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本と神様の約束  作者: 全無
第零章 従魔と森の覇者〜魔物国建国編〜
16/53

14.指揮者は戦場で

 私が名乗ったことで、ガロウだけでなく、ガレウとガラウも「フェル……」と呟いた。


 そこまで名付け親の名に問題があるのだろうか。

 へこむよ? 私。


 ガレウは白、ガラウは灰色の髪なのは、恐らく種族からだろう。白狼と灰狼からしてあっていると思う。ガラウはずっと、ガレウの後ろに隠れているが。


「ガロウ、ガレウ、ガラウ。名前を付けて進化するなら、他のやつにも付けた方がいいのか?」


 ふと思った疑問を、三人に投げ掛ける。意外にも、付けなくていいと言われた。三人の話によると、自分達はリーダー的な立場であり、許可すれば進化可能らしい。狼は全が個であり、個が全である。その為、群れの仲間であればいいらしい。


「そういえば、黒狼、白狼、灰狼って何が違うの?」

「あ、僕が説明します。」


 ガレウが説明を買って出てくれる。


「その三種族は流狼族の種族なんです。本来はそれぞれで群れを作り狩りをします。ただし、群れの数が減ると、他の種族に擬態して紛れるんです。

 特徴としては、狩りの仕方と毛の色が違います。数種族からなる群れはそれぞれの狩りを使うので、狩りの上達が早いです」


 だから見分けがつかなかったのか。


「ありがとう。謎が一つ解けた」


 説明してくれたガレウに礼をする。背後にいたガラウがビクリと跳ねた気がしたが、気づかなかったふりをした。少し傷ついたが。

 朝食を食べ終わり、また先に進む。狼がいるので、背に乗せてもらうことにした。ガロウが黒狼に戻ってまで私を乗せたがったのには驚いたが、ガレウとガラウは戻らず、私と同じように背に乗った。

 進行方向は川沿い。滝から流れる川だ。魔物との遭遇率が高そうだからというだけの理由だった。


 話相手が増えた私は、当然のように話を振る。


「ガレウ、進化させるならいつがいいかな」

「多分、僕達が進化したことで進化時間が短くなってると思います。なのでフェル様のしたいようにすれば良いかと」


 隣を走るガレウに聞くと、堅い口調で返事がきた。様付けなのが、ご主人サマと言われるより擽ったい。これも従魔契約の所為なのかと思うと、契約解消しようかとも思ってしまう。未だガラウとは話せていないが、喋ったら同じなのだろうと考えては、一人勝手に落ち込んだ。


 木々が過ぎていっても景色は変わらない。そんな景色が見慣れた頃、そいつは現れた。


 スライムが現れた。

 スライムが現れた。

 スライムが現れた。


→たたかう。

 けいやくする。

 にげる。


 初めて敵らしい敵に出会った感じがする。狼も敵認識していたのに。

 走っていた狼達のスピードが落ちていったら、緑だらけだった視界に鮮やかな蒼が映えた。美しいフォルムに濁りのない蒼は、イメージ通りのスライムだった。


「スライムって強いの?」

「上位種であれば」

「こいつは?」

「普通のスライムです。僕達ならば一瞬で倒せます。やりましょうか」

「いや、契約したいからいいよ」


 ガレウと質疑応答を繰り返した後、脳裏に浮かんだ選択肢から、『けいやくする』を選ぶ。ガロウから下り、忍び足で近付く。こちらに気付いてはいる、逃げられない為だ。あとは、手をかざし、唱えるだけ。


「従魔術、従魔魔法『鎖繋(チェイン)』」


 幾何学模様が浮かび上がり、自分とスライムが結び付く。カチリと嵌ったレールの上を感情が滑る。


『怖い、怖い、怖い』


 スライムから流れる怯えに、自分の感情が塗られる感覚がする。相手に感情移入するときの感覚だ。


「大丈夫。怖くない、怖くないから」


 しゃがみ込み、自分自身かスライムにかも分からない言葉を掛ける。




 従魔契約には人により契約限界数がある。また、相性が存在し、契約のしやすさに違いが出る。狼とスライムは契約できた。


 どれだけできるのか試してみたい。

 それが、今の私の原動力。











 角の生えた兎。腕が刃になっている熊。木と同化する鹿。

 その他にも魔物と多く出会っては戦っていった。契約することも考えたが、狼に乗らない為諦めた。機動力が下がるのは気が引けた。狼達の戦闘能力は期待以上だったとだけ言っておこう。


 空の色が闇色に変わり、十日目の夜が来た。初日は一人だったのに、随分と増えたものだ。

 それでも今は、夜が、夢がとてつもなく怖い。






『フェル! フェル! フェルッ!』


 私を呼ぶ声がする。聞いたことがない。切羽詰まったような焦った声。

 男? でも幼い。未だ高い声だ。


『フェル。ミサナが、ミサナ達が!』


 ? ミサナって……?


『お願い……ル。助……よ! ……ル』


 声が遠のく。

 待って、待ってよ! ミサナって誰なの?! ねぇ!!




 はぁ……はぁ……はぁ……。

 夢、か。

 記憶? 未来? 何でもいいか。




「おはようございます。フェル様」


 ガレウが、起きた私に挨拶する。

 夜も、夢も、怖いけれど。一人じゃないと思えば、少しは呼吸が楽になった。

 「おはよう」と返し、今日の予定を伝える。そしてまた、一日が回り出した。


 一日目。

 エクストラスキル『以心伝心』『一心同体』を手に入れた。


 エクストラスキル『以心伝心』。

 従魔であれば声に出さずとも意思の疎通ができるスキル。感情だけでなく、言葉として会話ができるのだ。


 エクストラスキル『一心同体』。

 従魔であれば、物理的、精神的問わず傷を肩代わりすることができるスキル。物理攻撃が効きづらいスライムに移せば、そのダメージはほぼゼロとなる。精神攻撃に関しても、耐性のある魔物に移せば同様だ。結果、従魔総勢の体力が一体に移ることになる。


 軽くチート化してしまった。体力バカとはこのことか。


 二日目。

 ゴブリンの縄張りに入った。

 一日、その場に留まり、情報集めに専念した。


 『小鬼族(ゴブリン)』。

 人型の魔物の定型的な例。知能は低く、弱種とされている。繁殖力が高く、発見次第早急な駆除が必要となる。

 戦闘方法は、棍棒や弓を使い、縄張りでは罠や人質を使う。魔法使いも中には存在する。復讐心が強く、〝子どもであっても生かしてはならない〟というのが、暗黙のルールとなっている。


 夜には、増え続けているスライムによってバリケードを貼り眠りについた。


 三日目。

 とうとうゴブリンが私達の存在に気付き、攻め入ろうとしていた。遠目から私はそれを眺めた。ここ数日で養った魔物の感情を読み取る眼を使って。


 貧相な小さな家が、ばらばらに建てられている。これまた貧相なボロ布を腰に申し訳程度に巻き付けた、緑の肌をした小鬼がそこにはいた。そしてそれらの瞳は明らかに濁り、陰り、絶望の一色に染まっていた。

 それを見て私はまた、選択する。


 これからとる手段は残酷だと、そう自分でも思えるほどのものだった。すれば相手の恨みを買うと、わかってはいてもそうはならないと、自分の目に賭けて確信する。

 彼らはもう、絶望を見ている。まるで自分を見ているようだと思いながら、重ねてみては私とは比にならないとも思う。絶望を見る彼らにさらなる絶望を見せることになろうとも、選択を変える気は微塵もなかった。


 スライムをマントの下に隠し持ち、ガロウ達にもスライムを纏わせる。喰わないように指示すれば、スライムに触れても溶かされることはない。

 ガロウは私が提案したときから今に至るまで、『以心伝心』を使って、気持ち悪ィだの吐き気がするだのと怒鳴っていた。頭がかち割れるかと思うほどめちゃくちゃ煩い。ガロウの所為で緊張もなにもない。今だけは優しさだとしても、感謝などしてやらない。


 地の利があるゴブリンは有利ではあるが、森を切り開いて作られた村は、防衛がされているとは思えないほど無防備だった。その点ではこちらに分配が上がる。

 数の有利でも互角だが、進化したガロウ達を考えると、それも無意味だと言えた。敵意を顕にする相手を無力化するのは難しい。しかし、圧倒的な戦力を以てしたら、どうだろうか……。











 倒すでもなく、契約するでもなく、私は小鬼族(ゴブリン)を、無力化する。











 ゴブリンの村が戦場へと移り変わる。

 スライムを纏ったガレウ、ガラウ率いる()()体の従魔が真正面から突撃する。私はと言うと、ガロウと二人で、高みの見物というものをしていた。


 別にっ、したくてしたんじゃないからねっ!




 数分前の話をしよう。


 ゴブリンが私達の存在に気付き、急ぎ戦闘準備を行っている最中。私は彼らを率いて戦場に出る気満々だった、にも関わらず、ガロウと、ガレウまでもが引き止めだしたのだ。


「いや、俺も戦うって。皆だけには任せたくない」


 そう言った途端、性格のまるで違う彼らの声が重なった。


「ご主人サマはここに俺と残れ!」

「フェル様はここに残ってください!」


 劈くような声と、ガレウまで乗ってきたことに驚きが隠せない。ガレウは声を荒らげてしまったことに慌てて謝ってくれたが、そういうことではない。


 私って、そんなに弱いって思われてるの??


 少なからずショックを受ける自分がいた。ショックが酷かったのか、私はすぐに二人に折れた。




 現在、私は木の上で高みの見物中である。もれなくガロウが引っ付いてくる結果となったが、指揮に問題はない為諦めもついた。以心伝心様々だ。陰ながらというか勝手な行動になるのだが、折角の『一心同体』なので、使ってみることにした。

 スライムは物理攻撃に耐性があるとはいえ、斬撃も打撃もダメージは受ける。雑魚モンスター、初心者向けモンスターと言われるゴブリンにも劣るスライムだ。一心同体がなければ瞬殺だろう。だからこそ、彼らの主として守らなければならない。


 村に攻め入ったガレウ達が、纏ったスライムをゴブリンに押し付けながら駆け回る。スライムには溶かさないよう言ってある為、許可がなければ攻撃はできない。だから私は、足止めとして利用する。

 人型になれて戦場にいるのは、ガレウとガラウだけ。その二人が縄でゴブリンの動きを制限していく。圧倒的な戦力を前に、元々涙目で立っているようなゴブリン兵の戦意が、いとも簡単に削げ落とされる。

 勝敗は、戦う前から見えていた。











 この時、エクストラスキル『以心伝心』とエクストラスキル『一心同体』。二つのスキルが合わさることの驚異を、私はまだ知らない。

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