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2000回目

ーー「またか……」

そんな言葉が口からもれる

無理もないことだ

もう何回目になるのだろう


「もうたくさんだよ……」


血溜りに横たわった身体から、急速に熱を奪われていくのを感じる


また【死】に捕まってしまったようだ





「……っ!」


目覚めた

もっとも、感覚としてはずっと起きていたのとそう変わりはない

慣れたようでも、嫌な感覚だ

「今回はどんな世界だよ……」

疲れ果てた、どこに向けられたわけでもない言葉は

目の前のこいつの耳には届いたようだ

「は?いきなり何言ってんだ 」

「あーいや、何でもないさ」

こんなやり取りも飽きるほど交わした

知らないやつが突然目の前に現れる

……何度経験したことだか


「頭に虫でも湧いたんなら取ってもらえよ」


なんだこいつは

趣味の悪い冗談を真面目な顔で言いやがって

この世界の俺は、随分な友達をもったものだ


「あいつに脳のメンテしてもらえば?」

……は?


男がどこかを指さす

その先では……


「ぅぉぉぉぉぃぃぃぃぃぃぁぁぁぁぁあ゛あ゛あ゛

あ゛あ゛あ゛あ゛あ」

脳汁を撒き散らしながら叫ぶ男と

「うっわこいつ漏らしやがった……誰が片付けると思ってんのよ」

悪態をつきながら、人の頭蓋になにやらおぞましい機械を突っ込む女

たちが、理解のキャパを軽く超えた行為をしていた


なにこれ……

さっきのこいつの言葉は冗談ではなかったらしい

そろそろ大体のことには驚かなくなってきたが、今回の世界はなかなか理解し難い



周りの様子からみて、この世界では授業間の休みにやっても違和感のない行為らしい

先生らしき人も全く無関心な様子で授業の準備を進めている


「舞台は、高校か? 医療が発達した世界、もしくは人間の身体の解析が進んだ世界……とか?」

ほとんど癖のような、どうせ意味の無い考察はまたしても目の前の男に聞かれていたようだ

「……やっぱお前今日なんかおかしくね? あいつに診てもらおーぜ」

本当に心配そうな顔を向けられる

そこまで悪い奴ではなさそうだな

それでも


「あ、いや何でもないって! 大丈夫だよ!」

頭蓋骨を日向ぼっこさせるつもりはない


「すぐ終わるし遠慮すんな! ーーおーい!次こいつ頼むわ!」


……話聞けよ


イカれた(ように俺には見える)女が振り返る

「いいけど…… あんたが“遠慮すんな!”って言うのはおかしくない?」


了承すんなよ…


「ほら!もう授業も始まるしさ!早くやってもらえって!」

「うん、そろそろ席つかなきゃだから 早く席座って?」

いつの間にか女は後ろでスタンバイ完了

さっきまで弄られてたやつは既に席に戻っている


手際がいいんだな……

その証拠にもう既に俺の頭は固定されている




……冗談じゃないぞ!!!!


「ちょっ!まって!!! ホント大丈夫だから!健康だから!たぶん!」

決死の説得は


「何焦ってんの? すぐ終わるし、ここは好意に甘えときなさい」

好意(悪意)とかいう訳の分からんものに弾き返された


固定された頭

縛られた手足

この間2秒


……手際良すぎない!?


視界の端には、高速回転するのこぎり……らしきモノ

物騒なんてレベルじゃない

その後ろにろがる無反応なクラスメイトの噛み合わなさが、より一層恐怖を倍増させる


「さーちゃっちゃといこう!」

「ちょっ!」


必死の抵抗虚しく

既に、のこぎりが頭蓋骨を削っていた



ーーー激痛、はしなかった

痛みの制御に成功した世界なのかもしれない

その代わりに頭に響く、肉を断たれる感覚

いや、抉られると言った方が正しいか



視界が真っ赤に染まっていく

黒っぽいような赤は……これだけは何度見ても慣れる気がしない

「はっ!?はっ!?!?」

「なんで!?こいつ、“処置”をしてないの!?」

「うぇぇぇぇぇ!?」

「キャァァァァァァァ!!」

叫び声が教室中から上がる


ーーー今回はあっけない終わりだったな

ぼんやりと考える頭は働くのをやめ、またあの感覚に包まれた……


また【死ぬ】のか

……嫌な感覚だ




ーーこんな経験も、一般人にとっては刺激的なものなんだろう

だが、残念ながら俺は一般人じゃない

いや、俺自身は一般人だ

……ノータイムの矛盾だが、俺だって説明に困る

俺が“現実世界”にいた時によく好んで読んでいたラノベでも、だいたい1回しかしないだろう?

【転生】

とかいうやつは


どういう訳か俺はこいつを何度も経験している

もう何回目なのだろう

この【死ぬ】っていう感覚にも慣れが来た頃だ

1000回以上はやっている気がする


「何度も異世界に行けるとかサイコーじゃん!」

とか思ったそこのお前!!!

正座して頭をたれて俺に死ぬまで謝罪しろ!!


いいか?転生っつってもな、いつも自分に都合のいい世界に行けるわけじゃないんだ


極寒の世界(地獄)、暴力の蔓延る世界(地獄)、飯がクソまずい世界(地獄)、男しかいない世界(地獄)(人による) etc.


あれ……?地獄しか行ってなくね??



そしてどういう訳か、行った先の世界の法則&常識は、どうしてか俺には反映されない


暴力の世界の人間は、痛みに異常に強かったが、俺は殴られなれてないただの人間だった


飯がまずい世界では、家庭料理すら俺にとっては吐瀉物以下の汚物だったし


男しかいない世界でも、俺はやっぱりノンケだった



……異世界行っても無双出来ない

どころか酷くなってないか!?



さらにだ

“転生”

と言うからには、死ななきゃ転生はできない

何回も転生する ということは即ち何回も死ぬ

ということなのだ

俺は多分世界で一番死んだことのある人間だろう

ってか死んだことある生者なんていないだろ....

死ぬ感覚……痛いor苦しいのこんな経験は何回目でも心地悪い


もちろん死ぬ時にはドーパミンがドバドバで快感もある


けどな


だいたいその快感の途中で転生がはじまるんだ



釣り合わないんだよ!苦痛と快感が!!!




ーーこれでわかってもらえたと思うが、何度も転生なんてするものじゃない

今回は痛みがないせいか、こんな悠長に自分語りが出来ているが、どうせまたすぐに転生がはじまる

つまり地獄の始まりだ



こんな風に時々自分について思い出さないと、そろそろ“現実”とか“目的”とか

大事なものまで忘れてしまいそうで怖い


「そろそろ、か」



ーー毎回突然やってくる“感覚”

転生だ



しかし、今回は何かが違う

「…懐かしいな」

ふと、零れた言葉

全身を包む久しぶりの感覚

久しぶりすぎて違和感すら感じる

何がいつもと違うんだろう…?




ーー「やぁ?目覚めたかい? 気分はどう?」

声が、聞こえた




違和感の正体にはすぐ気づいた

涙が出るほど懐かしく、久しく、嬉しい感覚



目覚めた

そう

確かに

【目覚めた】



……ついに終わるんだな、この地獄が





ーーかといって、地獄から出ることが出来たのか、それともさらに深くへ落ちただけなのか

判断はしかねるが

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