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2話 門の外

私、はじめて塀の外側に出る。


塀の中の森だって随分広かった。

でも、ばあばが塀の外はもっと広いって言ってたなあ。

けどいざ出ていこうと思うと、グルリと家を大きく囲んでいる塀は、どこが出口かわからない。

ときどき商隊が布などを売りに来ていたことを考えると、どこかに出入り口があるはずなんだけどな。


けど、出口探すの面倒くさいなあ。

塀の高さは、ざっと見て5ミートルくらいだ。

私は少し考えて結論を出した。

いけるでしょ。


塀から距離をとって助走すると、手前で地面を思いっきり蹴った。

「おっと」

おおう、飛び過ぎた。

指先をひっかけて塀の上にくるっと降り立つ。


これでわざわざ出入り口を探したりしなくてよくなった。

こうなってみると、ヒラヒラした衣装が好きではなかっただけなんだけど、ズボンスタイルで出てきたの正解だっかもしれない。

まあ、ばあば推薦のサバイバルスタイルだ。


「さ〜て、外の世界はどうなってるのかな〜」

上から見る外の景色はどこまでも木ばっかりだけど、中の森と違って鮮やかな緑だ。


外にはたくさんの人がいる『町』があるってばあばが言ってたし。

塀から飛び降りてニャコのように着地する。


どっちに行こうかな~。



☆☆☆



ワクワクして出てきたけど、よっぽど歩いても森が続く続く。

もう3時間くらいは歩いたと思う。最初は珍しい木を発見するだけで楽しかったけど、だんだん飽きてきた。

もしかして、外の世界は森しかなかったのかな〜。

人のたくさんいる場所なんて、ばあばの作り話だったのかもって思えてきたよ。


退屈していたら、ブウフウと変な息遣いが聞こえてきた。勢いよく黒い物体がぶつかってくる。

あっぶね!

腰の剣を抜きざまに押し付けると頭から上が飛んで行った。


「初めて見る生き物だ。食べられるのかなあ」

もう教えてくれるばあばはいないし。


本当に食べてはいけないものは黒く靄がかかって見えるから、きっとこれは大丈夫でしょ。

まあ、食べられるものとおいしいものは違うんだけどね。

でも、サバイバルで食料は大事だから、部位に切り落としてバッグに入れる。


いつも不思議だけど、このバッグ、倒した魔物とか動物をバッグにいれると、解体されて食べられるままになった肉塊で取り出せるんだよね。

最初の頃は解体も勉強だって言われて使わせてもらえなかったけれど、最近はこのバッグを使っても怒られなくなった。

他のバッグに入れたら、洗うの大変なんだよ。

ほんと、重宝する。


バッグの中で解体できた肉や処理された木の実を取り出して、空間に収納スペースを作って入れなおすとさらに便利になる。

サバイバル中に仮眠用の小屋を出し入れもできるしね。

でも、ばあばには外の世界に出た時には、誰もいない場所でやるように言われた。なんでだろ。


全ての肉塊をバッグに収めると、また歩きはじめる。

うん。塀の外にこうして生き物はいるんだから、人もいるだろうし、森の外って場所もきっとあるはず。

そもそも日用品を売りにくる商隊がいたんだから、人はいるよね?


『アレス、お腹すいた~』

「あれ、起きた?」

フードの中で寝ていたジェリーが起きてきた。

あんなに動いても起きてこないのに、血の匂いがすると起きてくるとか、現金だなあ。

お腹がすいたというジェリーに、さっき倒した肉塊を出して与える。


『あんまりおいしくない』

「だろうね。生肉だし」

私なら、せめて焼きたいわ。

『生肉でもいいんだけど~』

そういう意味じゃないって、どういう意味なんだ。


「調理したものを食べたかったら、この辺で今日は泊まろうか」

『わ~い。アレスが料理したのおいしい。魔力いっぱい!』

「はいはい」

私が料理担当ね。

どこか、寝るのによさげな広さの場所がないかな~。


お、前方に動く物発見。あれ? 私と同じ人間っぽいかも。

人間いた~!


あの大きな生き物に襲われてる、のかな?

走り出しながら、2匹いたうちの1匹を狙ってナイフを投げる。

眉間に大ヒット!イェイ。


人間(だよね?)は、もう1匹を倒したところだった。

「助かったよ、さすがに1人でいる時にベアモン2匹は死を覚悟したからな」

あの生き物、ベアモンというらしい。

ふむふむ、人と話すと勉強になります。


「俺はラージ。この辺りで見ない顔だな。どこから来たんだい?」

茶系の黒髪でガッチリしているこの人はラージというらしい。

「アレスだよ。どこからっていうか、迷子中なんだ。森の出口がわからなくてさ」

本当、そろそろ森ではない風景がみたい。


「なんだ迷子か、ははっ。とくに急いでいるわけじゃないなら、ウチに泊まりにくるか? お礼もしたいしな。まあ今日はこの時間だし、野宿決定だが」

おお、なんだか森を出られそうだよ。町?ばあやが言ってた町があるのかな。ワクワクする。


「じゃあ、この辺りに薪を集めるか」

「薪?」

薪ってなんだ?初めて聞くよ。

「こうして木を集めて火をつけておけば、動物も小柄の魔物も寄って来ないからな」

へ~。

家では火を利用するのに魔石を使っていたから、木を燃やすのはじめてだ。


「なんだ、野宿ははじめてか?」

「そうだね」

興味津々でラージのやることを観察する。

「そういや、アレスは誰かとはぐれたのか?旅装束にしては身軽だもんな」

はじめて気がついたという感じでラージが手を止めた。

上下長袖の動きやすいパンツスタイルに、バッグ1つ。

旅装束には身軽に見えるらしい。

「いや、1人で出てきたよ。迷子になるとは思ってなかったんだ」

すぐに森を抜けるつもりだったし。


よし、やること理解したぞ。

まず木を集めるんだよね。


精神を集中すると腕に魔力を纏う。

「せいっ!」

目の前の木を、手剣で根元から倒すと、適度に割っていく。この程度の作業に腰の剣は必要ない。


「これを燃やせばいいの?」

振り返ると、ラージがこっちを凝視している。

「い、いや。生木は燃やせないから、こういう時は落ちている枯れ枝を集めるんだ」

「生木は燃えないの?」

なんだ。せっかく切ったのに使えないってことを言いたかったらしい。

「煙を出したいときには生木でもいいんだがな。目が痛くなるだろ?」

そうなんだ~。

ん?まてよ。 枯れ枝みたいにカラッカラに乾かせば燃えるってことだよね。


手を木に当てると、木の水分を外に押し出すよう力を籠める。

乾け!

切った木の色が茶色く変色してきた。いい感じじゃない?

私は調子に乗ってさらに力を籠めた。


あ、周りに生えてる木が変色してきた。やばい、やばい!

はい終了!


え、え~と火をつけると魔物が寄ってこないんだよね。

よし、燃えろ!

ボガン!

あ、焦って強く念じすぎたっ。

周りの木も5・6本燃えてるわ。燃え移るわ。ヤバイわ。

ん~。あ!風の壁、周りを囲んで遮断せよ!


ふ~、なんとかなった。よかった、よかった。

さっき周りの木まで乾燥させちゃったもんね。そっちも燃えやすくなっているとは考えてなかったわ。


「びっくりしたね」

ごめんねって、あれ? 

ラージに声をかけたけど、目を開いたまま動かないや。

やっぱり、やりすぎちゃったかも?

大きな音で爆発させちゃったからね。


だけどまあ、今日寝るとこを用意できるぐらい広い場所が作れたし、結果オーライでしょ。

空間収納の中を確認すると、

「あった、あった」

さすがに家は持ってこれなかったけど、小さめな小屋は収納してきた。

サバイバルの仮眠用のやつ。

ばあばは人に見られるなって言ってたけど、ラージ意識ないから出しちゃお。


この小屋には、小さなトイレとお風呂とキッチン、それから簡易ベッドが3つある。

私と母様と父様の分だったらしいよ。

父様には会った記憶がないから、よく知らないけど。


「どっこいしよ」

ちょうど燃えた木の辺りに収まったよ、ふ〜。

ラージは父様のベッドでいいよね。

「ラージ?移動しようよ」

トントンしても気がつかない。

う~ん、運ぶか。


「んしょ、んしょ」

ズルズル引きずって運ぼうかと思ったけど、ラージ重いな。

浮け~。

ベッドに行け~。

はい、で~きた!


おやすみ、ラージ






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