8.その後のこと。
というわけで。
その後、どうなったのかというと……。
「おはようございます、アインさん!」
「おはよう、ベネット」
いつものように、ギルドで待ち合わせるボクたち。
明るい挨拶をしてくれた少女に、こちらも元気に返事をした。しかし以前とは少し異なることがあって、それというのも――。
「おはようございます! フリーラスさん!」
「あぁ、おはようございます。ベネットさん」
ギルドにはもう一人、見知った顔が増えたということ。
フリーラスはあの一件のあと、ギルドで職員として働き始めた。少しでもベネットの家にお金を入れたい、というのと、一人暮らしするための生活費を稼ぎたい、ということらしい。今のところはまだ、ベネットの家に居候しているが、もうじき資金も貯まるとのこと。
「どうです? 職員の仕事には慣れましたか?」
「あぁ、慣れてきたところだ。意外にやりがいがあるからな」
「新人冒険者への指導、好評ですからね」
「それは、昔取った杵柄、というやつだな」
彼の仕事は、駆け出し冒険者たちへの魔法指導など。
基礎魔法などの科目には、多くの新人たちが師事していた。
だてに魔法学園の教員をしていたわけではない、ということだろうか。
「まぁ、せっかく受け入れてもらえたのだ。今度こそは、信用を裏切らないように謙虚にやっていこうと思っている」
「そうですか。どこか、不思議な感じがしますけど――」
ボクは頬を掻いて、こう伝えた。
「頑張ってください」――と。
学園のことを水に流すには、もう少し時間がかかるだろう。
それでも、前を向いていかなければならない。フリーラスはフリーラスで、学園を追い出されるという報いを受けたのだから。
ボクは気持ちを切り替えた。
その時だ。
「おはようございます、アインにベネット」
「あぁ、おはようございます。ナタリアさん」
「おはようです!」
ナタリアさんが、ギルドにやってきたのは。
彼女はこちらに挨拶すると、なぜかフリーラスに鋭い視線を送った。
「ん、どうかしましたか?」
「いいえ。少し状況がまずいな、と……」
「状況が、まずい?」
首を傾げるが、答えは返ってこない。
分からないままに、この話は有耶無耶になってしまった。まもなくガンヅさんもやってきて、ボクらはその日の予定を話し合うことになる。
まぁ、特に気にする必要もないだろう。
そう思いつつ、ボクは一日の始まりを感じるのだった。
◆
一方その頃、王城。
国王は渋い表情を浮かべていた。
それもそのはず、娘のナタリーが帰らなくなって久しいのだ。心配や不安、その他にも憤りなど、感情が綯交ぜになってしまっている。
「まだ、捕まらぬのか」
「申し訳ございません……」
王の漏らした言葉に、配下の者が頭を垂れた。
「まったく、ナタリーは昔から自由奔放が過ぎる。将来的には国を支えなければならない、その気持ちはあるのだろうか」
「国王陛下の心中、お察しいたします」
「……察しておるだけだがな、お主たちは」
もはや愚痴に近いそれ。
大きなため息をついてから、国王はこう言った。
「ところで、例の書状の件だが――」
悩み深く、といった感じに。
「魔法学園への脅迫文、出どころは分かったのか?」――と。
――王都立魔法学園への、犯行予告。
そこには、こう書かれていた。
【フリーラスとアイン、両名を見つけ出して引き渡せ。さもなければ、魔法学園は塵となって消滅することになるだろう】
何者かによる脅迫。
そのことを、まだアインたちは知る由もなかった。
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