プロローグ
2017年2月28日
身体が、じんじん熱い。
じんわり、視界が薄れていって、少しずつ心地よくなっていくのはなぜだろう。
うっすら、何かが聞こえる。心臓の音、周囲の悲鳴。あとは、なんだろ、ここ声……聞きなじみのある声ーー
『ーー閏なの』
そして俺は、死んだ。
……
「ーーここは」
「おお、気がついたか」
気がついたとき、俺は自分の部屋にいた。
ーーあれ、俺、生きてる……?
「ああ、お前は死んだよ?」
……やっぱり、俺は死んだのか……ん?
「いやいや、まず誰だよ、お前! ここって俺の部屋だろ……!?」
おかしい。
俺は確かに今、自分の部屋にいる。そして、目の前には、黒いスーツに身を包んだ男がこちらを睨んでいる。死後の世界のことを考えたことはなかったが、これがそうなのか?
「いいから落ち着け」
「落ち着けって……」
俺は、腰が抜けて立てなくなっている。
「事故の記憶はあるか、閏」
「ああ……って、なぜ俺の名前を……!」
「お前のことくらい、知ってる。水嶋閏。栄田西中学校3年、高校は尚英学院高校に入学予定だったな。不慮の交通事故にて、誕生日の2月28日に命を落とした、超絶不幸な男」
ボロボロにいいやがる。
「申し遅れた、俺の名はダウト。悪魔だ」
「……へ?」
今さらっと、エグいこと言ったよーな……
「ここは、お前の死後の世界。お前はラッキーだ。このまま地獄にブチ込んでも良かったのだがーー」
「いやちょっと待て!! おま、あああああ悪魔なのか……? ああ悪魔って、あの、」
「ーーさっそくだが、お前には生き返ってもらう」
「話聞け!! ……え? 今なんて?」
「だから、生き返ってもらうって。こっちも忙しいから、何度も説明させんな」
急に態度が変わる。
「生き返らすって……お前、ほんとに何者なんだよ……ここどこだよ……俺って、死んだんだろ……」
「ただなー、生き返ってもらうにも条件がある。俺は面倒なのは嫌いだから、手っ取り早く説明する。よく聞け」
何も聞いちゃいない。ほんとに何なんだ。死んでまで、面倒臭え……