9話 魔物狩りに連れていかれてしまいました。
みなさんのおかげで、pv数がかなり増えてきました!!
これからも、投稿を頑張って行きたいと思いますのでよろしくお願いします!!
「はぁっ、はぁっ、はぁっ、、、、、、」
「今日はここまでにしよっ!」
「ありがとうございやしたっ」
凌多は投げやりに感謝の言葉を告げるとその場で仰向けに寝転がった。息を整え終わるとリリーに大事なことを確認した。
「キツすぎじゃね?」
「凌多がエルフを救うって言っちゃうから、仕方なく私が教えてあげてるんでしょっ」
「そうなんだけどさ、、、」
リリーが行ってくれた特訓は地味であった。火球、水球、岩弾を的である木に向かってぶっ放し続けMPが尽きるとリリーから魔力を流される。これを昼過ぎから夜まで延々続けさせられた。
お陰で少しずつではあるが的に届くまでの速度が早くなったように感じる。
「この特訓を続けていけば、魔法の威力が強くなるってことか」
凌多は納得したように呟くとリリーから驚くべき言葉が告げられた。
「うん?この特訓はそのためじゃないよっ!」
「はぁぁぁああ?じゃあなんでこんなことを?」
「魔力の威力はイメージと魔力を放出する時の速度によって威力が変わるのっ」
意味がわからない。
「魔法の威力を上げるには魔物でも狩ってるのが一番効率がいいのっ、この特訓はMPを増やす為の特訓よっ!」
「どうゆうこと?『ステータス』にレベルもあったしMPを上げるには戦ってレベルを上げるのが一番だと思うんだけど、、、」
「違うわっ、凌多はバカなのっ?レベルで上昇するのは戦う時に使った能力だけよ?剣で切って倒してMPとか、魔法の威力が上がるわけないじゃないっ!」
確かにそうだ、、、
凌多は異世界を勘違いしていたのかもしれない。
異世界で生きる意味を、今までやっていたゲームの感覚で考えていた。
レベルが上がれば、敏捷性は速くなり、耐久力も上がる。もちろん魔力も上がり戦いを有利に進められると、、、
簡単な話、エルフの国を救うためにそこら辺の魔物を昼夜問わず片っ端から倒し続ければ、レベルが上がってエルフ族を救えるのではないか?そんな考えすら頭の片隅にはあったのだ。
「ごめん、リリーが思ってるより俺は軽く考えていたのかもしれない、、、」
「ん?どうゆうことか分からないけど勘違いしちゃってるなら考え直した方がいいわねっ!」
「そうだね、、、」
俯く僕に対してリリーは告げる。
「まぁ、やれることをやっていくしかないわっ!『ステータス』を見てみてっ!」
凌多は言われるがままに『ステータス』を開いた。
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名前 :加藤凌多 (かとうりょうた)
年齢 :19歳
種族 :ヒューマン
レベル:1
HP :100
MP :500
筋力 : 30
耐久 : 42
敏捷 : 61
魔力 : 51
スキル:分析 ステータス 言語理解
ギフト:【∞収納袋】【神託】
称号 :異世界転生者、【神託】を授かりし者、妖精と絆を結ぶ者
※【神託】現在はありません。
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「あれ?MPがかなり上がってる、、、」
「今日の特訓は、MPを上げるためだって言ったでしょっ!このやり方が一番MPを上げるのに最適だって【神様】からもらった知識にあったのよっ!」
「でも、魔法打ち続けただけなのに?」
疑問に思うと、リリーが説明してくれた。
最初、MPの最大値は使えば使うほど伸びるらしい。体がより多くのMPを貯められるように、自身の魔力に対して最適な細胞へと変化させているからである。
リリーは詳しいことを説明してくれたが、難しかったので簡単にまとめると
細胞が限界を覚える前に出来るだけ魔法を使ってMPの上限を増やしておけってことらしい。
だがしかし、この方法は最初以外永久に使うことは出来ない。魔法を使うことに慣れてしまうと急激には伸びなくなってしまう。
「2、3日はこの特訓を続けるからねっ!覚悟しときなさいよっ」
「分かった、お願いします!!」
リリーは俺のことをしっかり考えてくれている。言われた事をやっていれば間違いないだろう。
訓練場からの帰り道に気になった事を聞いてみる。
「この特訓、普通の人はやってないのか?MPと比例して魔力も上がってるみたいだけど、人間族の平均って50しかないんだろ?」
「まぁそうね〜、やりたくても出来ないのよっ!」
「そうなのか??」
「このやり方は、大量のMPを持っている人が必要だからねっ!」
「MPを譲渡しまくっても問題ない人がいなければいけないって訳か、、、」
「そうよっ!えへへっ!私に感謝しなさいっ!」
リリーは得意げな顔をしている。確かにリリーには感謝しかないなぁと考えていると、ふと考えがよぎった。
「リリーってどのくらいのMPを持ってるの?」
「んっ、ん〜?まぁ、多いわよっ?」
リリーは、何故かはぐらかした。顔をこちらから背けている。あれ?どうしたんだ?
「具体的にはどのくらいなんだ?」
「えっ?あぁ、うんっ、7000くらいかなぁ、、、、、」
「すごいな!!で、なんで顔を背けているんだ?」
「えっと、そのねっ、私は凌多が名付けをしてくれたから生まれたわけで、、、」
「それは、聞いたぞ?」
「生み出す時に、凌多のイメージと貰った名前が主になって、作られたじゃない?」
「そんなことも言ってた気がする」
「その時のイメージは妖精で、凌多は妖精に魔法を万能に使えるっていうイメージを持っていたのよっ、、、」
「なるほど、俺のイメージの中の妖精は魔法で戦うイメージがあったからかもしれない。それで?隠してることはなんだ??」
流石の凌多もこれだけ、話しづらそうに進められると何かを隠していることくらいわかる。
リリーは、諦めた顔つきになるとボソボソと話し始めた。
「、、、奪っちゃったのよ(ボソッ)」
「えっ?なんて言った?」
「だから、私が凌多の魔法の才能を奪っちゃったのよ!!!!」
凌多は唖然としている。
理解が追いつかない。何が言いたいのだろうと考えているとリリーは言葉を続けた。
「元々、凌多には魔法の才能がとてつもなくあったのっ、こっちの世界に来る時に【神様】が『童貞は、あっちの世界に行ったとしてもどうせ卒業出来ないだろうから魔法使いになることは確定ね♪』っていうと魔法の才能を凌多に授与してたのっ」
俺の中で感情が渦巻く。まだ、ちゃんと理解が追いついていないことから来る疑問と、【神様】に対するイラつきである。
あのおっさんは、事あるごとに俺をイラつかせて来る。
わざとやっているのか?いや、わざとやっているのだろう。偶然にしては的確だ。
「代償となるものが無ければただの妖精が生まれるはずなんだけど、凌多が自分の才能を代償として私に魔法の才能を授与しちゃったのよっ、、、、」
「な、なんだと、、、でも、そんな事出来ちゃうのか?」
「出来ちゃったのよ、元々が凌多の望みで【幸運】である私は、凌多と出会ってから【神力】が発生したから。その時に凌多の望みの一つとして叶ってしまったのよっ、代償が凌多の中にあったしねっ!」
やっちまった。理解できた。元々、チート持ってたんじゃねーか、自分からそれを譲渡するってどんな話だよ、、、
「だからねっ、凌多には感謝してるのっ」
「相棒に能力取られるとか、どんな異世界ものなんだぁぁぁぁあーーーーーー!!!!」
凌多の悲痛な叫びは、夜の森に響き渡った。
兎にも角にも訓練場を後にした二人は、エルフの集落にある長老さんの屋敷にたどり着いた。
屋敷内に入るとエリスさんが、出迎えてくれた。
特訓の際にかなり汚れてしまったため、裏庭で水浴びをすると、エルフ族の服を用意してくれたので着替えてみた。
リリーは、綺麗目な服と凌多の顔が似合わないと爆笑していたが、生地が良く着心地がいい。
「こちらにお願い致します。」
エリスさんは二人を連れると、朝食を取った部屋に案内してくれた。そこには、強面エルフのおっさんと、長老さんが座って俺たちのことを待っていた。
俺たちが席につくタイミングで食事が運ばれてきたのだが、長老さん達にも運ばれている事から一緒のタイミングで食事をとることが出来たみたいだ。
食事が始まると、今日の集落で気になっていたことを聞いてみた。
「集落の人たちは、エルフの戦線が破られたことを知らないのかっ?」
「不安を煽ってしまうことになると、知らない方が良いと思い伝えていないのです。」
なるほど、やはりそうかと凌多が納得すると、「凌多殿達にも伝えとくべきでした。」と長老さんからの謝辞が伝えられた。
詳しく聞いたところやはり推測は当たっていて、最低限の戦える者以外は、戦線に向かっているらしい。また、集落の警備を行なっている者たちには、現状の戦況を把握している。
長老さまが話を終えると、強面エルフのおっちゃんも伝えることがあると話を始めた。
「話にあった巫女様が選抜した精鋭のサポート係は4日後、この集落に到着予定になった。」
「了解した。それまで、この集落にいれば良いんだな?」
「そうゆうことになる。到着次第、凌多殿に繋がせてもらおうと考えているので、把握を頼む。」
凌多とリリーは二人からの連絡を受けると、客室に戻った。
「4日後まで特訓だねっ!」
「そうだな、リリーに魔法の才能奪われちゃったからなぁー」
「そんなに言わないでよっ、、、、」
リリーは申し訳なさそうに俯いてしまった。まぁ、リリーのせいではない事は分かっているのでこれ以上虐めるのはやめよう。
誰が悪いのかと言えばあのおっさんなのだから。
お決まりのような軽い言い合いを終えると、今後の日程が決まった二人はベッドに潜り込んだ。
次の日と、その次の日の2日間は、リリーとの特訓に明け暮れた。
1日中魔法を使い続け、MPの消費を確認してはリリーからMPを譲渡された。
MPはかなり増えたように感じる。
最後の方は、3時間ほど魔法を打ち続けられるまでに成長した。
3日間、同じ特訓を続けると、リリーは4日目の朝に新しい特訓を始めようと言い始めた。
「凌多、頑張ったわねっ!MPの上限はこれ以上やってもほぼ意味がないわっ、新しい特訓を始めましょう!」
巫女様の派遣してくれるエルフが集落にたどり着くまで、あと、今日を含めて2日ある。何かやらなければもったいないだろう。
魔法を1日中打ち続けるという特訓はかなりの疲労を感じていたが、このままではまずいという事は俺が一番分かっている。
「新しい特訓っていうのはどんなことをやるんだ?」
「簡単にいうと、あなたなりの魔法の使い方を考えてもらうわっ!」
「魔法を考える?」
「そう、自己流の魔法を作るのっ!魔法はイメージによって使うことができるって言ったでしょ?」
そんなことを話していたような気もする。
「今の凌多ならかなり魔法を自在に使っても余裕があるはずだよっ!」
「確かに、かなり使っても今ならなんとか出来るような気がするな」
「って事で、魔物を狩りにいくわよっ!」
「はぁぁぁあああ?いきなりかよっ!」
「当たり前じゃないっ、最初はいつも唐突に始まるのよっ!!」
「魔物と戦うっていったって、まだ見たこともねぇんだぞ!」
「そんなことばかり言ってるから童貞なのよっ、積極性が足りないわっ!」
確かに今まで積極性が足りずに何もできなかったことばかりだ。
言い方にはかなりイラっと来たが、言っている事は正論である。
「クッソ、分かったよやれば良いんだろ」
にっこりと笑ったリリーは、すでにどこへ向かうか決めていたかのように正門を抜けると、小道になっている東の方向を指示すると、凌多の肩に飛び乗った。
「魔物探しに、しゅっぱーつーーー!!!」
リリーの変わらぬテンションにあてられつつも、凌多はトボトボと歩き始めた。