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冬の冷たい風が吹き抜ける廊下。そこに飾られた扉をいくつか通りすぎると、そこは我が家だ。扉の前に立つと、僕はコートのポケットに手を入れ、鍵を探す。鍵はすぐに見つかる。手にした鍵を鍵穴に差し込む。
「あれ?」
僕は中に入れなかった。確かに、僕は鍵を回し、開錠した。しかし、いくら引いても扉は少しの隙間を作るだけだった。扉には、チェーンがかかっていたのだ。
「おーい!開けてくれよ。」
僕は、中にいるはずの彼女に呼びかける。いつもなら、チェーンなんかかけていないはずなのに。もしかしたら、何かのテレビ番組を見て、影響を受けたのかもしれない。
「ちょっと待って!とりあえず、外で待ってて。」
彼女の声が中から聞こえてくる。彼女は、姿を見せなかった。とりあえず、言われた通り扉を閉め、外で待つことにする。何もせずに立っていると、冬の空気が一層冷たくなって感じる。
寒いときに出る白い息ってさ、なんかあったかそうだよね。
これは、彼女の言葉だ。僕は試しに、大きく息を吐きだしてみる。すると、白い息がモワッと溢れ出し、やがて消えていった。なんだか、一層寒くなった気がする。
でもさ、あの白い息を見ているとさ、ああ、やっぱり寒いんだなとか思っちゃって、もっと寒く感じるよね。
これも、彼女の言葉だ。僕は、少し後悔する。
やがて、チェーンの外れる音が聞こえ、扉が開く。隙間から暖かそうな光が漏れ出す。その隙間から、彼女が顔を覗かせる。
「お待たせ。どうぞ、中へ。」
そう言うと、彼女は再び扉を閉めた。僕は扉を開ける。
「ただいま。」
「おかえり。」
中に入ると、動きが止まってしまった。彼女の格好に驚いたからだ。彼女は、ヘッドホンを首にかけ、体のラインが強調されるような服を着ていた。どうやら、ボーカロイド(というキャラクター)の格好のようだった。いわゆる、コスプレだ。いつもは束ねている髪も全て下ろし、色は黒であるものの、そのボーカロイドを意識しているようだった。
「コスプレ?」
「そう!どう?」
彼女は両手を開いて、くるりと一回転する。その動きに合わせ、黒いロングヘアーが舞う。
「どうって言われても――」
「それより、お腹すいたでしょ。ご飯できてるよ。」
彼女は僕の手を取り、僕を引っ張る。僕は、されるがまま部屋の奥に連れて行かれる。




