第2話 そして、彼女は甘やかす。
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10月9日 AM 5:00
前例のないの巨大な台風の影響を受け、日本中のあらゆる場所で暴風雨が吹き荒れていた。
台風による被害は甚大で、河川の氾濫による洪水被害や地すべりなどによる土砂災害などが全国各地で確認されており、現在判明しているだけでも被害額は過去最高の7000憶円を超えたらしい。
そしてその影響は今、私達が帰路を急いでいる長野県上田市においても例外ではなく、市内の多くの道路の通行が規制されているため何度も迂回する羽目になった。
私達の乗る車にも地を打つような激しい雨が降り注ぎ、あまりに重い雨音に石でも降っているのかと何度も思ってしまった。
車には私、柳原家当主である柳原雪乃と弟の重治、そして家臣筆頭である伏原家当主、知哉と運転手を務めている家来の坂上を合わせた計4人が乗車している。
私達はこの異常気象に対応が出来ていない政府に対し反乱を計画した者たちを鎮圧するため先程まで東京にいたのだが、本家から急報を受けたため上田市へと引き返していた。
その急報は私の斜め前の座席で、先程から神に祈るように両手を合わせ激しく足をゆすり続けている知哉に関するものであった。
今年38歳になる彼の第一子がもう直ぐ誕生するらしく予定よりも二週間も早く生まれてくる彼の子どもに、肝心なところでせっかちになるという父親の性格が色濃く出ていることが、少し可笑しくて笑ってしまったのは彼には秘密だ。
「いい加減に落ち着け、知哉。」
本家からの知らせを聞いた時から、普段の冷静な性格とは打って変わり落ち着きのない様子の彼を見かねたのか、知哉の隣に座る重治が咎める。
「これが落ち着ける状況か!やっと、やっと……生まれてきてくれるのだ……。こんな時に私が妻の傍にいてやらなくてどうする!」
重治の言葉に目を見開き、口と口が触れ合いそうなほど顔を近づける知哉。その鬼気迫る様子は異常なほどであった。
「おい、近いぞ。それは確かにそうかもしれないが……。だから、近いと言っている!……それ以前の問題として己の立場、そして何より当主の御前であるということを忘れるなと言っているんだ。」
重治は押し返しても微動だにしない知哉から手を離し、そう言った。
「……それは……。」
重治の言葉で我に返ったのか、私の前で取り乱していたことに気付いた知哉は、怯えるような目を私に向けた。
私がそんなことであきれるとでも思ったのだろうか。
私は血の気が引き、今にも倒れそうなほど青白い彼の頬に手でそっと触れ、しっかりと彼と目を合わせた。
「こんな時に落ち着く方が難しいでしょ。知哉、あなたは間違ってない、大丈夫よ。だから、今はそのままでいいわ。」
言うと、彼は一瞬呆けた後、私の方に体ごと向き直り姿勢を整えて恭しく頭を下げた。
感極まったのだろうか……。
彼が頭を下げた時に一瞬だけ見えた表情は、先程より柔らかくなっており、また、彼の頬に一筋の涙が流れていたのが見えた。
そんな知哉を愛おしく思った私は、彼の頭を撫でていた。
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