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Doubt~三年と一日の恋愛契約~  作者: あらかんさん
6/10

二卵性双生児

 

 ーーこのコ、くそかわええ……


 俺としたことが。一目惚れである。


 大きな瞳に小さな顔。光り輝いている艶のある長い髪。


 もう一度言う、一目惚れである。


 完敗。


 ーーもう、この子でお願いします。神様。



 

「……よろしく、ね」


「んああ!! はいっ! よろしく……って、え」


「わたし、太田雫おおたしずく。ここの高校の附属中学出身なの。よろしく。外部入学の子、だよね」


 そう。ここ尚英学園高校は中高一貫であり、中学校からエスカレーター式で入学する生徒もちらほらいる。


 ーーいや、そんなことより。容姿端麗な上に美声ときた。これは俺、惚れたな。


「そう! よ、よろしく! しず……太田さん」


 ーーまずい。自分で言うのもなんだが、俺は今日に至るまでまともに女子と話したことがない。


 今、死ぬほど緊張している。死ぬのは嫌だが。


「ははっ、雫でいいよ。君は?」


「お、お……俺、閏! 水嶋、閏。ジュンでいいよ」


「うん、わかった。ジュンくん。いい名前だねー」


 ーーふう。雫さん、か。


 しかしこの調子だと、女子と付き合うどころかロクに会話も出来ないな。確かに雫さんは美人だし、周りの女子を見渡す限りずば抜けている。雫さんだからってのもあるだろう。


 それにしても、こんなコが『運命の女性』だったらどれだけ最高なことだろう。逆に死んでもいいかもしれない。



『雫ーーーー!!』



「うおっ!!」


 廊下から鬼のようなスピードでこちらに向かって走ってきたのは、雫さんには劣るがこれまた顔立ちが良くスタイル抜群の女子。スカート丈がきわどいラインを攻めており、この年頃の男子高校生にはさぞかし刺激が強い。



「ちょっ……ミヤビ! 脅かさないでよ!」


「クラス離れちゃったねー。相変わらず可愛いなーお前……ん」


 こちらを鋭い目で睨んでいる。なんだよ、その睨み方、どっかの悪魔に似たものがあるぞ。


「お前、雫に軽々しく話しかけてんじゃねーよ」


 ーーーー!!


 なっ…………!!!


「……はああああああ! ?」


「ちょ……! ごめんねジュンくん、このコこういう感じだから」


「は……はあ」


 しかし何なんだ、この女は……


「紹介するね。ジュンくん。外部入学生だよ」


「ふぅーん。なんか知らないけど、雫に手出したら殺すから」


 何だか俺は、新たな悪魔に出逢ってしまったようだ。


「よ…………よろしく」


「雅。太田雅」


「お……お?」


 あれ、同じ苗字?


 ……偶然か。


「双子なの」


 ……へ?


「ふた……ふたり、雫さん! ?」


「へへ、驚いたでしょ。私たち、双子なんだ」


 まだ出逢って1時間も経っていないが、展開が早すぎる。


 ーー双子って、同じ腹から生まれてくるやつですよね?


 似てなさすぎる! 二卵性双生児だとしても、明らかに雫さんに吸い取られすぎてる! 運命は残酷だ……


「……で、ジュン。お前、ちょっと来い」


「は……? 何で急に」


「いいから来い」


「……はぁ」


 威圧感に負けて、廊下に連れ去られる。


 ーー何だよ、出逢ったばっかりの人間を急に連れ出して……


  

 雅はお構いなしに、俺の襟元を雑に掴んで廊下に引きずり出した。


 

 ーーーーこいつだけはないな。


 

 ふと、心の中で誓った。



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