11話 森の中で王女様に出会いました。
「未熟者!敵に背を向けるとは何事だっ、貴様が英雄の名を名乗るなど1000年早いわ!」
綺麗なエメラルドグリーンの髪を持った。ショートカットの女性が大剣を一直線に振り下ろした。『トロルオーク』は意表を突かれ、気づかぬままに右半身と左半身に別れた。
ドサリとトロルオークが崩れ落ちると、彼女はこちらを向く。
「貴様っ、英雄にもかかわらずこのようなっ、、、」
言いかけたところで、少し離れた森の中から声が聞こえてくる。
「待ってくださーーーーいっ!!」
声を発したであろう少女が、森の中からドテドテと走りながら出てくる。
「はぁっ、はぁっ、はぁっ、、、、、待ってくださいよぉ〜」
息を切らしたその少女は、恨み顔をエルフの女性に向けつつ、恨みをぶつけている。
「なんで、待ってくれなかったのですぅ?」
「申し訳ございません、急がなければ間に合わなかったもので駆けつける事を優先させて頂きました」
「間に合うかどうかよりも私の心配をしてくださいですっ」
後から来た少女は、ぷくーと頬を膨らませている。エルフの女性は困ったのか「次回からそのようにさせて頂きます」というと、こちらを振り返った。
「元はと言えば、この者たちがいけないのです。」
凌多とリリーを指差すと原因を転換された。
「いやぁ、まぁ、えっ?」
今も分からずに返答に困る。
「英雄である貴様たちが無様な姿を晒しているからこのような状態になったのだ」
洞窟から追いかけられるように出てきたが、そのせいって、作戦があったからここまで連れてきたのに、、、
言いたいことはたくさんあったのだが、口を挟める空気ではない。と言うか、彼女たちは一体?
聞きたいことも言いたいこともあったのだが、話し合いの状況は一変する。
「グワァァァァァァーーーー」
洞窟から出た瞬間に一体のトロルオークをエルフの女性が倒したのだが、トロルオークは2体いた。挑発を受けた一体が全速力でこちらを追いかけてきたのに対して、もう一体は追従するように追いかけてきていたのだが、途中から差が離れていた。
遅れてきて、仲間の死体を見つけたことで激怒しているのだろう。
一体だけであると思っていた女性のエルフは、苦い顔をすると、戦闘態勢に入るためにエルフの少女に離れるように声をかけると、敵との距離を取るため、後方へと跳躍した。
「「あっ、そこはダメだ(ダメっ)!」」
凌多とリリーの声が重なるが、女性エルフの耳に届く前に跳躍した体が地面に着くとバキッという音を立て足場が陥落した。
「なっ、なんなんだこれはっ」
女性エルフは足場が取られたように感じ一瞬でその場からの脱出を試みるが上手くいかない。何故ならその足場は泥沼のようになっており、もがけばもがく程に足が地面に引き込まれていく。
「はぁ、仕方ねぇな」
動けないエルフに狙いを定めていたトロルオークに対して凌多が即座注意を引くため火系統の魔法を投げつけると、リリーが女性エルフと『トロルオーク』の間に大木を這わせるように成長させて壁を作る。
「リリーサンキュー、ほらこっちに来いよ!」
凌多は風系統の魔法を今度は顔面に向けて打つと、トロルオークの額から血が流れた。頭に血が上っているトロルオークは、狙いを凌多に変更すると、体に似合わない素早い速度で凌多に向かってくる。
「上手く釣れたな」
トロルオークを誘導しつつ、すぐそばにあった大樹の近くに向かって走る。大樹の側の凌多に追いつく寸前、
「グァァァッ!?」
トロルオークは宙に舞った。
「上手くいったな、成功だ!」
凌多は、そう呟くと、1分以上の時間をかけて制御の限界まで魔力を貯める。貯めている魔力は少しずつ大きくなると凌多の3倍以上はあるだろう杭の形を模した氷塊となった。
「じゃあな!」
凌多が声をかけるととてつもない速度になった氷塊がトロルオークの顔面に突き刺さり、トロルオークは絶命した。
少しすると泥沼の罠から抜け出した。女性エルフとエルフの少女、そして女性エルフを魔法で引き上げたリリーがこちらに駆け寄ってきた。
「これはっ、、、」
女性エルフは大きすぎる氷塊が顔面に突き刺さり宙ぶらりんになっているトロルオークを見上げて唖然とした表情をしている。
仕方ない、説明してやるかと凌多が話し出す。
「罠にかけた後、魔法をぶっ放したらこうなった。大物だったから、罠で仕留める方法を試してみたんだ。」
女性エルフはトロルオークに近づくと、絶命を確認し、状況を確認した。
トロルオークは、大樹に吊られている網のような罠によって動きを止められた後に、魔法で一撃ということが見てわかる。また、体重の重みからか、手足は網の外に飛び出すような態勢になっており、自慢の力でも脱出することが出来なかったのであろうと予想できた。
「作戦成功だねっ、イェーイ!」
リリーが近くまで寄ってくるとハイタッチしてくる。
エルフの少女は、トロルオークが動けないことを確認すると、話しかけてきた。
「英雄様さすがです〜!」
「あ、ありがとう」
やっちっまった、女の子に喋りかけられるなんて久々だから少しどもっちまった、、、、
凌多がちょっとした後悔をしているとリリーはこちらを睨みつけ、耳を両腕でつねってくる。
「あの、英雄様って君達は俺のこと知ってるのか?」
「はい!もちろんですぅ!」
眩しい笑顔で返されると、ニヤケてしまいそうになる顔を必死に取り繕う。近くで見ると、かなりの美少女だ。
リリーの耳つねりが更に強くなった。
「リリー、流石に痛いっ」
「凌多がデレデレするのが悪いんでしょ」
「仕方ねぇだろ、カワイイ女の子と喋るの久々なんだ」
「私もカワイイ女の子なんだけどっ!」
いつも通りの夫婦漫才をしていると、目の前に女性エルフが立膝状態にしゃがみ、頭を下げると胸に手を当てた状態で言葉を発した。
「申し訳ございません英雄様、先ほどの無礼をお許しください。」
えぇーいきなり何っ?いきなりのキャラ変に凌多達は驚いた。
「先ほどは、作戦があったにもかかわらず、逃げ腰と比喩してしまい申し訳ございません。」
いきなりの謝罪で驚いてしまったが、作戦とわかって自分の間違いを謝罪したのだろうということが分かった。
「あ、あぁ、気にしないでくれ、逃げていたのは確かだし、そんな風に見られても仕方ないしな」
「そうねっ、正攻法で倒せないのは確かな話だしねっ!」
リリーと凌多が、謝罪を受け入れると、エルフの女性は目をキラキラさせながら答えた。
「いや、英雄様方なら本来、作戦など使わなくても勝てたでしょう。どんな訓練であったのかは分かりませんが、邪魔をしてしまい申し訳ございません。」
え? あれ? 何か間違えた?
「いや本当に、そんなことないって、俺まだまだで、、、」
凌多が言いかけると、女性エルフは飛びつくように凌多の手を取ると、心の底から尊敬している眼差しを凌多に向けている。
「謙虚な姿には、好感が持てますが、この私はすべて分ります。あんなに強力な魔法を打つ魔法使いなどエルフの国では見たことがございません! 流石は英雄様でございますっ!」
困った、勘違いをしている。MPが多いだけで時間かかるから罠を使ったのに、、、魔法もコスパ最悪で見た目の割に威力がないので戦争では絶対使えないレベルだ。
っていうか顔が近かすぎる。あれ?この女性エルフの顔どこかで見たような?
まぁ、どちらにせよこのままじゃいけない話題を変えよう。
「ありがとう。それで君達は?」
凌多は強引に話題を変えた。
その言葉を聞いた女性エルフはしまった。という顔をすると、少女エルフの後ろに回る。
「もう、私が話をしようとしていたのに、いきなり話を遮って、ダメエルフちゃんですぅ」
「も、申し訳ございません」
こほんっと可愛く咳払いをすると、少女エルフが話し始めた。
「英雄様このような場所で申し訳ございません。お初にお目にかかりますゼリント王国、第一王女のメリア・ゼリントでございますぅ」
「「ええーーーーーっ、第一王女っ???」」
凌多とリリーは驚き戸惑った。
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