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12話 接触

出かけようと店を出ると、上からトカゲンが降ってきて髪飾りみたいにピタッと頭にくっついた。

『トカゲンが、置いてくな~だって』

なんだか仲間意識が芽生えたっぽい。


「トカゲンが髪飾りっぽくておしゃれになったんじゃない?」

褒めると嬉しそうにしっぽが揺れる。

『ジェリーだって役にたってるし!』

なぜに対抗心。これ見よがしに揺れなくていいよ。胸が揺れてるみたいじゃん。


ドガシャン!

積み荷にぶつかったかな。

バギッ!

植木にぶつかったかな。

「う、うん。感謝してるよ」

さっきから後ろが騒がしいんだよ。もう止まろう?ね、ジェリー。


「何かお探しですか?」

声を掛けてきたのは背がすらっと高くて細身の優男。

ラージよりも高いんじゃない?

「みのり屋さんを探してるの。まだこの町にきて1週間しか経ってないから、場所がよくわからないのよね」

「そうですか。この辺りに慣れていないと分かりづらいかもしれませんね。道を1本入りますから」

あ、そうなんだ。この地図、丸しか書いてなくて見方がわかんねえ。


「ところで、どちらでお仕事をされているのですか」

サラッと私の手を取って口づける。おお、遊び人っぽい。

「駅に近い喫茶所よ。カマザンスっていうオレンジの建物の」

知ってるかな?


「ああ、あそこですか。時給がいいらしくて、若い方から人気なお店ですよね」

腰に手を回されて、中に1本入る道に誘導してくれる気らしい。

「そうなの!すっごい時給がいいのよね」

うっとり。


「時給がよくてカマザンスに就職を?」

「そうよ」

むっちゃ顔近いな~。

「う~む。では、カマザンスの3倍の時給を出しましょう。ウチで働きませんか、お嬢さん」

3、倍!!

目を見開いて、マジマジ見つめちゃう。


「店の名は金御殿といいます。もし興味があったら、今日の4時、駅前でお待ちしています。さ、ここですよお嬢さん」

最後に「お待ちしています」とぎゅっと抱擁されて、バイバイした。


「☆#%*☆!!」

振り返ると、道の向こうにおコト姉とクビカッタとアカーシに抑え付けらた、ラージが転がっている。

「こんなことだろうと追ってきてよかったわ、ふんっ」

と、鞭を片手にリンが仁王立ち。

「あんたにしては我慢した。よくやった」

珍しくおコト姉に褒められて、顔中なんか汁だらけのラージ。何があった。

「さあ、もう我慢しなくていいから」


ビシッと私を指さしたおコト姉の言葉と同時に、ラージが突進してきた。

ひえええ、マジ怖い。

「☆#%*☆!!」

よけてもよかったけど、なんか泣いてるし、受け止めちゃったよ。私のバカ!


「おお、よしよし。落ち着け、落ち着け」

グリグリすんな!重いよ!

「☆#%*☆!!」

お~ま~え~はバウワウか!なめんな、バカ!


「私、あれ見ると不安になるのよねえ」

潜入任せて大丈夫かしら、っておコト姉が呟く。

「お兄って、不動の山って感じでかっこいいと思ってたんだけどな~」

「見る影ないっすね~」


いや、そこ!くつろいでないで助けて。

ばあばに教わった抜け技が1つも効かないし、ラージめっちゃ重いんだけど。

「ラ、ラージ、重い、死んじゃう」

命からがら声を絞り出すと、ラージがやっと止まった。

さっとお姫様抱きされる。


「も~、せっかくのかわいい服が泥だらけになっちゃったじゃん。夕方これじゃあ出かけられないよ」

「行かなくていい。俺が行く」

ぎゅっと抱く力が増す。



「敵が逃げるわ!」

ごもっとも。




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