5.喧嘩のあとに。
コメディタッチに。
新作情報がありますので、あとがきまで。
「わあああああああああああああああああああん!!」
「ごめんなさあああああああああああああああい!!」
王都に、サナとリナの泣き声が木霊していた。
「えっと、アイン? そろそろ――」
「ダメですよ、ガンヅさん。こういうのは、本当に反省するまでやらないと」
「いや、それはそうだが。でもそろそろ……」
――パシイイイイイイイイイイイイイン!!
乾いた音が鳴り響く。
「びえええええええええええええええええええええええん!!」
「うわああああああああああああああああああああああん!!」
するとまた、サナとリナの悲鳴。
ちなみにガンヅの傷は、アインの治癒魔法ですでに治っていた。しかしながら、本来なら怒り心頭して然るべき彼さえも、引いている。
そんな状況であるため、当然に女性陣も苦笑いしかできなかった。
――またも、乾いた音。
「あはは、意外と厳しいんですね。アインさん……」
「そ、そうですね。身内には特に、という?」
普段は軽くいがみ合っているベネットとナタリア。
そんな二人も、今ばかりは意見が一致していた。なぜなら――。
「えぐっ……! お兄ちゃん、ホントに……!」
「ごめんなさいぃ……!」
二人の少女が、兄に尻を叩かれてマジ泣きしていたのだから……。
◆
――そんなわけで。
「はい、二人とも。ガンヅさんに、ごめんなさいは?」
「ごめんなさい……」
「もう、しません……」
「お、おう……!」
サナとリナは、アインに促されて深々と頭を下げた。
完全に懲りたのか、瞳からは光が失われている。
「はい、これで一件落着!」
そんな二人を、清々しい表情で見つめる兄――アイン。
ベネットは少しだけ気まずそうに、こう訊ねた。
「あの、この件は良いとして。まだ根本の問題が……」
そう。それというのも、二人がどうしてアインを探していたのか。
その問題についてだった。
すでに一通りの事情は聴いていたが、アインの答えはまだ出ていない。双子の話によれば、学園は少年を戻す意向があるとのことだった。
それを聞いた上で、彼はどのような結論を出すのか。
「あの、どうされるんですか?」
緊張した面持ちで、代表するようにベネットは訊ねた。
すると、アインは首を傾げて答える。
「え、そんなの決まってるじゃないか」
なんてことない、といった風に。
「ボクは、みんなと冒険者を続けるよ!」――と。
その言葉には、迷いがなかった。