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スケートリンクのふたり 前篇

   スケートリンクのふたり ―――見守る氷上 前篇―――


 ねえ、玲はいったいどうしたら俺のことを見てくれるの?


「赤レンガ倉庫にスケートリンクがあるんだって!」

 金曜のバイト帰り、玲が電車の中でそんな話をし始めた。玲はいつだって好奇心旺盛でどこから仕入れてくるのか、次から次へと話題のスポットの話をし始める。

「ふーん」

「ふーんって、宗ちゃん!」

「へぇー」

「へぇーって、宗ちゃん!」

 最高に興味ないふりをしてみる。まあ、実際スケートにはあまり興味ないんだけども。

「ねえねえ」

「んー?」

 玲の頭越しに窓の外を眺める。

「いこうよ!」

「どこに?」

「私の話聞いてなかったの?」

「赤レンガ倉庫?」

「聞いてるんじゃない!」

 玲がぷくんと頬を膨らませて怒っている。

「どこからそんな情報仕入れてきたの?」

「先週、ゆずはちゃんが彼氏とデートで行ったんだって!」

 電車内なのにぴょんぴょんと跳ねそうな玲。

「そう。じゃあ、玲も彼氏と行けば?」

 俺の一言に、玲はまた膨れる。

「・・・彼氏なんかいないの、知ってるくせに。宗ちゃんの意地悪」

 知ってるよ。いたら今頃大騒動だ。俺が。

「俺も彼女と行くから」

 試しににっこり微笑んで言ってみれば、ぷくんと膨れていた玲の顔が絶望に・・・っていうのは言い過ぎかもしれないけど、凍り付いた。

「宗ちゃん・・・彼女いたの・・・?」

「さあ、どうだろうね?」

 電車が駅について、改札を抜けて階段を降りる。

「待って、宗ちゃん!そんな話聞いてない!」

「どんな話?」

 足を止めてくるりと振り返ると、俺に追いつこうと小走りになっていた玲の顔が俺の胸にぶつかる。

「あんっ!痛っ!」

 玲が顔を抑えて一歩後ずさり、俺を見上げて睨む。

「で、どんな話?」

「・・・宗ちゃんに・・・もういい!帰るっ!」

 今度は玲が俺を置いてすたすたと行ってしまう。俺はたいして早歩きもしないで玲に追いついて半歩後ろをついて歩く。

「赤レンガ倉庫はお兄ちゃんと行くから!」

 玲は家の前に着くなり俺をきっとにらみながら言い置いて、バタンと乱暴に家のドアを閉めた。

「・・・あの人、行かないと思うよ」

 俺は面倒くさがりな玲のお兄さんを思い浮かべた。


 その夜・・・というか、バイトから帰ってきた時点ですでに夜だったんだけど、俺は電話で玄関に呼び出された。

「こんばんは」

「こんばんはじゃねーよ!ちょっと顔貸せ」

 およそ穏やかとは言えない雰囲気で、俺は玄関に置きっぱなしだったランニング用のパーカーを羽織って彼・・・玲のお兄さんの後をついていった。連れていかれたのは昔よく玲と3人で遊んだ公園。

「てめぇ、玲に何しやがった?」

「なにもしてませんよ」

 俺を睨み上げるその目の形が玲に似ている。

「赤レンガのスケートぐらい行ってやれよ」

「・・・誘われたんですか?」

 玲、本当に誘ったのか。

「俺はんな暇じゃねーんだよ。大体、何考えてんだか知らねーけど、女がいるふりなんかしてんじゃねーよ」

「・・・・・・」

「玲にはおまえしかいねぇ。わかってんだろ?世話やかせんじゃねーよ」

 ひととおり一方的に怒られて、俺たちはまた、縦に並んできた道を家まで帰る。

「とにかく、玲の子守りは任せたぞ」

「はい」

 なんだかんだ言って、いつも俺と玲が喧嘩をすれば仲裁してくれて、玲に見せられない弱みも見せられて、相談に乗ってくれたりして、俺にとっても実の兄のような人。一つ年上なだけなのに、なんだかとても大人に見えるのは、俺が子供の証拠なのかな?




   明日に続く・・・





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