試験結果のふたり
試験結果のふたり ―――おまけの試験返却後―――
「宗ちゃん!宗ちゃん!」
バイトの待ち合わせのために駅で待っていると、玲が遠くから俺を見つけて走ってきた。
「私、学年1位になったの!」
「は?」
玲が俺に見せたのは高校最後の期末試験の結果順位がかかれた小さな紙のリボン。
現代国語 1
「すごいけど・・・」
数学 260
総合 189
「ねえ、玲」
「ん?」
「玲の学年って全体で300人くらいだよね?」
「320人くらいいるよ」
「・・・・・・」
もういいか。終わったことなんだし。それに、玲は文学部だから、もう一生数学に縁はないだろう。俺はそう思って長かった玲の専属数学教師生活が報われずに終わったことに納得した。
「バイト行く前にコンビニでお菓子買ってっていい?」
「うん、だめ。俺この前遅刻したからその分今日早くいきたいから」
玲のお願いをあっさり却下して俺は足早にバイトに向かった。
「お、玲ちゃんすごいね!じゃあ、ご褒美にクッキー買ってあげよう」
バイト先で藤堂さんにテスト結果を報告してクッキーを買ってもらっている玲。
「藤堂さん、あまり甘やかさないでください」
「なに言ってるの、三井くん。女の子は甘やかすためにいるんだよ」
なんて藤堂スマイルで言ってくるんだから・・・俺は藤堂さんみたいに甘くないからね。
「はい、玲ちゃん」
クッキーを手渡された玲はものすごく幸せそうに微笑んだ。
そして・・・。
「わぁい!藤堂さんとても大好き!」
・・・俺はついに、杏仁豆腐でもスペシャルチョコレートサンデーでもなく、生身の男に負けた・・・
藤堂さん、必ず勝ちます。近いうちに。




