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10話 変装

早々に契約を切られたラージに代わって、私がウエイトレス業を頑張ることになった。

「心配だ」

「本当にね~。リン達どうしたんだろうね」

「いや、そうじゃなくて」


「もおお!邪魔!リンちゃんは見た目かわいいから許せるし、クビちゃんは動きがドンクサかわいいから許せるけど、あんたはかわいくないから許せない!うざいっ!」

黒い服を脱がされてもまだ店にいるラージに、とうとうおコト姉さんが切れた。

まあ、あれだけ営業妨害すれば契約を切られるのも仕方ない。火事になるところだったもんね。


「私、リン達が帰ってくるまで頑張るから、そんなに心配なら探しに行っておいでよ」

ラージがギギギギとこちらを見る。

「わかった。高速で見つけてくる。すぐに救い出すから、待っててくれ」

がっちりつかまれると肩痛い。

コクコク頷くと、あっという間に姿が見えなくなった。


「あんなに心配なら、最初からリンのお願い聞いてあげればよかったのにねえ」

ため息まじりに呟くと、おコト姉さんが「まじか」と振り向いた。

「アレスにないのは胸だけじゃなかったか」

ってどゆこと?失礼な!


マッハで飛び出したラージは、言葉通りすぐに帰ってきた。

左肩に猿ぐつわをしたリンを背負い、右手でクビカッタとアカーシの頭をワシっとつかまえたまま引きずってきた。

あの2人、そのうち剥げるんじゃない?


「さあ、吐け。なんでこんなことになったんだ?」

リンは猿ぐつわをしたままでしゃべれないし、クビカッタ達は白目をむいていて聞こえてないだろうに。

「ちょっとお、店先でそういうのやめてよね。営業妨害も甚だしいわよ」

おコト姉さんはそういうと、クビカッタ達をズルズルと店内に引きずり始めた。


「店内の方が邪魔になりません?」

「やだあ、アレスちゃんってば。店内でイザコザがあった時は、お客さんが様子を見に入ってきてくれるのよ」

そ、そうですか。商魂たくましいですね。


「だから、カレンがいなくなっちゃったって言ったじゃない」

猿ぐつわを外したリンがラージに食って掛かる。カレンちゃんはリンの幼馴染で一緒に働いていたらしい。一言の相談もなくいなくなれば心配にもなるよね。


「勝手にいなくなる子じゃないの、お兄だって知ってるでしょう」

うん、うん。

「リンさんのために、カレンさんを探してあげてください、兄貴」

「リンさんの憂いを晴らしてあげてくだい、兄貴」

お前ら、カレンちゃんのことは心配してないだろう。


「ねえ、アレス。アレスなら手伝ってくれるわよね」

カレンちゃんを探せ、か。探してやりたいがカレンちゃんを知らんのだが。

「それに、いなくなっているのはカレンだけじゃないのよ。私が知っているだけで、この町からいなくなったのは7人もいるの」


目にうるうると涙を溜め、リンが訴えてくる。

「俺ら何でもします」

「リンさんのためになるなら何でもします。アレスさんなら強いから何とかなりますよね」

ホントにお前ら、リンのこと以外心配してないだろ。


「まあ、確かにアレスの戦闘能力は高いし、ここにいるよりは問題ないか」

腕を組んで、しばらく考えにふけっていたラージが言葉を発した。

「俺とアレスがカレンを捜索する。その代わり、お前らはこの店でしっかりと働け、いいな?」


「そうと決まれば、アレスが囮になれるように変装させなくちゃ、ね」

「あら、カレンちゃんに寄せていく?この子胸ないけど」

おコト姉、一言多いな。

「いなくなった子の特徴ってなにかしら」

「髪の色が鮮やかな子が多かったわね」

2人がいなくなった子の特徴を挙げていく。

「まさに、な女の子っぽい子とか、かわいい男の子ばっかりよねえ」

「どっちに寄せる?」

リンとおコト姉が私を隅々まで観察した。どっち、て……。


「まずは髪色ね」

「アレスの髪は銀色だから、何色にも染めやすいわね」

色鮮やかなテフテフライ粉を持ってくるとリンがひと瓶取り出した。

むっちゃ水色。

「これにしよ。カレンの色だし」

凄い違和感あるわあ。


「髪も、バサバサだから切り揃えた方がいいわよね」

止める間もなく、ハサミを振われる。

「いやあん。かわいいわ」

おコト姉とリンがハイタッチし始めた。

もう、どうにでもすればいいよ。


意識がどこかに飛んで、どのくらい時間が経ったのか。

『ねえアレス~。見て見て~』

着替えの時に部屋に置きっぱなしにしていたジェリーが、何やら捕まえてきた。

あ、お腹すいてたかも。ごはんあげるの忘れてた。


『食べます!』

ジェリーが踊り食いしたのは、その辺にたくさんいる変哲もないトカゲン。

バタバタと逃げ出そうともがくトカゲンをパクッと飲み込んだ。


さよなら、トカゲン。


ジェリーの身体から出ようと、ツンツンもがいているけど、いつものように消化せずだんだんと色だけが抜けてきた。

おお、透明なトカゲンになって出てきたよ。


『見て見て、アレス~。ジェリーの子分!』

子分……。

トカゲンが一体なんの役に立つのか。

「ちゃんとジェリーのごはん、分けてあげるんだよ」


『がーん』

ジェリーが白くなったの、はじめて見たね。






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