卒業旅行のふたり おまけの帰り道
卒業旅行のふたり ―――おまけの帰り道―――
「ところで、玲、伊藤さんとどういう関係?」
帰りは旅っぽい雰囲気のために町田までロマンスカーに乗ることにした。玲がどうしてもというので、夕食は駅弁。
「どういう?」
駅前で買ったロールケーキもデザートにつけて、玲はご機嫌で弁当を頬張っている。
「俺、ふたりを紹介したことなんかないよね?」
というか、俺はそもそも玲を誰かに紹介したことはない。玲はよく友達に俺を紹介してくれるけどね。
「うん、でも、宗ちゃんの部活の先輩でしょ?」
伊藤さんは玲をものすごくマネージャーにほしがっていた第一人者だったから、俺はその点かなり警戒してたはずなんだけど。
「伊藤さんの引退試合の日の帰りに、告白されたの」
「はぁ?」
つまんだはずのたくあんが箸から落ちそうになった。
伊藤さんの引退試合の日は俺の高校初の公式戦出場の日だった。玲は弁当を差し入れてくれて、一緒に帰ろうといったが、友達と約束があるからと断られ、俺は一人で帰った・・・なのに?
「ちょっと待って、あの日は確か、帰りは友達と約束してるって・・・」
「うん。だから、伊藤先輩と約束してて」
「いやいや、伊藤さん玲の友達じゃないでしょ?」
「うん、だけど、伊藤さんが宗ちゃんにはそう言ってほしいって」
俺より伊藤さんのいいなり?
「で、付き合ってほしいって」
「は?そんなの聞いてないよ?」
「だって、私、お断りしちゃったから・・・そんな話したら、引退だってわかってても、宗ちゃん、伊藤さんと気まずくなるでしょ?」
そんな配慮いらないんだよ!
「だから、『三井には内緒にしておいてほしい』って」
しかも伊藤さんからの配慮?
「でも、もう時効かと思って」
玲がにっこり微笑んで弁当を頬張った。
伊藤さん、俺の玲に手を出したことに時効は存在しませんよ?




