4話 ヤマノナカ村
「ふわああああ」
朝かあ。頭痛い、飲み過ぎた~。
ベッドから降りてよろよろと歩く
『ムギャ!』
あ、ジェリー踏みつけちゃった。
『すやすや』
よかった、大丈夫だったみたい。
奥の部屋のドアを開けると、湯船をお湯で満たす。
二日酔いなんて、治癒魔法水にちょっと浸かれば復活しちゃうもんね。
薬草代わりに、なんでもキャンディーを1つ溶かして完成だ。ばあばが目を瞬かせて太鼓判を押す代物だ。
復っっっ活!
風を起こして髪を乾かしながら外に出る。
さ~て、今日こそは森を抜けたいですよ。
そのためにも、早く起きてしっかり朝食をとって出かけないと。
見たことの無い木に、ぷるっとした実がなってる。
「どんな味だろ」
ちょっとすっぱめ、おいし~い。
二日酔い明けにはちょうどいい。もっと食べたいかも。でも、もうない。
だがしかし、大丈~夫!
私は気合を入れて木に手をあてる。
増えろ~、ぷるっと実のやつ増えろ~。
ぽこぽこっ。
「よっし」
回収回収。
ジュースにできそうな量採れた。朝食に1品増えたよ、わ〜い。
ぷるッと実を容器の上に浮かべると、空気を圧縮して絞っていく。
実がカラッカラになると、パラパラと粉末状に崩れた。
何かに使えるかもしれないから瓶に入れておこうかな。
さて、果汁たっぷり容器ごと冷気で覆って、と。
容器がうっすらと白くなると、中の果汁も周りから凍っていく。
いい感じに冷えたでしょ。
朝食の準備ができたら、ラージを起こさないとね。
なにしろ今日は森の外に出られると思うと、ワクワクしちゃうんだもん。
「ラージ、おはよう」
部屋に足を踏み入れると、落ちている。
ラージがベッドから。
落ちた時に起きろ、自力で。
す~ぅ、おもいっきり息を吸って耳元、
「お~は~よ~おおおおおお!」
「ぶわああああああ!」
お、飛び起きた。効果抜群!
ラージが警戒するように周りをキョロキョロしている。
くう、楽しすぎるぅ!
「朝食できてるよ」
はやく出かけようよ。
気分ウキウキのまま、隣の部屋にラージを誘導する。
ほらほら、朝食だよ。
カリカリに焼いたベアモンチップスをサラダにまぶして、よく冷えたジュース。
ベアモンのクセのある味がクセになる、なんちって。
いや、まじうまいんだもん。
「あ~、普通に起こしてほしかったよ」
ガシガシと頭をかきながら、ラージが机の方に歩いてくる。ようやく目が覚めたらしい。
「普通に起こしたらおもしろくないじゃん」
せっかく他の人がいるんだから、触れ合いを楽しみたい。
……特に、コワイばあば相手ではできなかったことを。
席についてジュースを一気にあおったラージが頭を抱え込んだ。
「ツベタイシ、スッパイ」
え、そこは褒めるところじゃない?
ぬるくてすっぱいジュースなんて腐ってるのかどうか判断できないでしょ。
まあ、ラージなら腐ったものでもいけそうな気はする。
「これ、ブドージョーの実だな。よくこの量が採れたな。1株に2個くらいしか実をつけないのに」
へえ、ブドウジョーって言うんだあの実。
言いながら、隣にあったグラスまで飲み干した。
『あ~!ジェリーのまで飲んだ!もう天誅だし!』
ジェリーに頭髪食べられてるけど大丈夫かな。ま、いっか。トサカヘッドも面白いもんね。
「あ~、俺アレスと結婚してえ」
ラージが呟いた。
そ〜か、そ〜か。私の美少女っぷりにときめいちゃったか。
「い、いや。別に男色家ってわけじゃないぞ!」
ラージが慌てて否定してくる。
っていうか、まだ男だと思ってるんだ。
「飯がうまい。家で食う飯がうまいってのはいいよなっていう意味ね」
そういうことか。いや、別に残念じゃないし。
「そんなんなら、雇われてあげようか?ラージが金銭的に余裕があったらだけど」
何しろ、手持ちが少ないのだ。
お金ってどうやったら増えるんだろ。商隊で買い物をしようと思ったらお金が必要なんだよ。
食べるものなんかは問題ないんだけど、着るものは買わないといけない。
作り方なんてわかんないもん。
1度ばあばに言われて挑戦したけど、意味不明な布の塊が出来上がった。
洗浄魔法で、食べ終わった食器を水の玉にじゃぶじゃぶと入れ、温風で乾かす。
棚に片付けたら終了だ。
「ん~、宿代タダ。食事の素材は俺が確保するってのは?」
「悪くないね」
実際、宿泊代は懐に痛い。だって街中で収納小屋を出すの禁止されてるからね、ばあばに。
「じゃあ、さっそく森の出口まで案内よろしくね」
ジェリーをフードに突っ込んで、ラージを家から追い出す。
「え?森の出口って?えっと~、あれ?ここ昨日の森だったのか?あれ、なんで家が」
外に追い出されたラージが、上の方を見ながらぶつぶつ言ってる。
も~、早く支度しないと出かけられないじゃん。
収納魔法で家を覆うと、瞬間家が跡形もなく消え去った。
「ぶええええ?」
ラージの目がむっちゃ見開かれてる。目、カピカピになっちゃわない?
ラージの村はヤマノナカ村というらしい。
村の中心部は栄えているけど、そこに行くまでは森の中とそれ程かわらないんだって。
あ、塀が見えてきたね。
出入り口が面倒なパターンじゃない?
よし、乗り越えよう。
屈伸して肩を回す。準備運動完了っと。
おもいっきり助走してジャンプ。
「わわっと」
塀に手をついて止まる。
そのまま乗り越えちゃうところだったよ。ラージが来ないと行く場所わかんないのに。
塀の上に立ち上がるとラージを振り返る。
「早く行こうよ」
あれ、ラージびっくりしてるね。
「すごいジャンプ力だね、ははは。うん、でも、門から町に入らないと怒られちゃうかな~、なんて」
「そうなんだあ。知らなかったよ」
ごめんごめん。
ていうか、家から出る時、門から出なかったな。
ばれたら怒られるんだろうか。
……黙ってよ!