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2.王女が駆け込んだのは。

一日、更新空いて申し訳なかったです。






「これは、バレましたね……」



 ナタリーはぼそり、そう呟いた。

 今朝は家臣たちが何やらざわついていたのだ。まだ幸いなことに、冒険者になった、などといった子細な情報は漏れていないらしい。

 無能な教員たちでも、そこは最低ラインとして守ったということか。


 そんなことを考えながら、王女は少し立ち止まる。

 アインたちと別れて街を歩いていたが、これは帰るべきではない。帰ったら最後、監視下に置かれて身動きが取れなくなるだろう。



「どこか、身を寄せられる場所があれば良いのですが――ん?」



 その時だった。

 ふと投げた視線の先に、見覚えのある背中が見えたのは。


「あれは、ガンヅさん……?」


 それはパーティーメンバーの男性、ガンヅだった。

 その大きな身の丈ほどある盾を背負っている姿は間違いない。ナタリーは何の気なしにその後ろをついていく。すると、彼は貧困層の中でも最も貧しい地域に入っていった。



「ん――ここは?」



 そして、最後にたどり着いたのは――孤児院。

 薄汚れた立て看板に、そう書いてあった。切れかけの街灯を頼りにして進むと、ガンヅは明かりもないその建物の中に入っていく。

 そうしてやっと、微かな明かり――ランプだろうか――が灯った。


 同時に、元気いっぱいな子供たちの声が聞こえる。

 そこまで至ってナタリーは納得した。



「ガンヅさん、冒険者をしているのには理由がある、って仰ってましたけど。そういうことだったのですね……」



 以前に彼は、そんなことを言っていた気がする。

 それを思い出して、彼女はゆっくりと歩みを前に進めるのだった。







「いやぁ、まさか……。ナタリアがついてきてるとは、な」

「申し訳ございません、勝手なことを……」

「いやいや、気にしないでくれ。それよりもロクなもてなしもできなくて、こっちが申し訳ないさ」

「それこそ気にすることないですよ」

「そうか?」




 ガンヅは不意に訪ねてきた仲間を、自身の家に招き入れながら言葉を交わした。端正な顔立ちをした少女は、礼儀正しく、美しい所作で礼をする。

 そして、興味津々といった風に部屋の中を観察した。


 殺風景で、なにもない。

 ガンヅ本人も、そう思うほどになにもなかった。

 小さな部屋の中には寝床が用意されており、すでに数名の子供が眠っている。残りの子供はナタリアの登場に、にわかに活気づいていた。



「ねぇ、お姉ちゃん? どこからきたのー?」

「こらマリ、ちゃんと挨拶からしなさい」

「はーい、ガンヅお兄ちゃん!」



 そして、そんな質問攻めを受けることに。

 ナタリアは新鮮な感覚に微笑みながら、答えられる範囲で答えた。その様子を見て、ガンヅはふとこう訊ねる。



「ナタリアは、子供が好きなのか?」――と。



 アインから訊いた話だと、彼女もまた魔法学園の学生だ。

 そうなれば貴族ということになり、こういった場所に足を運ぶのは気が引けるはず。それでも笑みを浮かべられるのは、そうなのではないか、と考えたのだ。



「えぇ、そうですね。子供は、未来そのものですから」



 すると、思った通りの返事。

 彼女は目を細めると、マリという少女の頭を撫でた。



「子供は、未来――か」



 ガンヅはナタリアの言葉に、自然と笑みをこぼす。

 さらっと出てくるあたり、本気でそう思っているということだ。掴み所のないと思っていた少女と考えが似ている、その共通点に彼は嬉しくなった。



「今日は泊っていくといい。この時間は、危険だからな」



 そう言って、寝床の準備に取り掛かる。



「えぇ、ありがとうございます」





 ガンヅは、ナタリアの声を聞いて思った。

 この王都の貴族もまだまだ、捨てたものじゃない、と。



 


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「【大器晩成】の少年、偶然に手にした【超速成長】で世界最強に。」新作です。こちらも、よろしくお願い致します。
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