汝、ニート道の果てに何を見つめる?
僕ちんはニートだよ。
今年で31才のニートなのだ。
この口調を変だと思う?
思うよね?
実はこの口調は、【魔法少女あたっくいんまいふぇいす!】から影響されたものなのだあ♪
そして、今日も僕ちんは目をさます。
さますのだぁ。
「ママ~、朝ごはんある?」
「あら、歩太ちゃん、起きたのね。午後の5時起きなんて、今日は早いのね」
「うん、最近オナ禁してるからね。調子がいいんだよ」
「あら、そうなの?偉いわね~」
「うん!ありがとうママ」
「うふふ、朝ごはんはいつも通り壁に衝撃が走ったら、持っていくわ」
「うん!わかったのだぁ♪」
僕ちんは、魔法少女あたっくいんまいふぇいす!のオープニングソングを鼻で歌いながら、自分の部屋へ戻った。
ギシギシと椅子に悲鳴を上げさせながら、パソコンの前に腰かけた。
手慣れた感じで、パソコンに電源を入れ、待っている間に、壁を殴った。
ドンと家に震動が響き渡る。
「むむっ!この振動の波数!?もしや、魔法少女あたっくいんまいふぇいす!の第86話の、アミニルちゃんが放った、LOVEラブ光線と同じではないか!?某有名掲示板で確かめなくては!」
そう言うと、僕ちんは掲示板へアクセスしたのだ!
したのだぁ!
そして、目をやると、とあるスレッドに目が止まった。
【実際ニートって大変だよなwww】
むむっ、
これは、共感できる!
僕ちんはすぐに、そのスレッドに飛び込んだ。
そして、書き込みをチェックチェック♪
【ななーし1:確かにな。実際相当精神強くないと、ニートはできんわ。マジで…
ななーし2:そうそうw
会社員やってるような普通のやつらにはできねーわw
ななーし3:↑半芝帰れ
ななーし4:ぶっちゃけ俺らってある意味選ばれてるよな
ニートになるにはかなりの勇気いるしさ
ななーし5:→→4
俺も最近マジでそう思うわ】
こ、ここれは!?
さすが同士だけあり、皆よくわかってるではないか!
共感できるぞ!すごく、共感できる!
僕ちんもなにか書き込も!
【僕ちんななーし:辛いよな
ななーし6:以上、負け犬の遠吠えをお送りしました】
な、ななななぬーーー!!!
な、なんなんだ!
この、ななーし6は!?
負け犬だと~!
許さないぞ!
【僕ちんななーし:→→6
そんな言い方はないんじゃないかな!?
ななーし2:→→6
こいつ最高にあほwww
ななーし3:↑半芝帰れ
ななーし6:いや、どう考えても働いてる人の方が大変に決まってるから
】
くそっ!
こいつは、僕ちん達の苦労を理解できないんだ!
もう、魔法少女あたっくいんまいふぇいす!の振動なんかどうでもいい!
こいつを叩いてやるぅ!
【僕ちんななーし:→→6
ニートだって大変なんだよ
暇があるから昼夜逆転生活になって健康に悪いし
動かないから太りやすくなる
今は138キロにおさまってはいるが
昔はひどい体重だったんだ
ななーし6:全部自業自得じゃねえか豚
ななーし7:豚wwwわろたwww】
く、くくっ。
ぼ、僕ちんは豚なんかじゃないぞ!
「はい、朝ごはん。今日は歩太ちゃんの好きなアイスクリーム丼、とマヨネーズジュースよ」
「やったあ!おかわりある?」
「ええ、たっぷりあるわよ」
「やったー!頂きます」
僕ちんは我慢できずに、直接口で丼をむさぼり始めた。
「はふん、くちゃくちゃ、ふん、ふふん!」
うまいー!
すごくうまい!
【僕ちんななーし:俺は豚なんかじゃない
ななーし6:あっそ。私には関係ねーけどな】
っ!
私?
こ、こいつまさか!
お、おお
おんにゃの子?
うほー!!!
【僕ちんななーし:→→6
おっぱいup
ななーし3:はよ
ななーし2:はよ
ななーし1:パンツ脱いだ】
どうやら、僕ちんのオナ禁はここまでのようだ。
結局期待するだけさせて、upはなく、僕ちんは魔法少女あたっくいんまいふぇいす!の同人誌で事を済ませた。
そして、玄関から音がした。
一日で一番嫌なときがきた。
「あら、あなたお帰りなさい」
「ああ、歩太はまた部屋か?」
「え、ええ。そうよ…」
「わかった。行ってくる」
そして、僕ちんの部屋まで足音がしてきて、ドアが開かれた。
「歩太話がある」
「………」
「そこに座るぞ」
僕ちんのベッドに腰かけた。
「部屋汚ねえな。まあ、いい。それより歩太、いつまでこんな生活続けるつもりだ?」
毎日聞く同じ質問。
もう、聞きあきてしまった。
「い、今は、アニメにはまってるから、それに飽きたら、仕事探すよ…」
「アニメ?どんなアニメだ?」
「せ、戦闘系だよ…」
「戦闘?銃で殺し合うのか?」
「ち、違うよ!そんなに物騒なやつじゃないんだ」
「じゃあ、どんなやつなんだ?」
「主人公が、魔法で敵を倒すんだ…」
「へえ…。そのアニメの名前はなんだ?お前のはまってるというアニメを知っておきたいからな」
「魔法…あ…くいん…ふぇ…す」
「ん?なに?あまりよく聞こえなかった」
「魔法少…あたっくいんま…いす」
「魔法少なに?聞こえないよ」
「魔法少女あたっくいんまいふぇいす!」
「ま、魔法少女!?お前は魔法少女のアニメにはまってこんな生活をしているというのか?」
「う、うん…」
「そ、そうか。わかった…。取りあえず、今日はこれ以上なにも言わない」
そう言って父は、立ち上がり、部屋のドアへと向かった。
ドアをあけ、そして、最後に
「だけど、もうお母さんに負担をかけるのはよしてくれ。お前の将来を心配して、最近あまり眠れていないんだ。アニメとお母さん、どっちが大切か、歩太の名前をもっているお前なら分かるはずだ」
と言い残し、ドアを閉めた。
そして、しばらく僕ちんの部屋は静寂に包まれた。
その静けさの中で、僕ちんはお母さんの一つの言葉を思い出した。
あれは、僕ちんの20歳の誕生日の事だった。
「今日で歩太ちゃんも、もう20歳ね」
「ああ、今日で僕はもう大人だよ」
「いいえ、違うわ」
「えっ?だって、20歳っていったらもう大人だろ?」
「年を重ねたからと言って大人になれる訳じゃないのよ。自分の足で、自分で決めた道を歩く人を大人って言うの」
「自分で決めた道を、自分で歩く…。めんどくさそうだな」
「大丈夫、歩太ちゃんならきっとできるわよ」
「ど、どうしてそう思うんだ?」
「私達が、そう信じてるからよ」
歩太。
急いで、走らなくてもいいから。
一歩づつでいいから、
歩く男になれ。
前へ進む男になれ。
僕ちんは再び、パソコンの電源を入れた。
今度は、魔法少女あたっくいんまいふぇいす!のサイトでもなければ、ましてや、掲示板なんかでもない。
自分の道を作るための、第一歩を開いてみせた。
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「おい!歩太ー!こっちの下書きはどうなってやがるんだ!」
「す、すみません、アミニルちゃんのやつがまだ終わってなくて…」
「言い訳はいいから、さっさとやれ!」
「はい!」
そして、僕ちんは前へ進む。