4.交換条件。
新作の情報もありますので、あとがきまでよろしくですっ!
「おい、アレってもしかして……!」
「間違いないな。こんな汚らわしい場所にいるとは」
元教員たちは、互いにそう言葉を交わす。
汚らわしい場所という言い草に、ナタリーは思わず眉をひそめた。しかしグッと堪えて、こう提案する。
「ミリアの代わりに、この王女ナタリーが人質となりましょう。条件としては、決して悪くはないかと思いますが?」
「な、何言ってるんだ! ナタリア!?」
それに驚いたのはガンヅ。
彼は声を上げて、王女に近付こうとした。
しかしそれを制したのは、やはりナタリー。王女は肩越しに彼を見ると、ほんの少しだけ目を細めた。まるで安心してほしいと、そう言い聞かせるように。
その意思が分からないガンヅではなかった。
そして、この状況も。
「…………!」
だから彼は、忌々しげに。
焦げてだらしなく垂れた腕を見て、唇を噛んだ。
「それで、どうしますか? ――お二方」
ナタリーはそんな彼を認めて微笑む。
しかしすぐに表情を引き締めると再度、男たちを睨むのだった。
「…………ふむ」
少々の時間を空けてから。
立場が上なのであろう方の男が、ニヤリと笑った。
「面白い。これは想定外だが、利用価値はありそうだ」
そして、そう口にする。
どうやら交渉は成立したようだった。
「だが俺たちの本来の目的は、あの二人だ。そこの男、もし王女を救い出したいのなら――」
最後に、こう告げて。
「アイン、あるいはフリーラスを差し出せ」――と。
◆
ミリアと二人、取り残されたガンヅは天を見上げていた。
そして、こう呟く。
「俺は結局、また逃げたのか……?」――と。
表情は窺い知れない。
しかし、その大きな肩は小刻みに震えていた。