47話 リーナ→アレス
ケイミーに押し出され、隣の結界内に入った。
ケイミーに対して『あいつ後で覚えておけよ』と内心思ってしまったのは、お母さんが同じように力を持った神的な何かだからだと思う。
時々人魚になりたがるお母さんは、アレスを鍛えたばあばだ。
本気になればきっとケイミーを殺れる。
いやいや、違う。
人の力をアテにするとか、私ダメ人間だな。
理不尽な扱いに、ちょっと頭に血がのぼったけれど、よく考えたらこんな好機はもう無いかもしれないよね?
私は自身の空間管理内を思い出した。
実は私の空間管理内には、危険な物があり得ない分量で保存されているのだ。
7歳で今の仕事について早10年を軽く超えた。
その間、ために溜めたアレ。
破棄する絶好のチャンスではなかろうか。
怪我人や病人を治癒するのに必要な酸素。
不浄なゴミたちを手っ取り早く破棄して燃やすのに必要な酸素。
それらを得るために、なぜ私は二酸化炭素を利用しなかったのか。
なぜ水から得ようと思ったのか。
答えは簡単だ。
そこに水があるからだよ!
二酸化炭素なんて目に見えないけど、水は目に見えてたくさんあるんだもの。
そりゃ水からやっちゃうよね?
結果、私の空間内にはHがいっぱい詰まっている。
元素記号のな!
もうこれ、この量、どこで破棄したらいいのかと……。
大洪水か大爆発しか思いつかないんですけど。
そこにやってきた今回の好機。
ここは神格化したリーナが練りに練って作った結界内らしい。
しかもその周りを母様が亜空間で固め、影響を地上に及ばさないようにしている。
もうここしか無い!
頭の中で記憶にある爆破映像が流れると、それに必要な物質の記号が浮かびあがる。
そっか水素だけ持ってる分には、安全だったかもしれないんだな。
単に怖いな~、危険だよね~と思っていた自分の知識の薄っぺらさにちょっと涙も出るけど、仕方ない。
だってもう魔力流しちゃったからね!
故に、私は一気に空間を解放した。
☆☆☆
「ちょっと!何やってんのあの娘!」
すぐ隣の結界内で起こった爆発に、残った4人が騒然となった。
中にいる何体かが粉々に飛び散ったのが見てとれる。
「っていうか、ラメルちゃん生きてるんでしょうね」
「それは大丈夫よ。何のための戦闘服なのよ。全てのダメージをオフにしてこその戦闘服でしょう?」
心配発言をしたのはリーナで、得意気に答えたのがケイミーだ。
神の技と力を存分に練り込んで作られた、この戦闘服はすごい代物だったようだ。
こうして伝説級の品物が世に出ていくんだね。
手に入れても着るのに勇気のいるデザインだけど。
「しかし、人としての肉体を持っているにも関わらずあの威力かあ。私もうこの星を半壊させる気はないんだけど」
予定が狂ったのか、ケイミーの視線が私にロックオンされた。
「これ以上あの娘を開放すると危険だから、あとはアレスに頼むしかないわね」
リーナは結界の補強に、母様は亜空間を広げに、ケイミーはどうやら地上に戻ってしまったらしいので『そういえば私の身体もばあばに改造されていて、人の身体とはちょっと違うかも』とは言えず終いになってしまった。
それにしてもお姉ちゃんは雑だなあ。
剣をブンブン振り回して、細かく分解はしているんだけど、物質が0になっていない。
だから時間はかかるけれども、また集まりだして元に戻ってしまうのではないか。
完全な無にしないといけないんじゃないかなあ。
お姉ちゃんがバッサバッサしている後ろで、ちまちま完全消滅をしていくのがよさそうだ。
私は指定された魔法陣に入ると、結果内に侵入した。




