2.ベネットの遅刻。
お久しぶりです。
遅くなって申し訳ないです(੭ु´・ω・`)੭ु⁾⁾
「さて、今日はどんなクエストを受けようかな」
本来は路銀を稼ぐために始めた冒険者。
でも、最近のボクは単純にこの暮らしが楽しくなっていた。
ギルドや仲間のみんなも良い人ばかりだし、父が健在のうちは王都で冒険者を続けても良いのかもしれない。そう思いながら、今日もギルドに足を踏み入れた。
「おはよう、アイン」
「アインは今日もご機嫌ですね」
「おはようございます、ガンヅさんにナタリアさん。……あれ、ベネットは?」
そして入り口近くに立っていた仲間たちに挨拶する。
だが、すぐに一人欠けていることに気付いた。ボクが首を傾げると、ガンヅさんも不思議そうに周囲を見回す。
「そう言えば、珍しいな」
「ですね。いつもなら、誰よりも早くにきているはずなのに」
ナタリアさんも、同じく。
というのもベネットが遅刻するなんて、今までなかったからだった。
厳密には遅刻というほどでもないのだけれど。彼女が待ち合わせ時間より先にきていないことは、これまでなかった。
そんなわけなので、ボクらは揃って首を傾げる。
「まぁ、たまには遅れることもあるよね」
「そうですね。ゆっくり待ちましょう」
しかし、そんな日もあるだろう。
ベネットにだってプライベートというものがあるのだから、あまり急かすのも良くないと思った。そんなこんなで、待つこと小一時間。
「お、遅れてすみません……っ!」
「おはよう、ベネット」
ベネットがギルドにやってきた。
肩で息をしながら、ひどく慌てた様子で。
「なにかあったの?」
気になったので訊いてみた。
すると少女は、えっと……、と少し考えてから答える。
「あの、昨日拾った……えっと、犬のお世話をしてたら……!」
「犬……?」
「そうです! 犬です、犬!」
こちら三人が揃って首を傾げると、なぜか息巻いて頷くベネット。
子犬でも拾ったのだろうか。優しい彼女ならあり得そうだ、そう思った。そういうことなら問題はないだろう。
もし危険に巻き込まれていたなら、全力で助けようと思っていたけれど。
「そっか、それじゃ――」
「あのー、それで。実はお願いがありまして……」
「ん、お願い?」
早速クエストに赴こう。
そう思って号令をかけようとした。その時だ。
「今日はちょっと、その犬の体調が悪かったので欠席しても良いですか……?」
申し訳なさそうに、ベネットがそう申し出たのは。
◆
「怪しいね、それは」
「うん、きっと男だよ? お兄ちゃん」
「怪しいって、どうしてそうなるの……?」
ひとまず一日の諸々を終えて宿に戻った。
そして妹たちに何の気なしに話題提供すると、二人は顔を見合わせてそう言う。互いにうんうんと頷いて、勝手に結論付けていた。
「だって、ベネットさんは欠席したことなかったんでしょ?」
「それに一人暮らしでもなくて、家には兄妹もいる」
「いや、考えすぎだって」
苦笑いしていると、彼女たちはそう続ける。
どう考えても考えすぎな気がするのだけれど、あちらも折れるつもりはないようだった。そうしていると、サナちゃんがこう提案する。
「それなら、私たちがお手伝いに行ってみるよ!」――と。
いいねそれ、とリナちゃんも納得した。
ボクも少しだけ考えてから――。
「あー、なるほど。それならベネットもクエストに集中できるかも」
そう、結論するのだった。
まさか、あのような事態になるとは知らずに……。