14話 2人の別れは突然やって来ました。
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驚きと喧騒に満ちた夜が明けた。
「モゴモゴモゴ……..モゴ….モゴっ?」
「ちゃんと、食ってから喋ってくれ」
賑やかな食卓の席に凌多達と、メリア達が向かい合って食事をしている。
エリスが朝食のおかわりに動き回り、長老は年若い皆を暖かく優しい目で見守っている。
そして、通常営業である暴食をリリーは披露している。
「だからっ、今回の依頼はどうやってこなすのっ!?」
食事の手を一旦止めたリリーは凌多に対して、攻め立てるように確認している。
リリーが少しの怒りを滲ませながら凌多に確認していることは昨夜のエリスとのやりとりが関係している。
「貴方様、もしよろしければ、エルフ秘伝の魔法お教えいたしましょうか?」
「え、マジ!?」
凌多は目をキラキラと輝かせると、大変に興奮した様子で聞き返した。
エルフ秘伝の魔法を習得できるのは自然と特別に親和性の高いエルフでないと習得できないと聞いていたので、自分自身が習得できる可能性が出て来た事で気分が向上した。
「エルフじゃない俺でも使えるようになるのか?」
「そうですね、昨日話をした例の彼も、自然魔法を習得できましたから、貴方様もできると思いますよ」
「よっしゃぁああ!!これで嫌な特訓ともおさらばだ!!」
エルフ秘伝の魔法を使えるということに興奮しきっていた凌多は要らないことを言ってしまった。
周りのみんなが聞き耳を立てている状況でリリーの特訓をディスっているように聞こえる事を考慮していなかった。
「リリーさんと一緒に特訓するの英雄様は嫌だったんですぅ?」
「いやいや、嫌だと思ったのは地味で退屈な特訓のことで…….」
「リリーさんといるのは退屈なことなのですぅ?」
こいつはアホなのか、こんな所でそんなこと言ったら……
「凌多、そんなこと思っていたなんてっ、この浮気魔っ、もう知らないっ!!」
リリーは、凌多に対して背を向けるとふわりと飛ぶと部屋を出て行ってしまった。
メリアとカンナは凌多に対して蔑んだ目を向けている。
凌多はメリアに近づいた。
メリアは凌多を蔑んだ目で見ると、
「浮気はダメですぅ! リリーちゃん可哀想ですぅ!」
フザけた事を言っているメリアの目の前に立った凌多はメリアのこめかみに拳を当てグリグリと動かした。
「痛いっ、痛いですぅ、これはイジメですぅ」
「お前が、曲解させるような事を言うからいけねぇんだろうが、この腹黒巫女め!」
やり終えると、メリアはフラフラになってしまった。凌多は今後、訪れるであろう困難をどう乗り越えればよいのかと、深くため息をついた……
朝食を終えた4人は大広間に到着すると長老、エリス、強面エルフのおっさんを含め今後のことについての話し合いを始めた。
リリーが凌多に対してそっぽ向き、雰囲気の悪い中、カンナは何事もないように話を進めると、情報を照らし合わせた。
「以上の内容が、現在こちらが把握している情報です」
カンナが説明を終え一息いれると、エリスさんが飲み物を用意してくれた。
今、カンナが説明してくれた事は、大体すでに仕入れていた情報であり、何が目的であるか再確認した。
目的は、戦争の終結と第二王女様のシルベルと国王様の和解、和解に関しては正直片がつけばなんでもいいそうだ。
「今の状態は分かったが今後のプランはあるのか?」
「一応用意してあるのですぅ!」
メリアが元気良く言うと、カンナが詳しいことを語り出した。
「正直、戦争の終結と王族の和解を同時に片付けるのは無理です。なので、最初に王女様と国王様を和解させて王女様に戦争を終わらせて貰います。」
「どうゆう事だ?」
「つまり、結婚させてあげるからとっとと戦争終わらしてって事ですぅ」
自分の身内に対しての言い方どうにかならないのか? と少し思ってしまったが、言っていることは納得できる。
しかし、国王様の和解なんてできるのか? 自分の娘が他の種族であり、敵対関係である魔族に嫁いでしまうことになるだろう。
また、敵の大将との結婚などエルフ側が許可をしたからと言って魔族側が「はい、そうですか、受け入れます」と答えることなどないように思える。
「二人を和解させることなんて出来るのか? しかも和解させた上で魔族側の問題も解決しなければならないだろう」
「出来るのですぅ」
まじかよ、と思いながらも聞いた作戦はかなり強引なものであった。
作戦の流れで一番の大事なポイントは、和解させる事である。その事については後々話されるそうだが、まずは二人を結婚の許可を出した上で和解させる。
その後、戦線にエルフの王女様が敵大将と一騎打ちをして敵大将を倒す。倒した敵大将を拉致監禁し、エルフの国で身分を隠し結婚するように説得。最後に凌多が中心になって戦線を維持し、説得を終えた第二王女様がぶっ飛ばせば戦争に勝利する事ができるので全て解決ハッピーエンドという流れだ。
「ふざけんな、俺が中心になって戦っても無理だろ、一騎打ちの後も第二王女様に頑張って貰えばいいじゃねぇか」
「うちの妹ちゃんには、敵の大将さんを説得してもらわなきゃいけないので無理ですぅ」
「戦争に勝ってから、その説得すればいいじゃねぇか」
「あんなに恋に盲目な女の子が、獲物……コホンっ恋人を目の前にして他のことをするなんて無理な話ですぅ」
「そんなこと言われても、俺にそんな力は無い。なぁ、リリー」
「君、なら出来るよガンバッテ」
聞く人を間違えた、まだまだうちの相棒はお怒りのようだ。
「なんとかするしかねぇか……」
諦めたような悲しいような雰囲気を醸し出しながら凌多が告げると、
「英雄様が大好きなエリスさん にそのエルフ秘伝の魔法を教えて貰えばなんとかなるのですぅ」
火に油をそそぐような発言に今すぐ逃げ出したい気持ちに襲われたが、今何を言っても無駄だろうと判断した。腹黒巫女様のことは放っておいて、先ほどなぁなぁにされた和解させる方法について質問を投げかる。
「まぁ、そっちはなんとか出来るように考えるから、和解させる方法について教えてくれよ」
「和解させる方法については簡単ですぅ」
「そうですね、和解させるために最上位権力を投入します」
「最上位権力っ?」
リリーは一応、話自体は聞いてくれているようで、最上位権力に対して反応した。
エルフの国王様以上に権力を持っている人なんて存在するのか? と疑問に思う凌多に対してカンナが疑問に答えた。
「エルフの中でいちばんの権力を持っているのは、国王様ではありません」
「じゃあ誰なんだ?」
「エルフの国の最上位権力者は女王様です」
「そうなのですぅ、うちのママンが馬鹿なパパよりも権力者なのですぅ」
「そうなのか、でも、今問題が起きているこの状況でなんで何にも口出ししないんだ?」
凌多の返答に対して、カンナとメリア以外に強面エルフのおっさんを含めた3人が顔を暗くした。
「え、なんか聞いちゃいけないことを聞いたかな?」
凌多が不安に思うとリリーも見当がつかないらしく首を傾げている。
「えぇ〜っと、話しづらいことなんですぅ」
メリアがそういうとその先は、カンナに任せたというように、カンナの肩を叩くと、あなたから喋ってとでも言いたげなジェスチャーを送っている。
「わ、私から話すんですか?」
カンナはとても嫌そうな顔をすると、長老に向かって内緒の話ですよと一言断りを入れると凌多に向き合い話を始めた。
「国王様は、簡単にいうと女王様に逆らえないのです。婿入りであるということもあり、尻にひかれていると言いますか……」
まぁ、王族とは言え聞いている限り、勝手に結婚相手を決めたり巫女になったりと俺の知っている王族と比べ自由であるみたいだし、夫婦関係がどちらに傾いていようと気にする事は無いのでは無いかと凌多が考えていると、続きを語り出した。
「……尻に引かれすぎて疲れた国王様は、女王様から少しの間離れられるような作戦を考えました。」
「「作戦 (っ)?」」
直系の王族である女王様から離れるための作戦と聞いてしまうと、謀反的なことを考えてしまう。凌多とリリーは真剣な話になると考えであると考え、背筋を正した。
「作戦名は、その名を……」
「「その名を(っ)?」」
「綺麗になれる温泉にしばらく行って来い大作戦です!!」
「「なんだそれ(っ)!!!!!」」
カンナは顔を真っ赤にして恥ずかしがると言葉を続けた。
「英雄様にはエルフ族の恥ずかしいことばかりをお伝えしてしまっていて、誠に申し訳ないのですが、その作戦は成功しました」
「いやいやっ、成功したかどうかよりも、どんな作戦なのか気になるんだけどっ……」
リリーが尋ねると、カンナが開き直って全部言ってしまおうと気合を入れて喋り出す。
「その作戦は、国王様が女王様と離れたい気持ちと戻ってきたときに怒られないように最大限の配慮を施した作戦であるのです」
作戦の内容はこうだ、女王様に対して国王様はある伝説を語り聞かせた。
その伝説とは、美容にかなりの効果を発揮する温泉があり、その湯船に毎日欠かさず20年間入り続けると、肌の質感はまるで赤ちゃんに戻った頃のようなもちもち肌に、今後一生、髪のキューティクルが落ちずサラサラしっとりとした髪質になり、シミやシワなんてなんのその、絶世の美人になれるという話だ。
たまたま地質調査に出ていた者たちが発見した温泉を伝説の温泉として女王に話し、誰か真偽を確かめてくれないかと予防線を張った上で、作り物の伝説を語り聞かせたらしい。
部下たちも、女王が20年通い続けた伝説の温泉としてその後は観光地化するという王様の言葉で収益に目が眩み作戦の手助けをしたらしい。
「それで、女王様は信じてその温泉に20年間通い続ける予定であると……」
「そうなりますね、女王様は美容関係に目がないので、今月で12年目になります」
まじかよ、20年間も美容のためとは言え通い続けるなんてと思った凌多であったが、エルフの寿命と考えるとそこまで長い年月では無いのかも知れない。
ちなみに話を聞いていた長老は哀しみのあまり天を仰いでいる。
「はぁ、でもその話が真実だとすると簡単にはこっちに来てくれないんじゃないか?」
「そう思っていたのですが、そこで窮地を救ってくださるだろう温泉のスペシャリストが現れました。」
「温泉のスペシャリスト?」
「リリーさんです」
「リリー!?」
リリーは最初なんの話をしているのか分からないと言ったとぼけた顔をしていたが、何かに気づいたのか、えっへんと無い胸を張ると、凌多に向かってあっかんべーをした。
「なんでリリーが窮地を救うことが出来るんだ?」
「リリーさんは妖精族であるため、自然に生み出された温泉の効能など、一瞬で分かってしまいますから、本来の効能を女王様に伝えることで、どうにか国に戻ってきてもらう予定なのです。
また、最悪の場合、リリーさんの魔法を聞き、国から通える範囲に温泉を魔法で作ってもらうことができそうであると考えました。
真偽も判定できて、美容に効果のありそうな温泉も作れるならそれはもう温泉のスペシャリストです」
そう言えば、昨夜、リリーとメリア達は一緒に水浴びをしていたのだが裏庭に数人が浸かれそうなくらいの大きな湯船ができていた。
強面エルフのおっさんと一緒に湯船に入り、誰が作ったものかと議論になっていたが、リリーが作ったものだったとは……
「なるほど、ともかく温泉から国まで女王様を連れてくれば和解できるってことか?」
「そうなりますね、和解というか結婚が決定するだけであると思いますが……」
「以上を含めて、今後の予定を考えました」
カンナが話をまとめた。
「リリーさんとメリア様は私と共に温泉がある地域に向かいます。そこで、女王様を連れてエルフ国の首都に向かいます。もちろん途中で集落に立ち寄るのでそこで英雄様と合流します。」
「え、その間、俺は?」
凌多は口には出さないものの、リリーと離れることが異世界で初めての経験であるため、かなりの不安を覚えた。正直、様々な分野で助けてもらってばかりいるからだ。そんな不安はつゆほど知らずに、カンナは話を続ける。
「英雄様には、エリスさん指導のもと、エルフ秘伝の魔法の習得をお願いします。」
「な、なるほどな……」
「英雄様には、戦争を終結させるという使命がございますから少しでも戦力を上げて貰おうと思いまして」
リリーと分かれての行動に内心不安に思っていた凌多は、そんな事ならエルフの魔法などに興味を持たなければ良かったと感じつつも話を受け入れざるを得なかった。
隣にフワフワと浮いているリリーも喧嘩をしてはいたものの凌多と離れての行動になるとは全く思っていなかった為、寂しげな顔を浮かべていたものの、不安に押しつぶされそうな凌多の視界には入っていないようだ。
「温泉地まで向かうのに半月なので、往復で一ヶ月くらいかかるのですぅ。その間凌多さん、エリスさんとの間に子供ができるようなことしちゃダメなのですぅ、気をつけるのですぅ!」
不安に感じていた凌多なのだが、腹黒巫女様の言葉にハッとさせられると、反論した。
「ぜってーやらねぇ! いらん事ばかり言うんじゃねーよ!」
叫び終えると、リリーの方を振り返る。
凌多の視線が向く頃には、メリアの発言を聞き鬼のような表情になったリリーがこちらを向いている。
「おいおいおい、まだ何もやってねーだろ。それでキレられてちゃどうしようもないわ!」
「まだっ? 今後の予定話あるのねっ」
「ねぇよ言葉の綾だろ!」
凌多とリリーは険悪なムードのまま、明日からの二手に分かれての行動が決定した。
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