37.冷酷者は笑んだ
オーガの覇気がひりひりと肌を刺す。ヤる気は十分なようだ。
私が使っている魔法である身体強化は、身体を強化するのであって巨人になれる訳ではない。故に、彼等の攻撃を受けて防げなかった場合、それは私の死を意味する。
里を歩き回って気付いたことがある。それは、死体が一切ないことだ。オーガも、オークも、等しく肉片の一つもなかった。
「オークがオーガを喰ったから、か?」
気付かないうちに口が動いていた。
「長の娘はもっとオーガとしての威厳があった」
思う思わないの問題ではない。怒りが乗り移ったかのように燃えていた。
「復讐すべき相手も見極められないのか?」
私はただ、燃えていた。とても冷たい炎だ。
オーガの戦士であろう者達が、何を怯えてか一歩後退った。それが不思議でならず、私はさらに問いを重ねていた。
「復讐を果たす為ならば後退るな。何故その足は後ろへと進むんだ?」
彼等の行為を理解できなかった。私は復讐に生きている訳ではない。必死に生にしがみついて、その為に死を繰り返しているだけ。いつからか、私は合理的な行為を重んじるようになっていた。疲れているだけなのかもしれない。それだとしても、私の行いは目的の為だけにある。
彼等の無駄でしかない素振りに嫌気が差す。目的が復讐ならばその為だけに進めばいい。
なんで、なんでっ……。
「もう二度とはごめんだ……」
オーガ達が私の言葉の意味を読み解けず、怪訝な顔で身構え続ける。『復讐』だけを理解したのか、その瞳は鋭さを増していた。
二度とはごめんだ。そうだ、やっとここまで来たのだ。苦しむ従魔達の顔が、今もまだ脳裏に焼き付いたままなのだ。これが離れることはない。これを忘れられる時は来ない。
オークもオーガも、私が救う理由は、ない。




