表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
28/53

28話 秘密基地

ジェリーと少年が光ったかと思ったら床が抜けた。


「うそおおお!?」


急に放り出されて、来るべき衝撃に備えて身構える。

魔力があれば落下の衝撃は避けられるだろうけど、今の私には無理だ。

私に張り付いている透明のコレも、風圧で引きはがされて落下し始める。


なるべく衝突の被害を小さくすることを考えなければ、とは思うのだけど落下時間が長すぎる。

速度が増して、普通に死んじゃうかもしれないな。


そんなことが頭をよぎった時、ラージに抱え込まれた。腕を伸ばしてしがみつく。

それだけで、安心できるから不思議だ。

ラージが紐を出し投げると、少年に巻き付いた。そのまま力強く引っ張ると、少年も一緒に担ぎ上げる。


のんきにイビキをかいてる場合じゃないよ、少年。

いや、もしも死んじゃうなら、気がつかないうちに死んだ方が怖くなくていいのか?


ジェリーやトカゲンは私の服にくっつく。

これで全員の命運がラージに託されることになった。

まあ、ダメならダメで、うん。


落下地点が見えてくると、ラージが両脇に私たちを抱え直し、身体に回転を加える。両足で衝撃を受けるのと同時に、前傾を取らず背中で私たちの体重を引き受けた。

「ラージ!大丈夫!?」

「つうぅぅっ!」

ああ!血が出てるし背中が破れてる。

「いや、平気だ」

いや、痛そうだよ!


私達が着地したあと、ボタボタと透明のが落ちてくる。

地面についたソレは薄く発光し、ラージの目にも見えるようになったようだ。

私の身体にも、まだいくつかくっついているソレが光っている。


「う、アレスの言ってたのこれか。くそ、取れないな」

ラージが払い落そうとしてくれるけど、しがみついたソレははがれない。

その上、高い所から落ちたソレは、小さくちぎれても死ぬことはなかったようで、私に向かってのっそりと動き出した。


「むうう。ここどこだ?」

私とラージが警戒の気配を強くする中、少年の目が覚めた。

『あ、やっぱりゴンだ!』

ジェリーが飛び出すと、ゴンの肩に乗る。


「む?お主、ジェリーか?ジェリー初代ではないか。久しいな」

あの気持ち悪い物がじりじりと近づく中、何のんきに再会を喜んでいるんだ、お前ら。


「それにしても初代がいるということは、銀のがいるのか?どれだ?」

『アレスだよ』

ジェリーがぴょんと私のところにやって来る。


「お主、銀の気配はするけど銀ではないのだな。それにここはケイミーが作った秘密基地ではないか。ちょっと来い、アレスとやら」

私の手を引っ張って、部屋?の中心に向かっていく。

いやそっち、透明のがいっぱいいるんだけど!


いやだな~、行きたくないな~の気持ちを込めてのろのろと進むのだけど、ゴンには伝わってないらしい。

警戒するようにラージもついてくる。


中央にある四角い碑のような石に近づくと、上の部分に何か書いてあるのが見える。

何かの文字かな?読めないけど。


「ほれ見よ。ここにこうしてな、こうするのだ。ケイミーがよくやっていたからな」

石碑の上にゴンに手を押し付けられると『登録サレマシタ』と頭の中を言葉が通り抜けた。


『登録者本体ノ魔力レベル未到達ノタメ、起動スルト生命活動ガ停止スルオソレアリ。実行シマスカ』

続いて脳内に流れてくる文字列。


生命活動中止ってどういうこと?

死んじゃうってこと?

しない、しないよ。どうやって止めたらいいの?

石碑から手が外れない。


「アレス、どうした?」

「手が外れなくて」

私の焦りを感じて私の手を石碑から外そうと、ラージが手を重ねた時だった。

石碑から白い紐がにょ~んと伸びたかと思ったら2人の手を貫いた。


「いったああ……く、ない、ね」

ラージを見上げる。

「あ、ああ。驚いたけどな」

心臓がバックンバックンいってるよ。


『五ノ姫、護り人トノ繋ガリヲ登録シマシタ。五ノ姫、パワーセーブリミッター解除シマス。護リ人起動ノタメノ魔力ガ足リマセン。五ノ姫カラ供給開始シマス』


「ぐっ」

ラージが苦しそうに跪く。

「ラージ?」

どうしたの?

「くっ、身体の中に何か入ってきた。嫌な感じではないが、熱、い」


「ふむ。ラージとやらがアレスと繋がって、魔力持ちになったのだな」

へ?繋がったって、何?

さっきの紐みたいなののせい?

っていうか、もちっと説明がほしいけど!


あ、でも本当だ。

透明のウネウネが、私だけでなく、ラージにも絡みつき始めたもん。

仲間増えた〜って喜べんわ!


『基地起動ノタメノ魔力ガ足リマセン。生命活動ヲ停止シ供給ニアテマスカ。現在敷地内ニ魔力保有者アリ。協力者カラ供給ヲ得マスカ』

「生命活動の停止は困るけど、協力者からの供給ってどうするの?」

協力者から供給ってどういうことで、そもそも誰のこと?

ゴン君とか、魔力保有者っぽいかも?


『了解シマシタ』

いや、聞いただけで、決定じゃないんだけど!


立っていられないくらいの揺れを感じて膝をつくと、さっきまで呻いていたラージに引き寄せられる。

脂汗が額にびっしりだよ。

回復飴、回復飴!


と、床に模様が浮かびあがった。

地面が強く光を放ち、私は眩しさにラージの腕の中できつく目を閉じた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ