9話 キュートなウエイトレスは誰ですか
やってきました、ガッタイ町。
ガッタイ町から向こう側はあまり栄えていないらしく、ここで1度泊まって次の町に移動する旅人が多いらしい。
だから宿屋も多くて、若い働き手がたくさんいる。
「クビカッタ達って、ここで何をしているの?」
ラージに聞くと「リンの金魚のフン」って返ってきた。
ああ、うん。リンを探さないとダメなのね。
リンは、ガッタイ町にある食事処の看板娘をやっているらしい。この間、クビカッタ達が言っていた。
「じゃあ、リンの働いているところに行けばいいんだね。どこかの看板娘をやってるんでしょう?」
「いいや。用心棒をやってるんだ」
よ、用心棒?
確かにリンは強いけども、クビカッタ達の言ってたことと、行ってくるほど内容が違うな。
ラージにくっついて歩いていくと、オレンジ色のかわいらしい建物に着いた。
「いらっしゃいませ~」
出てきた店員さんの服がひらひらしていてかわいい。ちょっとスカート丈が短い気もするけど。
「これをリンも着てるのかな。かわいいよね」
「いや、リンはあっちだろ」
ラージが指さした先にいるのは、黒い服でゴテゴテの硬そうなものがいっぱいくっついている厳ついおじさんだ。
ラージの中のリンのイメージってどうなってんだろう。
「あら、リンちゃんのお知り合い?」
私達の会話を聞いて、クスクス笑いながら店員さんがやってきた。
「リン、いますか?」
「それがねえ、2日くらい前から連絡が取れないのよね」
聞いた方が早いと思ってみれば、あれれどうしたんだろう。思わずラージを見上げる。
「あなたたち、リンちゃんとお友達?」
「いや、兄です」
いつもご迷惑をおかけしてます、と深々と頭を下げる。と、店員さんの目がキラリと光った。
「そうなのよ。連絡がいきなり取れなくなって本当に困ってるの。責任、とってくれるわよね?お兄さん」
狭い部屋にグイグイ引きずられて来れば、私に押し付けられたのはお姉さんと同じひらひら衣装。
う~ん。私似合わないんだよね、こういうの。
が、背に腹は代えられぬ。パパッと着替える。
鏡で見ると「胸ちっさ」。成長しないな~、もう成人してるんだけどな~。
部屋から出てくると、ラージも出てくるところだった。
「リンちゃんがいなくなったと思ったら、次の日からクビちゃん達もいなくなっちゃったし、本当に困ってたのよ。アレスちゃんはかわいいし、ラージちゃんもかっこいいし、あの子たちが帰って来るか新しい子が入ってくるまで、よろしくね」
お姉さんは業務内容などを早口でまくしたてるように説明すると、駆け足で去っていった。
忙しいんだね、本当に。
「それにしても、短すぎないか」
お姉さんが去ってしまうと、ラージが困った顔でこっちを観察している。
「いつもこのぐらいの履いてるじゃん」
変なの。
「短パンとスカートじゃ違うんだよ」
「中に短パン履いてるし、ほら」
「うわあああああ!!!」」
スカートをまくり上げると、ラージが後ろ向きで転んだ。
本当、変なの。
「私、先行ってるよ」
お姉さん困ってたじゃん。
こんなに乗り気なのは、バイト代がよかったからでは決してない。
ふふふ~ん、鼻歌出ちゃう、ルンルン。
「ま、待てって」
「じゃ、一緒に行こ!」
早く行こ!
「アレス1人じゃ危険、うわっ」
キラキラ現金笑顔で振り向いたら、ラージが壁にぶつかったところだった。
本当、今日のラージ大丈夫かなあ。
リンがいないのがよっぽど心配なんだな。これは、リンとクビカッタ達を急いで探してあげないといけないね、うん。
「おまたせしました~」
お盆にドリンク乗せて注文を頂いたお客のところに持っていく。
「今日の店員さんもかわいいね~」
昨日泊まって今日出発なのか大きな荷物だ。
朝食セットを頼んでくれたおじさ……お兄さんがお盆を受け取ってくれる。
手の上に手を重ねられたら渡せないんだけど。
「名前はなんていう、ぐはっ」
「危ないですよ」
危機一髪、お盆が落ちそなところでラージがテーブルにひょいと置いてくれた。
いい声。
ありがとうを目で伝えると、赤くなったラージが咳ばらいをした。
次の注文を受け取りに厨房の方へ行くと、お姉さんに肩をたたかれて笑われる。
「ぷっは、あんたたちって本当リンちゃん達と兄弟よね」
「リンもお尻触られたりするの?」
よく我慢してるなあ、あのリンちゃんが。
「ん~ん、違う違う。おば様達に絡まれてるクビちゃん達を、リンちゃんがいっつも撃退してるの」
あ、そっちか。
「っていうか、誰だ~、アレスのお尻を触ったやつは~」
「ちょ、ちょっとあんた、火、火、背中から火が出てるよ!」
「わわ!ラージ!?」