

作者: 乾燥したゆで卵

私は勇者パーティーの雑用係です!

勇者パーティーは10人以上います

皆さん剣や弓、魔法を使って戦ったり、回復したりする役目の人が何人もいます

魔王を倒す為に戦っているとっても素敵な人達です! 


孤児院の院長さんが

「雑用係はご入用ではないでしょうか。過酷な旅になるので、面倒くさいことを一気に引き受ける雑用係がいると便利ですよ。うちの子達は皆真面目ですのでお役に立てるでしょう」

と提案されました 

勇者様は「子供を雑用係にするなんて…」とわからないことを言ってましたが、中々決められないのと、何故か雑用係を強く勧める院長さんのためにくじ引きで決めました

私は雑用係という端役ながらも勇者パーティーの一員になれました!

役立たずの孤児の私にとってはとても光栄なことです!!

出発前の夜、挨拶をしようと院長室に向かったら「やっと口減らしができた…勇者にも恩が売れるしいいことつくめだな」とわからないことを言われてたので何もせずに寝ました


そして私は勇者パーティーについていき、過酷な旅を始めました

辛いこと、厳しいこと、沢山ありましたが、とてもやりがいのあるお仕事でした

戦闘要員ではないといえ、命の危機がないわけではないので、必死に戦い方を覚えました

私の仕事ぶりを褒めてくれたり、頼りになるといって更に仕事を任せられたこともありました

どれも素晴らしき日々でした


しかしある日……


「お前はもう勇者パーティーの一員ではない、でていけ!」

「ひっ、ひどいですう!」


突然勇者パーティーのリーダーから追放宣言されました!


私は皆さんより力は劣りますがその分せいいっぱい頑張ってきました!

進んで荷物持ちをしたり、武器の整備点検をしたり、ご飯作ったり、戦闘に役立てないぶんその分雑用で補ってきました!

もちろん寝る間も惜しんで沢山戦闘の訓練をしました!


でもだからって追放はひどいです!もっと皆さんの役にたちたいのに!!


「なっなんでなんですか!?今まで私、ずっと頑張ってきたじゃないですか!?!?」

「お前みたいな雑魚はうちのパーティーにはいらん、その程度の雑用なら誰でもできるんだよ!ただのお荷物だ!

つべこべ言わずにさっさと出ていけ!!!!このグズ!!!」

「ひいっ!」


そして追い出されました……


皆に認めて欲しくて頑張ってきたのに……これじゃあんまりです……トホホ……


「うっ……私が……何をしたって言うのよ……こんなに……こんなに…頑張ってきたのに………ふええええええええええん!!!!!」


誰もいないところで大泣きしました。もう私を認めてくれる人は誰もいないんだ。このまま惨めな人生を送っていくんだ……

 

「あなた、どうしたの?」

泣き疲れて眠りそうになっていた時、声をかけられました


※※※※


私に声をかけてくれた優しい女性は宿屋の店主でした

店主は世間知らずな私の為に、仕事の事だけじゃなく色々なことを教えてくれました

卑屈にならない会話の仕方、失敗した時の立ち直り方、人に騙されない方法、しつこい人の躱し方、全力を出さずに仕事をしなくていいこと、自分を卑下しないこと、胸を張って生きること

等々店主からもらったものは数え切れないほどです

 

幸いにも私は細かなところに目がいくことを評価されました


働きを認められ、宿屋の後継ぎになって欲しいと言われた時はあまりの嬉しさに涙が止まらなくなってしまい、店主を困らせてしまいました


この恩は一生をかけて返すと誓いましたが、それくらいなら同じことを別の困ってる人にもやってあげてほしいと言われました


「私、パーティーから追放されて幸せです!」




※※※※


カランコロン

酒場のドアベルの音が鳴る

妙齢の女性が入店し、武装した青年の隣へ座る 

宿屋の店主と勇者パーティーのリーダー……勇者だ


「はあい、久しぶりね坊や。随分おっきくなったじゃない」

「ああ、久しぶりだな」


勇者はぶっきらぼうに答えると、バーテンダーが店主へ酒を寄こした

勇者の奢りだ


店主は酒を一口飲むとコップを回す。冷えた氷がカランカランと鳴る


「ねえ、どうしてあんなに器量よしの子を追放したの?貴方らしくないじゃない」


店主は勇者へ疑問をかける

店主が昔お節介な姉だった頃を思い出す

当時ただの村の少年だった勇者は、曲がったことが大嫌いで正義感の強い子供であった

何の非もない幼い孤児を無闇にパーティーから追い出すはずがなかった  


「俺も色々あってすれちまったんだよ」


と飲んでた酒をテーブルに置く。半分も残っていなかった

そして溜息をついて話し始める


「パーティーにいる間のあいつは、勇者パーティーにいる、という責任感の重圧で押しつぶされそうだった。見ているこっちが辛かったよ。あいつなんて面子を立てたいだけのクソ野郎から"毒にも薬にもならないですが、せいぜい囮や生贄として使ってやってください"ってくじ引きで選ばれただけの不運なやつなのに。しっかり役立ってこい、とでも言われたのか過剰に役にたとうとする。


戦闘中の仲間を庇って

『大丈夫です!!こんなの全然へっちゃらですよ!!私、身体だけは丈夫なのがとりえなんですよ〜〜〜!!怪我はないです??』 

なんて言って平気じゃないのに平気なふりをするし、回復はいらないって言うから無理矢理回復してやったんだ。


武器の整備点検なんて誰でもできるのに、自ら進んでやろうとする。

しかも材料費はアイツの自腹でな。『この武器ちょっとヒビ入ってますね!直しましょうか?え?塗料がいる?じゃあ私買いに行きます!!』

『この武器とこの武器新調してきました〜!お代?いいですいいです!安く買えましたから!』

料金払おうとしても全然受け取ろうとしないから諦めて後で詰めてやったわ。


飯を作るとき、ちょっと味に意見を言うと、『も、申し訳ありません……!!どこが不味かったですか!?次からは本当に気をつけますので…!!!』って自分の失敗を過剰に責める。もちろん材料費はアイツが持ってる。パーティーの食費を使わずに。


あいつはなんでもちょっと失敗すると『申し訳ありません!!!次は、次は絶対に失敗しません!!!!ごめんなさい!!!』って過剰に自分を責めるんだ。


成功して褒めても『こんなの全然ですよ!!誰だってできますから!!!!』って過剰に謙遜する。それすらできないやつは顔を顰めてたよ。


つまりあいつは度を過ぎた自己評価の低さと劣等感と罪悪感を持ってたんだ。


追放する前の日に

『私が頑張らないと皆さんの足を引っ張ってしまう。頑張らなきゃ頑張らなきゃ頑張らなきゃ頑張らなきゃ頑張らなきゃ頑張らなきゃ頑張らなきゃ頑張らなきゃ頑張らなきゃ頑張らなきゃ頑張らなきゃ頑張らなきゃ頑張らないと頑張らないと頑張らないと頑張らないと頑張らないと頑張らないと勇者パーティーなんだから逃げちゃだめ逃げちゃだめ逃げちゃだめ絶対に立ち向かわないとだめだめだめだめだめだめだめだめだめなんだから』

って虚ろな目をしてぶつぶつ言ってたからもう限界だって思いきって追放したんだよ……きつく言ったのもワザとだ。


あいつが従順なのを良いことに甘い蜜啜ってた奴らはあいつのパーティー追放に文句言ってたよ。そいつらは魔物のエサにしてやったけどな。そいつらが本当にお荷物だったんだよ、あいつの心の弱さにつけこんで搾取してきたからな。


他の良心的なメンバーは納得してるよ?あいつを追放したこともクズ達を魔物のエサにしたことも。


ああいう自己肯定が皆無なやつはな、自己否定の束縛から解放されて幸せになってほしいんだよ」


酒を前に俯く勇者を見て店主はつい最近のことを思い出した

勇者がわざわざ故郷の村に帰ってきて、自分に急に頭を下げたかと思いきや、「頼む!あいつを救ってやってくれ!!」と熱心に頼みごとをしてきたのだ

その時詳細は聞かず、パーティーから追放する予定の孤児の面倒を見てくれ、と言われた


自分は持てるだけの知識をあの子にほとんど捧げ、十分面倒を見てやったが、

この男はあの子のことを誰よりも気にかけてるのだな、と思い慰めるように、項垂れてる勇者の肩をさすった


「魔王討伐が終わった後でいいからうちの宿に来なさいよ。貴方があの子のことを心配してるように、あの子も貴方達のことを心配してるから

その時誤解をといてあげなさいよ?」

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