2.闇夜より来たるは。
「今日も疲れたな! いやぁ、生きているって感じだ!」
「ガンヅさん、本当に生き生きしてますよね」
「あぁ、もちろん。やっと自分の適性を知った気がするからな!」
「アインさんのお陰ですね!」
ダンジョン探索を終えて。
アインと別れたガンヅ、ナタリア、ベネットの三人は夜の街を歩いていた。
各々に笑みを浮かべながら。そして、口々にアインのことを話す。それがここ数日の日課となっており、三人にとっての共通の話題だった。
「ナタリアさんも、元学園生なんですよね?」
「……え、えぇ。そうです!」
その最中に、不意にベネットに話題を振られたナタリア――ナタリーは、少し驚いたように目を丸くする。答えたものの、どうしたのかといった感じだ。
そんな彼女に、少女はこう訊ねるのだった。
「どうして、冒険者になろうと思ったのですか?」――と。
本当に、何気ない疑問だった。
「え、えーっと……」
しかし、それに答えられないナタリア。
王女であることは当然の秘密であり、バレていない現状が奇跡だった。それをいま、こうやって訊かれてしまっているのだから、冷や汗ものである。
そんなナタリアの様子を察してか、ガンヅが助け舟を出す。
「まぁ、おおよそアインを追いかけて、ってところだろ?」
「そう、ですね! はい、アインを追いかけて!」
そして、それに乗っかる王女だった。
しかしベネットには、まだまだ疑問があるらしく首を傾げる。
「アインさんを追いかけて、って。でも、どうして――」
だが、それを口にしようとした時だった。
「いま、お兄ちゃんの名前を口にしたね……?」
「うん、私も聞こえた。じゃあ、この人たちが――」
暗闇の中から、そんな声が聞こえたのは。
「誰だ!?」
即座に、二人の前に立って盾を構えるのはガンヅ。
女性二人を守る姿は、まさしく騎士だった。
「誰だとか、貴方たちには関係ないよ?」
「知ってることを教えてほしいの」
しかし、相手は答える気もない様子で。
ゆらりと闇の中から姿を現した。
立っていたのは、鏡合わせの少女二人。
手には大きな鎌を持っていた。