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クリスマス準備のふたり 自宅編

   クリスマス準備のふたり   ―――見守る、聖夜の支度・自宅編―――


 わかった。結婚したら速攻でそれ買ってあげるから!



「はい、宗ちゃんよろしく」

「は?」

 今日は11月27日(金)。何の日かといえば、クリスマスの丁度4週間前。俺は毎年恒例的に玲の家にいる。2階の廊下の収納庫の前で脚立を準備して笑顔で俺に声をかける玲。

「って言うかさ、玲ひとりでもできるよね?」

「ひとりじゃつまんないもん」

 まあ、俺もこうして玲に頼られなかったらつまんないんだけどさ。

「じゃあ、順番に下ろすから、順番に戻してよ」

 脚立にあがり、収納庫の一番上の一番奥にしまってある段ボールを取り出すべく俺はその手前にぎっしりと並べられている家族アルバムを順番にとって玲に渡す。これらをすべて一度だしてからでなくては、目的の段ボールにはたどり着かない。毎年出すときも仕舞う時も思うのだが、年に一度しか出さないものだから、あの段ボールは奥底にしまわれている、が、その手前のこのアルバムたちは、年に一度の活躍の場もないのでは?ということは、いっそのことアルバムを奥に押しやって、段ボールを手前に置けばもっと楽なのではないだろうか?

「宗ちゃん、まだ?」

「ちょっとまってよ」

 そしてこのアルバム、意外と多い。お兄さんが子供の頃から、今日まで、一体いつとっていつ編集しているのかわからないけれど、律儀に年号順に並べてある。家族ぐるみで仲がいいため、俺の写真も割と詰められている。ちなみに、うちの両親はこんなにマメでもないので、ひとりっ子だというのに、俺のアルバムが我が家で作成されている、ということは、まったくない。

「はい、これで最後」

「はーい」

 玲とふたりして流れ作業でアルバムを床に出し切り、やっとのことで目的の段ボールへ到達。

「あら、宗ちゃん毎年悪いわね」

 玲の母さんが洗濯物を下げに2階にあがってきた。

「いえ、大丈夫です」

「それにしてもアルバム増えたわねー・・・どうせ誰も見ないんだから、次仕舞う時はアルバム奥にしたら少し楽なんじゃない?」

 床中に並べられたアルバムを見ながらお母さんが言う。

「そっか」

「そうよ。毎年大変じゃない」

「でも、お父さんよくこんなに作ってるよね。見もしないのに」

「それが活躍するのは、いつか玲が結婚するときだけだと思うわ」

 お母さんの一言に俺はふと気づいた。じゃあ、このアルバムは後3年くらいで活躍の場が来ることになる。

「・・・・・・」

「宗ちゃん、段ボールまだ?」

「あ、ごめんごめん」

 ぼんやりと会話に聞き入ってしまった俺に、目的の段ボールを催促する。

「はい」

「じゃあ、アルバム奥にしまっちゃおうよ」

「・・・いや、いいよ」

 玲が私かけたアルバムを手を振って床に戻させる。

「私が結婚するときとか言って、10年くらい先まで使わないんだよ?」

 あ、玲の中では29くらいで結婚する予定なんだ?悪いけど、その予定大幅に狂うよ。俺、23で結婚する予定だし。

「まあ、いいだろ。急に見たくなるかもしれないし」

「生まれてからずっとこの家住んでるけど、急に見たくなったことなんか一度もないよ」

「ほら、とにかく行くよ」

 俺は段ボールを抱えてリビングへ降りる。


「宗ちゃんCDかけて」

「使い方わかんないから玲がかけて」

 iPhoneもうまく使いこなせない、まったくイマドキの若者ではない俺は、iPodの使い方なんて、わかるわけがない。玲だって似たようなもんだから、昔ながらのCDプレイヤーでクリスマスソングアルバムをかけた。

「もっとおっきいツリーほしいなぁ」

 玲の家にあるのは田舎から送られてきた岩手りんごの段ボールに収まるくらいの卓上ツリー・・・といっても、結構しっかりしているし、これで充分だと俺は思うんだけど。玲は小さい頃からお店に飾ってあるような大きいツリーがほしいと毎年言っている。

「これだけだって飾って仕舞うの結構大変なんだから、これで充分だろ」

「そうよ、大体そんな大きいツリーなんて、一体どこに飾るの?」

 硝子の蝋燭立てやツリーの飾りを出しながらいう俺に、洗濯物を畳んでいるお母さんが援護射撃をくれる。

「結婚したら絶対大きいツリー買ってもらう!そう言う人と結婚する!」

「・・・・・・」

 長年反対してきたけど大きいクリスマスツリーを買うのはどうやら俺の役目らしい。

「よし、じゃあ、宗ちゃんお願いします」

 クリスマスツリーの一番上に星を飾るのはなぜか毎年俺の役目。最後に俺が星を飾れば完成だ。

「はい、できあがり」

「わぁい」

 ひな祭りのときは雛人形を飾っていた窓際のサイドボードの上に所狭しと並べられたクリスマスの小物たち。サンタなんて7人もいる。

「今年もきれいに飾れたわね」

「うん!」

「じゃあ、段ボール返してアルバム仕舞うから、玲、ついてきて」

 今度は空の段ボールを抱えて、再び2階の廊下へ戻る。

「宗ちゃんアルバム奥にしちゃえばいいのに」

「いいよ、別に」

 玲とふたりでやっているわけだから、作業が長引く分には俺的に特に問題はない。

「絶対しばらく見ることないよ」

「そうでもないと思うけど」

「?」



 だって、結婚式のとき流す写真選ぶのに、半年くらい前から選び始めるかもしれないだろ?




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