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本と神様の約束  作者: 全無
第零章 従魔と森の覇者〜魔物国建国編〜
1/53

0.プロローグ

はじめまして、今日(こんにち)今晩(こんばん)は。全無です。

( `・∀・´)ノヨロシク

プロローグではあまり話が進みません。次からは進むかな、と思います。残酷描写は始めは出ませんので、ぜひ読んでみてください。

評価感想お待ちしています。

 本条ほんじょう みことは天才と呼ばれた。


 十歳のあの日、彼女は仮面を被り天才を演じるようになった。仮面は日に日に数を増していき、彼女の本当の姿を知る者はいなくなってしまった。


 彼女自身ですら、本当の自分を忘れてしまったのだ。




 田舎の小さな小学校。私は友人である雪乃ゆきのと、校内を回っていた。

 全校生徒六名、近くのスーパーマーケットまで車で二時間以上かかる程のど田舎暮らし。


 無駄に広い校舎の中で、私たちの興味を引いたのは、音楽室だった。

 開け放たれた窓に、満開の桜。そして、黒い光を放つ大きなグランドピアノ。


 不思議な力に惹かれるように、私はグランドピアノに手をかけた。子供らしくないと言われるような、モーツァルトのきらきら星変奏曲を弾きながら、私は雪乃と英語バージョンを歌った。




 そこでぷつりと記憶が途切れる。

 そうだ、これは現実ではない。私が創り出した、過去を映した夢なのだ。


 伏せていた体を起こし、現状の確認をした。

 どうやら私は、喫茶店の窓辺のテーブルで寝てしまっていたようだ。


「やっと起きた!」


と明るい声がして顔を向けると、そこには雪乃が立っていた。

 雪乃のチョイスであろう、抹茶きな粉パフェを両手に持ってこちらに向かって来る。


 夢の中の、まだ幼い頃の雪乃ではなく、成長して女性らしくなった雪乃だ。

 丸みのあった顔は細く、体つきは女性らしい膨らみがある。現在、私たちは十八歳の高校生だ。


「全く、命ったら疲れて寝ちゃうんだもん。せっかく買い物に来たのに……」


と、頬を膨らませながら雪乃はパフェを頬張った。

 少しすねている姿は、記憶の中の雪乃のままだ。


 私たちは大学受験はせず、就職する道を選んだ者なのだが、受験生がいる為邪魔はできない。学校の規則が緩く、それを理由に遊んでいるのだ。

 私は雪乃と他愛のない話をしながらパフェを頬張る。




 夢の中で夢を見る。そんなことが偶にあるが、こんな形で起きるのは初めてだ。


 『の記憶』の中で『幼い頃の記憶』の夢を見るとは……。




 私には、外れない仮面があった。

 何十枚にも重なり、外れることのない仮面。

 それが今、外れかけていた。




 あの喫茶店の後、私は死んだ。

 確かに死んだ。


 事故か、事件か、認識すらできなかったが、私が動かなければ雪乃が死んでいたのは、感覚で解った。


 喫茶店で会計を済まし、二人で歩道を歩いている時だった。


 妙に心臓が五月蝿く鳴っているかと思うと、背筋がゾッとするような嫌な予感が頭を過ぎった。危険を感じた私は、辺りを確認し、寒気の原因を見つけた。


 タンクローリー。


 それが真っ直ぐ、歩道に向かって突っ込んで来るのが見え、私は雪乃を出来る限り離そうと突き飛ばした。


 その後、衝撃で全身に激痛が走り、鼓膜が破けそうなほどの耳鳴りがした。瞬きをする暇もなく起きた出来事だった。燃えるように熱くなったと思ったら、血が流れて体温が一気に下がった。


 熱い。寒い。………痛い。


 熱さと寒さの原因が、痛みだということを認識するのに、しばし時間がかかった。


 気が付けば私は、暗闇の中を漂っていた。身体はなく、意識だけの状態で、三途の川の中途に居るかのように。

 しばらくそこを漂うと、様々な考えが頭の中を渦巻いた。


 私の行動は本当に正しかったのだろうか。

 雪乃に悲しい思いをさせてしまったのではないだろうか。


 ………ああ、でもそうか。もう終わりなんだ。

 終わりなら、最後に一つだけ願っても良いかな。


 今度は普通に生きていきたいな。平凡な家庭に平凡な暮らし。それだけで良い。

 幸せなら、何でも良いんだ。


 そう私は祈り、最後にこう思った。


『大切なモノがいて、それを守っていけるのなら、最悪な人生でも生きていけるかもしれな』


 私が雪乃を守ったように………。


 自分の行動が正しかったのかどうか、今は知る術はもうない。


 それを最後に、私は暗闇から抜け出すことができた。






 人は死の間際に、走馬灯を見るという。

 命が見た暗闇は走馬灯だったのか。

 もし走馬灯だったのならば、彼女の過去とは何なのだろう。

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