6.小さな恋心。
意外と早く書けました_(:3 」∠)_
そして、ここまで第3章です。
「【ファイア】――!!」
ボクは露払いをするために、下級魔法を放った。
デイモンの下位互換であるリトルデイモンにはこの程度で十分。短い断末魔を上げてから、数体のそれは魔素の欠片へと還った。
小指ほどの大きさの欠片を拾い、袋に仕舞う。
そして、次に行こうとした。が――。
「流石ですね、アイン!」
「え、ナタリアさん!?」
それを遮るようにして、腕を絡めてくる人物があった。
その人――ナタリアさんは、嬉しそうに笑いながらボクのことを褒め称える。もっとも、大したことはしていないので、本気で困惑してしまった。
「私は魔法を使えませんから、尊敬に値します!」
「え、いや。これくらいなら――」
「それでは、前に進みましょう!」
「あ、はい……」
しかし、そう言われては頷くしかない。
だから首を傾げながらではあったが、ひとまず先に進むのだった。
◆
「むぅ……!」
そんな二人の様子を、膨れっ面で見ていたのはベネット。
少女はアインとナタリアの後ろを歩きながら、こう静かに口にした。
「ベタベタしすぎです……!」
明らかなヤキモチ。
その言葉を聞き逃さずに笑ったのは、ガンヅだった。
「おぉ、ベネット。やっぱり、気になるのか!」
「そりゃ、気になりますよ! あんなにくっ付いて歩いたら、アインさんの邪魔にしかならないじゃないですか!!」
「はっはっは! ホントにそれだけかぁ?」
「うぅ、ガンヅさんは黙っててください!」
茶化すように言われたベネットは、小さく彼の横腹を小突く。
誰の目にもアインへの好意は明らかな少女だが、本人は頑なにそれを否定していた。しかしながらナタリアが加入してからというもの、嫉妬は一層に強くなる。
同時に、寂しさも強くなるのだった。
「やっぱり、アインさんもあたしみたいな子よりも……」
そして、思ってしまうのだ。
自分はやっぱり、アインには不釣り合いなのではないか、と。
彼の隣を一緒に歩きたいという気持ちはあるものの、領主の息子であるアインと、貧困層出身の自分とでは住む世界が違うのではないか、と。
「気にする必要はないんじゃないか?」
「ガンヅさん……」
だが、そんな彼女の気持ちを察してか。
ガンヅが何ということもなく、そう言うのだった。
「よく言うだろ? 人を想うのに、身分だとか年齢なんて関係ない、って」
ニッと、笑って。
それは彼からの、精一杯の励ましだった。
ベネットは、ほんの少しだけキョトンとしてから答える。
「その顔で言うには、似合わないですよ?」――と。
くすりと、小さく笑ってから前を向いて駆け出した。
そして、自身もまたアインに抱きつく。次いでナタリアの顔を覗き込むようにして、少女はこう思うのだった。
――負けないですよ、と。
新しい仲間の加入で、起こった小さな波。
それが後に国を巻き込む事態になることを、この時の三人は知る由もなかった。
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