3.フリーラスの行方。
(੭ु´・ω・`)੭ु⁾⁾フリーラスさん、どうなるやら。
「あぁ、私は間違っていた……」
フリーラスは涙ながらに白湯を飲みながら、静かにそう呟いた。
彼がいるのは貧困街にある一軒の家。どこもかしこもボロがきているが、雨露をしのげるのであれば野宿の何倍も良い。
それに加えて、この家には愉快な子供たちがいた。
「おじちゃん、一緒に遊ぼう!」
「あぁ、いいぞ。あはは――子供なんて、煩わしいと思っていたはずなのに」
数人の子供に手を引かれて。
フリーラスは、過去の自分を振り返ってそう自嘲気味に笑った。
「ほんの少し前なのに、ずいぶんと昔に感じられるものだ。あの時の私は己の自己顕示欲求に縛られて、善悪を見失っていた……」
いま、あの時に戻れるのなら。
そう考えたが、彼は首を静かに左右に振った。
「いやいや、今さら戻れないさ。それに恩義もある」
彼はふと、この家の主を思い出す。
年若い少女ながら心優しく、しっかりとした人物だ。
彼女は路頭に迷っていたフリーラスを見つけると、迷うことなく招き入れてくれた。少しの食事と寝床を与えてくれた、まさしく女神といって違いない。
その少女の力となりたい。
それが自分にできる贖罪なのだとしたら、それを成したい。
「魔法学園の教員の座は、もはやどうでも良いな。私は――」
「どうされたんですか? フリーラスさん」
「あぁ、おかえりなさい」
子供たちと戯れながら、そう口にしていると。
ふいに背後から少女の声が聞こえた。
「ケガと体調は、もうよろしいんですか?」
「あぁ、大丈夫です。ご迷惑をおかけしました」
「それなら、良かった。ご迷惑だなんて、貧困街では助け合いですから」
「助け合い、ですか……」
少女の言葉に、フリーラスは少し思いを巡らせ。
「う、うぅ……!」
唐突に涙した。
「ど、どうされたのですか!?」
当然ながら、彼の涙に驚く少女。
フリーラスはそれを見て、心配させまいと涙を拭って笑った。
「いえ、少し昔を思い出したのです。私も子供の頃は、もっと純粋に友人たちと手を取り合っていたはずなのに、と」
「そうなのですか……?」
「……えぇ。それがいつの間にか、出世や名誉欲に目が眩んでしまった。友人たちとの切磋琢磨は、蹴落とし合いに変貌してしまったのです」
「………………」
少女が息を呑む。
そんな相手の様子に、フリーラスはまた自嘲気味に笑って。
「でも、いまは心が晴れやかになりました。これもきっと――」
自身の女神を見て、こう言った。
「ベネットさんの、お陰ですね」――と。
◆
「ねぇ、サナちゃん? あれ、どう思う」
「私は無視できないと思うよ、リナちゃん」
そんな様子を陰から見つめる双子の姿があった。
彼女たちは薄汚くなったフリーラスを観察しながら、静かに会話を交わす。そして同じタイミングで頷いて、こう言うのだった。
「だよね、それじゃ――」
「そうだね。ここは一つ――」
かちゃり、と。
大鎌を取り出して……。
「少しだけ、試してみようか」――と。