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無双少女よ、刀を振るえっ!  作者: 速水 心太
第2章:『黄の神』機械編
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第12話 「三色同盟」

 ムーランス王国の首都、ムーラリアの城の会議室にて俺たちは一堂に会していた。

 立ち会っているのは俺を含めて6人。それぞれの領土の神と【神技】使いの者である。


苛立たしげに両腕を組む赤の神は、休戦協定を持ちかけてきた蒼の神を睨み口を開いた。


 「それで、なぜ休戦協定を結ぶ必要がある?」

 「貴方も薄々感じているのでしょう? 私たちの戦争に介入している不穏な存在のことを。クラウディオ」

 「はっ」


 蒼の神に名を呼ばれたクラウディオが、囲んでいる円卓のテーブルの上に機械の部品を置いた。緻密に創りこまれていることは、素人の目からでも察することが出来る。


 「例のゴーレムの部品か……」


 テーブルの上に置かれた部品を忌々しそうに睨みつけながら、赤の神が唸る。


 「あのゴーレム共、貴様等が運用していたのではないか?」 

 「いいえ、機械仕掛けのゴーレムを作る技術なんて、私の領土にはありません」

 「もちろん、ワシの領土にもな」


 蒼と黒の神が否定する。

 恐らく、機械仕掛けのゴーレムはこの3つの領土には関係がないだろう。


 黒の領土にそんな技術が無いのは百も承知だし、もし赤の領土が運用しているのであれば、勝ち戦であった先の戦場に投入した説明がつかない。


 同様に蒼の領土が運用していたとすれば、俺とベアのパーティを襲った意図が不明瞭になる。つまりあのゴーレムは、別の領土から送られて来たという訳だ。


 「なるほどな、それで黒の神まで連れてきたという事か。ゴーレムを操る黒幕を探る為の休戦協定。要は俺に力を貸してくれという話だろう?」

 「はい、貴方とて、戦争に水を差されるのは不本意でしょう?」

 「フンッ、確かにな。だが、見当はついているのか?」

 「これだけの機械技術を持つ領土は1つだけでしょう?」

 「……黄の領土か」


 この世界において、商業という点で絶対的な立ち位置に君臨する黄の領土。商売ルートの大半を握るあの領土であれば、確かに機械の扱いにも長けているハズだ。


 「じゃが、危険な賭けなのでは? 黄の領土と敵対すれば大変な事になるじゃろう?」 

 「そうですね。サクヤの言う通りです」


 思わず俺は口を挟んでしまった。即座にキッと、赤の神が「話に入ってくるな」と言いたげな睨みを利かせてくる。

 どうやら随分と嫌われてしまったらしい。


 「ですので表立った行動は避け、少人数の者による調査をお願いしたいのです。ですが、相手は【神技】使いしか倒す事が出来ないゴーレムを創り出す程の猛者。ですので――」

 「――待て! まさか貴様等、黄の領土に【神技】使いを送るつもりか?」


 赤の神の怒号に室内は静まり返り、俺とクラウディオとジークフレンへと視線が注がれる。


 「ふざけるな! 領土から【神技】使いを出すなど、攻めてくれと言っているようなものだ!」

 「その為の休戦協定です。私たちは新たに黒、蒼、赤による同盟を結ぶのです」

 「ど、同盟だとっ!?」


 バン! と赤の神がテーブルに拳を叩きつける。

 話を聞くに、どうやら黒と蒼の神は俺達に黄の領土の調査をさせるつもりらしい。


 赤の神を落ち着かせるように、蒼の神は凛とした声で話を続ける。


 「クラウディオは世界的に顔が知れ渡っている為目立つ行動は出来ませんが、サクヤとジークフレンは別。今回の隠密行動に適しています」

 

 ジークフレンは戦闘中に紅い鎧と兜を身に着けている。故に彼女の素顔を知る者は、他国ではそれほど多くは存在しないだろう。

 現に俺も、紅蓮の竜騎士の伝説は数多く耳にしていたものの、素顔自体は知らなかった。


 「サクヤとジークフレンが留守の間、黒と赤の領土はクラウディオが率いる騎士団が全力で守ります」

 「ますます信用できん! そんなの自分の心臓部をひけらかしている様なものだ! くだらん、帰るぞ! ジークフレン!」


 バッと勢いよく立ち上がると、赤の神がズカズカと扉に向かって歩いていく。それに対し、ジークフレンは立ち上がる素振りを見せない。ピタリと立ち止った赤の神が、背中越しにジークフレンを睨みあげる。


 「……ジークフレン、まさか貴様。この俺に逆らうつもりか?」


 僅かに震えているジークフレンが俺の方へ振り向くと、ギュッと小さく拳を握り立ち上がった。


 「サクヤは敵である私のドラゴンを助けてくれた。私もあのゴーレムの正体を探りたい。それが、恩返しになるから」

 「毒されおって出来損ないが! 恥を知れ!」


 赤の神の振り上げた拳に炎が纏う。俺が黒蝶丸を構えジークフレンの前に飛び出すのと同時に、黒の神がテーブルの上に飛び乗り手に持っていた杖を赤の神の喉元に突きつけた。


 ジジイ、そんな早く動けたのか! 腐っても神ということか!


 などと、俺は黒の神に対し無駄に感動する。


 「赤の神よ、まさか人の子に神が手を下すつもりではあるまいな?」

 「くっ……」

 「それだけは許されん。お主もわかっておるだろう、『災厄』が近づいていることくらい」

 「……チッ、分かった。同盟を結ぼう。ただし、正体が判明すれば即座に同盟は破棄し、俺は蒼の領土を再び攻める。いいな?」

 「ええ、構いませんよ」


 ジジイイイイイ! すげぇぇぇ!

 まさかまさかの、黒の神の一声により波乱の会議は終結し、ここに黒と蒼と赤の同盟『三色同盟』が結ばれたのだった。

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