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昔話の始まり

 トウカはあの後、無事に家に住み着いた。


 他の子に対して警戒心はまだ解いていないが、自分から襲いかかるようなことはしない。

 全て平和に終わって、俺にも平穏が戻ったはずだった。


 はずだったんだけどなぁ。


「……何でついてくるんだ?」


 トウカが俺の後ろにピッタリついてくる。


「護衛」


 家の中ですら護衛という理由で側にいる。


 夜も部屋はいらないから、俺を護衛するためにベッドの下か、天井裏に住まわせて欲しいと言い続けられた。


 トウカのしつこいと思えるほどのお願いに、折れた俺は屋根裏部屋を作って、そこに住んで貰っている。


 だが、折れることの出来ないこともある。今がその時だ。


「トイレに行きたいだけなんだけど……」

「なら、トイレ内で護衛する。用を足している間は無防備になりやすい。隙を突かれて背後から斬りかかられる危険がある」


「……トウカ、一応ここ自宅なんだけど? 外と違って安全だぞ?」

「自宅だからこそ。万が一は許されない。トイレの個室ごと爆破されることもある」


「その万が一よりも、トイレで用を足すところを見られると、出るモノも出ない方が問題なんだけど……。俺の膀胱が爆発したらもっと困る」

「問題無い。リンファから手技を教えて貰った。たちまちスッキリするらしい」


「ちょっと待て!? 俺から何を出させるつもりだ!?」


 こんな感じでトウカがずっと付いてくる。

 ちょっと頭がおかしいレベルの心配性と、どこかの狐娘の知識が入ってさらに歯止めが利かないおかしさになっている。


 リンファのやつ、冗談にしてはやりすぎだ。多分、全く意味分かってないぞ。


「トウカ……、トイレについてくるのは止めなさい。それと他の人に同じ事を言うなよ……?」

「マグナがそう言うなら……了解」


 色々な意味で素直過ぎるので、止めろと言えば止めてくれるあたりは助かっているのだが、何をするにしてもこんなノリなので、どうしようもない。

 早く他の子達と接して、常識を学んで欲しいなぁ。

 そういえば、フィーネとリンファがなかなか会話のきっかけを掴めないと困っていたな。


「トウカ、フィーネ達とは会話しているか?」

「肯定、彼女達の言葉は聞いている」


「そうか。……ん?」


 聞いている? 会話しているか聞いたのに、返答が聞いているっておかしいよな。


「返事はしてるのか?」

「肯定、頷きと首振りで対応している」


「何でまたそんなことを……」

「マグナのことはファウストに聞いていたから知っていた。それとマグナが私に意味をくれたから、どんな人か分かる。でも、他の人は分からない。何て応えれば喜んで貰えるか分からない」


「あぁ、極度の人見知りなんだな……。暗殺技術もそっちはからっきしだったのか……」


 この分だとトウカの社会復帰は当分先になりそうだ。

 ギルドでソロの仕事は出来るけど、それ以外が心配だなぁ。

 例えば、買い物なんかで市場に行けば、量り売りや値札が無かったりするから、交渉術必須なんだ。

 今のこのコミュニケーション能力では、何が起こるか分からない。


「なら、まずはフィーネ達について知って、話せるようになってみるか? と言っても俺の昔話みたいになるけど」

「肯定、マグナ、フィーネ達のこと教えて。それとマグナの昔話も」


 こうした経緯で俺はちょっとした昔話をすることになった。

 俺とフィーネの出会った頃の話を。


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