6.改心の戦い、決着。
「いでよ、古代の炎――【エンシェントフレイム】!!」
フリーラスがそう口にした直後、双子の周囲には魔法陣が発生。
やがて彼女たちを取り囲むようにしたそれからは、強烈な熱が生まれた。そして、灼熱の炎がサナとリナを包み込む……!
上位魔法を操れるのは、世界中の魔法使いでもほんの一握りだ。
その点においてフリーラスもまた、才に恵まれた存在であることは明らか。さらに彼の場合は一種類に留まらず、歴代最多とも謂われる属性魔法を駆使するのだ。
「へぇ……?」
「おじさん、思ったよりもやるね」
その事実を目の当たりにして、双子はまたニヤリと口角を歪める。
兄であるアインの魔法を間近に見て育った彼女たちには、フリーラスの能力の高さが分かったのだ。間違いない。道を踏み外さなければ、彼は高みへ昇っていた。
もっとも、アインの才には及ばない。
その前提があったが。
「でも、おじさんの魔法はお兄ちゃんには敵わない」
「なんだったら同じ魔法でも、お兄ちゃんの方が威力は上だよ?」
だからこそ、双子は余裕の笑みを崩さない。
抗魔法により古代の炎を潜り抜けると、彼女たちはフリーラスに肉薄した。そして勢いよく大鎌を振りかぶる――その時だ。
「あぁ、分かっているさ。だから――」
フリーラスが、笑ってこう言ったのは。
「少しだが、小賢しい手を打たせてもらった」
直後にサナとリナの足を、何者かが掴んだ。
「なっ――!?」
「なに、これ!!」
それは、むき出しの地面から。
なにもなかったはずのそこから、泥状の腕が伸びていた。
粘性を持ったその腕は、彼女たちの足を絡め捕って離さない。そして、ジワジワと引きずり込もうとしていく。
「下級魔法の【デザートハンド】と言ってね。私の得意とする分野だ」
フリーラスは眼鏡の位置を直しながら、ふっと笑みを浮かべた。
真っ向勝負ではまず双子に敵わない。そのことは、数日前の戦いで重々承知していた。だからこそ、勝ち筋を見出すにはどうすれば良いか。
それは、搦め手。
時には卑怯、卑劣と罵られることもある手であった。
しかし学生時代より、フリーラスはこの手の類を得手としていたのだ。ただ体裁が悪いという一点において、封印をしていたのが……。
「キミたちに勝利するには、形振り構っていられないからな……!!」
彼はさらなる上級魔法を唱える。
それは古代の炎と並び立ち、かつ凶悪と称されるもの。
「煉獄よ、姿を現せ――【ヘルフレイム】!!」
漆黒の炎が、双子を包囲した。
そして――。
「これで、終わりだ……っ!!」
龍を模した形となったそれが、サナとリナへと躍りかかる。
勝敗は決した。そう、思われた。
「残念でした」
「勝つのは、私たち」
次の瞬間だ。
【デザートハンド】に拘束されていたはずの双子が、泥になって溶けたのは。
次いで聞こえてきたのは、後方からの声。聞き間違える余地のない、サナとリナのものであるそれは、フリーラスの背中にぴたりと触れている。
「さすがに、一本取られかけたけど」
「保険で人形を作っておいて、正解だったね?」
くすくすと、双子は笑う。
それを聞いてフリーラスは、振り返ることなく静かに目を閉じた。
――終わったのだ、と。
彼の改心による戦いはあっけなく、敗北で幕を下ろす。
そして、敗北の先にあるのは――。
「あぁ、さようならです。――ベネットさん」
フリーラスがそう口にした直後。
双子の大鎌は鋭く、彼の首目がけて振るわれた。




