鏡開きのふたり
鏡開きのふたり ―――おまけの11日―――
「宗ちゃんすごーい」
鏡餅を包丁で切り分けただけなのに、玲は大喜び。
「力あるね!」
まあ、男だからね。玲はそこんとこ、どうも忘れてるみたいだけど。
「よし!後は任せて!」
俺が切り分けた鏡餅を持ってキッチンへ。俺も手伝おうと一応隣に立ってみるけど、実際、玲は意外にもてきぱきしてて、俺は邪魔なだけかもしれない。
「こしあんと粒あんとどっちがいい?」
なんて言いながら、こしあんしか買ってない。
「おもちいくつ?」
「訊いてくる」
なぜか神崎家に集合している両家の家族・・・俺の両親と、玲の両親とお兄さん・・・にそれぞれ希望の数を聞いて、俺はキッチンに戻り、人数分の器を用意する。
「わぁ!幸せ!」
甘いものは作ってる時からとても幸せそうな顔をする。
「できた!」
お盆に載せて運ぶ。全員分一度には無理だから5つだけ。俺と玲の分は玲が両手に持ってリビングにくる。
「お待たせ!」
「あら玲ちゃんありがとう」
母さんの分だって、運んだのは俺なのに、お礼を言われるのは玲だけ。まあ、いいけど。
「いただきます」
ダイニングに座りきれないから、俺と玲は床のテーブルの前に座って食べる。
「これでお正月の行事も全部終わっちゃったね」
ふたりで器を片付けながら言う玲はとても寂しそう。
「うん、これでお正月も食べおさめ。ちょっと痩せないとな」
「宗ちゃん全然太ってないじゃん」
「うん、俺じゃなくて玲のこと」
「ひっどーい!」
怒りながらも、残ったお汁粉をおかわりしている。これでこそ玲だな。
「じゃあ、明日から宗ちゃんと一緒に早朝ランニングに行く」
「いいけど、5時半起きだよ?」
「・・・頑張る」
「本当?」
「本当!」
「絶対?」
「絶対!」
玲は頑固だ。言い出したらなかなかきかない。
「じゃあ、起こすからね。言っとくけど結構寒いよ。まだ暗いしね。眠いとか、だめだよ。絶対起こす。寝ぼけててもつれてく。布団とか、引っぺがすから」
「ええっ!」
玲の大きな瞳がみるみる怯えはじめる。
「じゃあ、明日ね」
俺はにっこり笑う。
玲が太ったことに感謝しないと。明日の朝が楽しみ♪