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7.事件の決着。








 ――しかし、終わりは訪れなかった。




「…………な、ぜ?」



 フリーラスは驚きに目を見開く。

 そして、自分の傍らに立った少年の姿を見た。



「どうして、お前がここにいるんだ!?」

「それは、またあとで。とりあえず――」



 少年――アインは、フリーラスに淡々と告げる。

 そして、双子の方を見て言った。



「ちょっと悪ふざけが過ぎるよ、二人とも」――と。







 ボクが間に割って入ると、サナちゃんとリナちゃんはすぐに得物を収めた。最初から殺すつもりなどなかったと、そう言いたげな表情を浮かべながら。

 ただ、今回もさすがにやりすぎだった。


 どうしてこんなことをしたのか、その理由を問いたださないと……。



「……それで? どうして、こんなことをしたの」

「そこのクソ教師が、本当に改心しているのか気になったんだよ」

「もしかしたら、またお兄ちゃんに酷いことをするつもりかもしれないし。そうだったら本気で殺しておこうかな、って」

「……はぁ……」



 訊ねるとそんな答え。

 ボクは肩を落としながら、大きくため息をついた。

 そして微かな怒りを込めながら、妹たちにこう宣告する。



「あとで、アレの刑だからね?」

「…………」

「…………」



 双子はそろって苦笑いを浮かべた。

 そんなわけで、ボクは今回に限っては被害者である彼に向き直る。ボクの姿を見た瞬間から、彼――フリーラスは、ずっと呆けた表情を浮かべていた。


 腰が抜けているのか、立ち上がれないまま。

 元教師は震えた声でこう言った。



「お、お前……! どうして、助けた!?」



 恨んでいるであろう自分を、と。

 ボクは彼のそんな言葉を聞いてまた、一つため息をついた。



「妹たちが人殺しになるのは嫌ですからね。それに――」



 そして、こう伝える。



「今回の一件で、ボクの中の貴方は変わりましたから。ベネットからも話は聞いています。だから正直複雑ですが、手打ちにしようかな、って」

「手打ち、だって……?」



 手を差し出すと、困惑の表情を浮かべるフリーラス。

 しかし数秒の間を置いてから、首を左右に振った。




「いいや。まだ、ダメだ」――と。




 彼は震える足で立ち上がってから、ゆっくり呼吸を整える。

 そして、おもむろに両膝を地面について座った。



「あの、なにを――」

「黙って見ていろ! これが、最大限の謝罪だ!!」

「………………」



 フリーラスは、額を地面に押し付ける。

 それは土下座だった。



「お前――いや。キミには、済まないことをした。許してほしいと頭を下げるのは、私のわがままにすぎない。だからこれを、詰まらない行為だと切り捨てても構わない」



 彼は言う。



「私は心の底から後悔している。再び上流階級には戻れなくてもいい。むしろ、戻る資格などないと理解している。ただ、キミには――」




 深い反省と、未来を思って。




「もう一度、学園に戻ってほしいと思っている」――と。




 その声は、ボクたちの耳に届いた。

 それはきっと、この言葉がいまのフリーラスにとっての本心だから。

 だとすればボクにできる答えは――。



「分かりました。でも――」




 呼吸を整えて、しっかりと告げた。




「学園に戻るかは、もう少しだけ考えさせてください」




 こうして、事件は解決。

 色々と問題は出てきたけれど、それはまたあとで考えるとしよう。



 


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「【大器晩成】の少年、偶然に手にした【超速成長】で世界最強に。」新作です。こちらも、よろしくお願い致します。
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