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現実世界の僕と異世界のボク  作者: 昼寝王
プロローグ
1/41

1話 変なおっさんと出会ってしまいました。

初投稿です。

楽しみながら読んでくれると嬉しいです。




 世界の歯車から外れる音が聞こえた気がした。

 


 自分の知らない物語が始まった様な気がした。



 色のない日々が鮮やかで鮮明なものに変わるような気がした。




 でも……


「大事な話っていうのはねぇん。この世界でいらない子になっちゃったから、異世界への移転よろしくねぇん♪」


「はぁ??」


 神託が、オネェ口調のおっさんからなんて………





「胡散臭いにも程があるだろぉぉぉぉ!!!!!!」


 叫ばずにはいられなかった。









 話は30分前に遡る。



「あー、かったるい……」


 今年で、大学2年生となった加藤凌多は、何度も繰り返したそんな言葉をつぶやきつつ帰り道をとぼとぼ歩いていた。


 講義を爆睡した後、脇目(わきめ)もふらずに家に帰宅するとネトゲの世界に入り浸っては、翌日を迎える日々を過ごしていた。

 

 入学したての頃は、自分に合ったサークルを見つけて友人と笑い合ったり、可愛い彼女熱い青春を過ごす。そんな充実感のあるキャンパスライフを送ろうと意気込んで歩いていたこの道も、時間の経過と共に味気無い坂道に変わった。


 だるさと格闘しつつも長い坂道を登り終え、ようやく帰宅。


「飯どうしよう……なんかあったっけ?」


 退屈な日々の中で唯一の楽しみだった食事も、コスパを最重要視するようになってしまった。また、自分で準備するだるさと、食欲を天秤にかけると、大抵はだるさが勝ってしまうので帰宅とネトゲに直行コースである。



ぐうぅぅ〜


 今日の僕の腹は栄養を求めているらしい。大して何もしていないのに栄養を欲しがるなんて、僕の腹は強欲かよ! なんてツッコミを入れながらも腹に入れる物を探して冷蔵庫を漁ると、見つけたのは冷凍パスタ。パッケージを破くと電子レンジに突っ込んだ。


 ふと、目の前を見ると安っぽいトロフィーが棚の上に飾ってある。中学生時代、野球の都大会2位を獲った時の物だ。

 中学から初めてスポーツに手を出したにしては、良い個人成績が残せたと思っているが、最後の大会では大きな喧嘩をしてしまい、喧嘩別れをしたままだ。来年に控えた成人式で久しぶりに顔を合わせることを少し気まずく思っている。


 久しぶりに会う前に一回会っておこうかなぁ。なんて、言っては見たものの僕にはできない。こんな怠惰で消極的な生活が続いていることに嫌気が差しつつもレンジの音が鳴った。




「、、、、、は?」



 レンジの置かれた台所を見ると、目立ちすぎる白髪のリーゼントを生やした、筋肉ゴリゴリのおっさんがキメ顔で立っていた。


「いや、まてまて、ふざけんな不法侵入だぞおっさん。なんだその、キメ顔! ぶん殴るぞ。そもそもなんでウチにいるんだ。ってか勝手に俺の飯食うんじゃねぇ!!!!」


 まくし立てるようにツッコんでしまった凌多に対して目の前のオッサンは明後日な方向の返答を返して来た。


「うっふん。あらあら、君が例の男の()で良いのかしらぁん?」


「何言ってんだお前…話聞いてたのか?」


「いやだわぁん、ちゃんと聞いてたわよぉ〜、貴方からの言葉を聞き漏らす事なんて無いわよぉん」


「その気持ち悪い口調で喋んな!」


「あらやだ、凌多ちゃんには私の愛が伝わって無いのかしらぁん?」


 首を傾げたおっさんが目の前から消えた。と思った次の瞬間に首に尋常ではない衝撃が………


「【愛の抱擁(チョークスリーパー)】私への愛を感じて逝きなさい!!」


「おっさんの腕の中で眠りに落ちたい願望なんてないんだよ!!」


 ギリギリで右腕を滑り込ませることに成功すると、力を振り絞り何とか締め技から脱出した。


「あらあら、つれないじゃないの、おネエさん寂しいわぁん」


「なんなんだよ、、、泥棒なら早く盗んで出て行けよ。自慢じゃないが、僕の家に盗めるものなんて何も無い。むしろこんな家になんで来たんだよ!」


 そう僕が言い放つと、おっさんは台所の前にあるダイニングテーブルの椅子に腰かけ、目の前に座れと合図を送ってくる。

 

「この家、僕の家なのに何でこいつこんなに偉そうなんだ?」


 どうやって家の中に入ったんだ? 何で慌てない? 目的は何なんだ?

 疑問ばかりが頭の中を回っているが意味不明な行動に答えが見つからない。 


 2m以上あるゴリゴリのおっさん相手に何にもできない僕は、取り敢えず席に座った。


「あらまぁ、やっと素直に従ってくれたわねぇん。良い子だこと!」


「目的は何なんだ?」


 凌多は一番大きな疑問を口にした。色々な疑問があるものの根幹はそこだ。


「大事な話があるのよぉん。わざわざ体まで作って、下界(地球)に降りてきたんだから聞いてくれるかしらぁん?」


「聞いても意味のない系統の相手だったか…」


「そんな事言わないでくれるかしらぁん? 貴方にとって、すんごぉく大事なお話何だからぁん」


 話の内容は聞いていないものの、下界とかリアルで使っちゃうやつは大抵ヤバいやつだ。しかもこの年なら尚更に…嫌な予感しかしない…


「貴方の現状とこれからを教えてあげるわぁん」


()()()()()()()()かよ!」


 嫌な予感が的中した。この系統の話は聞いちゃダメだ!! そう思った僕は、取り敢えずこのおっさんから逃げるために家から出ようと駆け出した。

 部屋のドアを力一杯に開け飛ばして早く玄関に…………..ドアは開かなかった。


 この部屋のドアに鍵はついていない。原因は一つだ。


「おい、おっさんうちに何しやがった!!」


 僕は、振り返えると、おっさんに大声で叫んだ。


「あらあら、分からないかしらん?この世界の時間経過をこの部屋以外止めているだけなのに、うっふん。すごい?」


「意味わかんねぇこと言ってんじゃねぇ、この部屋から出しやがれ」


「あらあら、そんなに慌てないでいいわよぉん。そうねぇ、こっちのほうがわかりやすいかしらぁん?」



パチッ。



 おっさんが指を鳴らすと、周囲の風景は僕の家の中から真っ白な空間へと変わった。おっさんの服装も布を体に巻きつけただけの様な服装から、半裸で物凄く短いベストに羽が生えたような奇妙なものに変わっている。


「早くこっちに来なさいっ♪」


 理解が追い付いていない僕は、おっさんの指示に従い先ほどまで座っていた椅子に再び腰をかけた。


「まだ、理解できないようねん。いいわ、一から教えてあげる。私は……そうねぇん、あなたたちの言うところの神様よ〜♪」




「…………………は?」



「だ! か! ら!、私は神様なのよん。まぁ、厳密には違うけどあなたたちの知識に一番近いのは神様になるわねぇ。」


「お前が神様!? 寝ぼけたことを言うなよ!」


「うっふん。あなたが帰ってくるまであなたが自分の部屋でどんな生活を送っていたのか、調査させてもらったわぁん。一つだけ言わせて貰うとすれば、あの部屋ちゃんと換気しなさい。あなたの帰宅時に神らしい演出であなたを驚かせようとしていたのにムラムラし過ぎて、いきなりあなたの前に現れちゃったじゃないの。この責任はしっかり取ってもらうわぁん。」


「僕の部屋で、何してやがったんだ………」


 昨日の夜の僕に伝えてやりたい、明日おっさんが僕の部屋に来るから。後処理は、気合を入れてやっておけと…………


 たぶん絶対、理解できないだろうが。


「もうなんでもいい、分かったから早く用を済ませたら俺を家に帰してくれ!!」


「やぁっと、聞いてくれる気持ちができたのねん凌多ちゃん。私の気持ちが通じてくれて嬉しいわぁん。」


「いいから、早く話してくれ!」


「大事な話っていうのは()()を授けに来たのよぉん。あなた今日からこの世界でいらない子になっちゃったから、()()()()()()()よろしくねぇん♪」



「はぁ??」



 神託が、オネェ口調のおっさんからなんて………





「胡散臭いにも程があるだろぉぉぉぉ!!!!!!」






 こうして、現実世界に生きる僕の人生は、終わりに向けてのカウントダウンを刻み始めた。





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