あなた、消滅しますよ。
「ハハハ、ハハハ、ハハ。」
あれ?笑って流そうとしたが出来ない。
俺は何か重要なことを思い出したようだ。
それが何かは解らないが、しっかりと俺の本能は経験からか社長に対しもの凄い恐怖を感じている。
社長の声が暗くなる。
「千鬼君、、あなたがここで働く事になったのはあなたの意思じゃありませんよ。」
「千鬼君あなたが犬月先生の担当になったのはたまたまではありませんよ。」
「千鬼君、犬塚先生はあなたの監視をしていたのですよ。」
「だって千鬼君、あなた、夜月は私たちの中で一番のお気に入りでしたもんね?」
俺の頭の中では明らかにここ27年分の物ではない記憶が甦ってくる。
すると記憶のなかに、遠い過去に出会った女性で犬月先生と全く同じ顔の人がいた。
名前は確か、、、そう夜月。
「あなたは、いつも、いつも、暇があればこの世界の女性を見物に遊びに出て行っては、たまに眷属だって言って新しい女性を連れて帰って来て、今度は30年間自分の世界をほっぽりだしですか??、今、あなたの世界はどうなってると思ってるんですか??ねぇ??解ります?言いたいこと?」
「あれ???なんの事かな??」
いや、しっかり思い出している。
俺は28年前、この世界から4人目の女性の眷属を造り自分の世界に戻ったとき社長、いや涼にこっぴどく怒られた。
その説教があまりにも長かったので俺は隙を見てこの世界に逃げた。
そしたら予想外なことに凉が追ってきたので幼児化して、まこうと思ったら幼児化したのと一緒に記憶を消してしまっていた。
そうかそうか、その時こいつは俺を他人に押し付けたってことか。
浅岡さんの記憶をもいじって。
しかも俺に自分の名前で生活させやがって。
「一言で言います、千鬼さま。」
そうそう俺は千の鬼をも斬る、そんな存在でありたいと思って、この国に初めて来たとき、凉を眷属にしたときその名前に変えたな。
その時は大変だった。
俺の世界の住人全員の記憶をいじって、書物さえもいじって神の名前を前の名前から変えさせたんだから。
そう言えば今回この世界のこの国に来たら若者たちが
「チッキってんのかぁおい!!!逃げんのかぁ??」
って言ってるのを度々耳にしたけどあれは相手を誉めてたのかな?
いい若者たちじゃないか、またこの国を好きになりそうだ。
また誰か一人眷属にしてあげようかな。
「今あなたの世界ヤバイです。」
懐かしがっている俺を無視して凉は力強く宣言した。
俺は自分が消滅する条件を思い出す。
一気に恐怖から足ががくがく震える。
たしかに約30年ほったらかしにしていたのだ、この世界のようには回っていないだろう。
俺は一応確認する。
「どん位ヤバイ?」
凉は普通に答える。
「人間は地下に潜り、地上では四勢力の魔王が覇権争いしています、つまり魔王が四人います。住民によるあなたへの祈りは途絶え、信仰心はもうほとんどないかと。あなた消滅しますよ。」
俺は予想を上回る深刻さに震えも止まった。
「え、、待ってヤバイじゃん」