27.転生者、何度目の正直?
これはあくまで夢の話。現実ではない、夢の話だ。
いつもの目覚め、いつもの天井、いつもの背中の感触、いつもの朝の気配。全てがいつも通りの日の朝。
私は動きたくなくて、起きることを拒む子供みたいにベッドを下りなかった。
夢の中で夢を見て、その夢から覚めても違和感が残ったままのような、ふわふわした感覚がしていた。もしかしたら私はまだ夢を見ていて、本当は起きてなどいないのではないか。そんなことを考えては、一つ寝返りを打った。
イレイアに聞けば、時刻なんてすぐに分かる。それでも私は聞こうとしなかった。
朝起きて、時計がなくて、寝坊しているのかしていないのか分からない状態。それを味わいたかった訳なのかは分からないが、イレイアに聞くという選択肢を選ばなかった。
目を開けてから三十分が経っただろうか。特に何もなく、時間だけが過ぎていた。あまりに遅いなら、誰かが起こしに来てくれる。私の部屋は辿り着ける場所にあるのだから。
リュフォネの作った屋敷であるここは、リュフォネの意思によって間取りが変わる。決して行くことができない部屋にすることも可能だが、私の部屋はそうではない。それに、リュフォネが寝惚けて屋敷を動かすことは先ずない。
一時間くらいの時が過ぎた。自分の感覚が鈍ったか、不安になってくるほど物静かだ。確かに私の部屋は、皆の使う部屋や共同部屋とは離れている。とはいえ静か過ぎだ。
早く起きてしまったのかと、ここに来て初めて考えた。それならばこの静けさに納得がいく。
どれだけ時間が経っただろう。
もう、起きなければ。朝ご飯が冷めてしまう。
ようやく、決意のような何かが固まった。体を起こしてみたが、重くはなかった。何を重く感じていたのか忘れたように、むしろ軽いくらいだった。
「あ゛……お゛、はよ。あ゛ー、ん゛?」
喉が痛い。体を起こしてみて気付いたことが二つ。
寝起きだけが理由だと思えないくらい声が枯れていたこと。
痛みが走るほど、目が重いこと。
考えることを一旦やめ、いつも朝食を食べている部屋へと向かう。きっと皆、そこにいるに違いない。
私の部屋は土足禁止だ。誰であろうと靴では入れない。日本人であった為かこれだけは譲れない。
裸足で触れた床が冷たかった。
靴を履き、紐を結ぶ。体を動かしたからか目が冴えた。
廊下は明るく、そして静かだった。自分が立てる音だけが響く。
朝ご飯、何にしよう。もっと早く動けば良かったな。
然程後悔の念もなく部屋に辿り着く。
無駄に広い屋敷に違和感を覚える。廊下も、部屋も、テーブルも。何故ここまで広い屋敷を建てたのか。
収納魔法の亜空間から干し肉を取り出す。魔法で水を出し、朝はそれだけで済ませた。
味がしない。それに、静かすぎて怖い。
《いない》
ん? イレイア、どうかした?
《いません》
いないって誰が? ここには私しかいないでしょ。
《…………ユノアをお忘れですか》
『いないいないいないいないいないいないいないいないいないいないいないいないいないいないいないいないいないいないいないいないいないいないきおはいないいないいないいないいないいないいないいないいないいないいないいないいないいないいないそりあいないいないいないいないいないいないいないでるくいないいないいないるるいないいないいないいないいないいないいないいないいないいないいないいないいないいないいないゆのあいないいないいないいないいないいないくくないないいないいないいないいないいないいないいないいないいないいないいないいないゆびんいないいないいないいないいないいないいないいないいないよよいないいないいないいないりすらいないゆゆいないいないいないいないいないがろういないいないいないいないいないりゅふぉねいないいないいないいないいないいないいないいないいないいないいないいないいないいないいないいないいないいないいないいないいないいないいないいないりをないないいないいないいないいないいないいないいないいないいないくくいないいないいないいないいないいないいないいないいないいないいないいないいないいないいないいないみさないないいないいないここいないむむいないいないいないいないいないいないいないいないいないいないいないいないいないいないいないいないいないいないいないいないいないいないいないいないげのどいないいないいないいないいないいないいないいないいないいないいないいないいないとといないいないいないいないいないいないしぎないないいないいないいないいないいないでるだいないいないいないいないいないいないいないいないいないいないいないがらういないいないいないいないいないいないいないいないいないいないいないいないいないいないいないいないいないいないいないいないいないいないいないいないいないいないいないいないいないいないいないがれういないいないいないいないいないいないいないいないいないいないいないでるたいないいないいないいないいないいないいないいないいないいないろろいないいないいないいないあんいないいないいないいないいないいないいないいないいないいないいないいないいないいないいないいないいないいないいないいないいない』
息継ぎも無しに呟き続ける言葉は呪咀のようだった。それがフラッシュバックしてきて、私は全てを思い出した。
恐らく、今までで一番冷静に。そうでないといけなかった。息もできないほどで、それは私を蝕む化身だ。
気付いたときには、全てが遅かった…………。
息が、できない。




