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姫様勘弁してよっ! ~異世界戦国奇譚~  作者: 木庭秋水
第三章
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第百二十三話 ろりきょぬーみっけ でござる

 焼き鳥屋の親父からそんな話を聞いた後、俺たちは再び町見物へと戻った。


 町の外から見て気になっていた物見櫓のような物も見た。やはりというか、火の見櫓と兼ねた櫓であり、門の横にあった弓櫓の方を物見櫓として使う様な事はまずないとの話が現場の兵から聞けた。しかしもっと驚いたのは、弓櫓の迎撃対象が本当に野犬だった事だ。最近増えたらしく、それでわざわざ門の横に小さな櫓を増設したそうだ。その前までは、あの小さな弓櫓一つなかったとの事だった。


 習いとは怖い物だと、本気で思った。


 あの、俺達の世界からすると馬鹿げた戦の作法といい、一度そういうものとして刷り込まれてしまうと、そういうものになってしまうものなのだと深く考えさせられた。


 まあでも、俺たちの世界でだって、確か騎士道真っ盛りの西洋では、似たような価値観があったと読んだ記憶もあるし、そう驚く事でもないのかもしれない。ただ、こちらの世界のそれよりも、もっとずっとどす黒い物だったようではあるが。


 なんにせよ、ここのところ砦ばかりにかまけていたが、この町そのものも防御力はほぼゼロであるという事が再確認できた。今日は、主に町の警備態勢を強化する為の視察のつもりだったが、それと合わせてやらなくてはならない仕事ができたという訳だ。


 労働基準法もなければ、ブラック企業という言葉もないこの世界――死ぬ時は腹上死な異世界トリップを希望していた筈なのに、戦死どころか過労死しそうである。


 まったく笑えない話だった。


 まあ、それでもだ。町の防衛力強化計画の作成に関しては、四方の砦の建設改修計画の立案よりは遙かにマシだと思えるので、それが救いと言えるだろう。


 砦と異なり、外周の柵は木製ではあるもののすでに町全体を囲ってあるし、町の主要門である南北の門には、すでに小さいながらも弓櫓が設置されているのである。


 当面に関しては、町の外周の地形を見ながら、外から町を攻撃してくる敵を想定した迎撃施設を増設すれば良いだろう。


 あくまでも比較論ではあるが、経費も砦の方と比べれば大した事はない。


 計画も予算取りも、実際の工事や工期の決定なども、すべてがずっと楽なものになるだろう事は明白だ。


 もっとも、町の方も最終的には四方の砦に合わせて堅牢な防御機能を持たせるつもりなので、本格的に町をいじる時には、こんな温い事は言ってられないだろう。


 その時には、逆に四方の砦など比較にならないほど大変な事になるのは間違いない。が、それは東西の砦を虎狼関化するのと同じくらい、ずっと先の事である。今の問題ではない。


 それに、それをおいておいてもである。


 どう考えてもこれらの話って、女子供を連れて周りながら検討するような話ではないよね?


 自分で自分に突っ込みが入る。お菊さんを誘う為に町の検分という建前を使ったが、今日の本旨はお菊さんとのデートである。たとえ千賀や信吾が一緒にいようとも、お菊さんと一日楽しく過ごしましょうという本来の目的を失ってはいけなかった。


 つまり、小難しい問題は後で考えるべきなのだ。


 どうせこの先考える事まるけで、きれいに案件が片付く日など来る事はないのだ。要するに、この案件を今日考えようが考えまいが、大勢に影響はないのである。


 さっぱりと頭を切り換える事にした。今日のところは、デート兼でやれる仕事だけにしておこうと。


 具体的には、施設の見物はここまでとし、商人と買い物客でごった返す町の中へと戻る事にしたのである。現実逃避も、時には重要なのだ。




 昼を過ぎても、町を行き交う人の量が減っていない。今朝の混み様は、朝市か何かのせいだった訳ではなく、この町の常の姿だったようだ。


 比較的人の少ない町の郊外から、町の中心に向かって歩く。もう中心部近くに来ているので、通りを行く人の量も今朝見たものと何も変わらなくなってきている。


 千賀がへばってきていた。口数も少なくなってきている。少々休憩する必要があった。平気な顔をしてはいるが、お菊さんも疲れてきている事だろう。正真正銘余裕があるのは、おそらく信吾くらいの筈だ。無論、俺もかなり疲れていた。


 茶店でもないかと、あたりを見回してみる。


 通りの真ん中であたりで、きょろきょろと周りを見回しているやけに色っぽいお姉さんと目が合った。するとそのお姉さんは、こちらを見たまま、まっすぐにこちらへと向かってきた。


 すげえ美人……。


 個人的にはお菊さん程ではないと思うが、それでも俺の心がハッスルするには十分すぎるほどに美人だった。エベレストとK2どっちが高いという質問と同じである。エベレストの方が高い。しかし、エベレストに勝てなかったからといって、K2が低い山という事にはならない。どちらも八千メートル級の山には違いないのだ。


 だがこのお姉さん……。


 どこかで見た事があるような気がしてならない。


 とは言え、いきなり安っぽい口説き文句みたいな事は言えんしなあ。お菊さんいるし。『貴女とどこかでお会いした事があるような』――なんて。まあ、多分気のせいだし、いっか。


 一瞬脳裏を過ぎる物があった。しかし、とりあえずそれは置いておく事にした。


 そんな事をあれこれ考えているうちに、その美人なお姉さんは俺たちの目の前へとやってきた。そして、ニッコリと微笑む。


 もしかして俺の時代がとうとう来たのかとさえ思える良い笑顔だった。が、そんな訳はなかった。


「お兄さん、お兄さん。茶でも飲んでいかないかい。この近くに、『三幻茶屋』って茶屋があるんだ。是非、寄っていっておくれよ」


 お姉さんは、開口一番そう言ったのである。


 あー、呼び込みか――と、一気にテンションが下がった。大きく広がった夢が爆ぜる音を、俺は聞いた気がした。


 まあ、それでも、だ。タイムリーと言えば、タイムリーな話だった。折角なので誘いに乗って、その茶屋に行く事に決めた。


 店の詳しい位置を尋ねると、お姉さんは更に良い笑顔を見せてくれた。そして、店の場所を教えてくれたのである。人混みで見えないが、『三幻茶屋』とかいう茶店(ちゃみせ)は、今いる大通り沿いにあるようだった。


 お姉さんはまだ呼び込みを続けなければいけないらしく、この場で別れる事になった。


 少々残念である。が、休息できる適当な茶店があっさりと見つかったのは良かった。


 そして俺たちは、教えてもらった店のある方に移動を開始した。




 しばらく歩くと、すぐにその店は見つかった。軒先連ねる商店街の一等地にその店はあった。


 周りと比べて建物に特徴的なものはなく、ごく普通の瓦葺き木造二階建ての店舗だった。しかし、そんな造りの店で茶店を開いているというのは、俺の感覚だと珍しく見えた。でも、よく時代劇などで見る茶店のように、大きく色鮮やかな赤の番傘のようなものと緋毛氈(ひもうせん)の敷かれた長椅子が幾セットかあり、一目で、「ああ、茶店だ」とわかるような店だった。


 かかっている看板にも、でかでかと『三幻茶屋』と書かれている。


 一階は、普通に中でも茶が飲めるようになっているようだ。店の縁の方には、持ち帰りの団子や茶葉の販売コーナーも有る。まるで、茶店というよりケーキ屋のような造りで、らしくなさを感じる。が、見える景色はしっかり和風の茶店であった。


 履き物を脱いで上がる先は畳敷きとなっており、それが二面用意されている。一つはそれぞれが勝手に座って飲める所謂”ボッチ”用だと思われ、畳しかない。もう片方は机が四脚と、衝立二枚が置かれている。こちらはさしずめ個室のようなものだろう。


「はいっ。お待ちどおさま。だんご四皿とお茶が四つね」


 店に着くと、俺たちは店先の長椅子に陣取り、店の中に向かって茶とだんごを人数分頼んだのだが、それが来た。


 俺は「有り難う」と言いながら、声のした方を振り向いた、のだが……。


 まあっ。なんとご立派です事……。


 しゃべりがおかしくなってしまう程に、大変結構な光景がそこには広がっておりました。


 注文した品を持ってきてくれた娘なのだが、童顔で大変可愛い女の子でした。


 さっきのお姉さんとはまた違う魅力を持った女の子で、年の頃は多分俺と同じくらいだろう。美人と言うにはちょっと幼いが、とても整った顔をしていた。髪は短髪で、申し訳程度に延ばした後ろ髪をリボンのようなもので束ねている。


 さっきのお姉さんとどっちがいいと男らに聞いたら、おそらくはそいつの性的嗜好のみで答えが別れるレベルである。


 だが、問題はそこではない。


 勿論、それだけでも大変すばらしいとは思う。思うのだが、その明るく健康的な雰囲気とは裏腹に、大変メリハリのあるお体を彼女はお持ちでした。


 なんつーの? まさにボンッ、キュッ、ボンッでございます。


 特に、おっぱいがもうすんばらしい。年齢のせいか、大きく膨らんでいるのに、その張りが凄い凄い。まるでゴム風船のようだった。皿をこちらに寄越す時に覗ける胸元の、なんたる絶景である事か。大変自己主張が激しくていらっしゃる。動くと、おっぱいプリンではなくおっぱいゼリーのように、ぷるんぷるんとすばらしい弾力を予感させる揺れを見せてくれるのだ。


 あれ……、重力仕事してないんじゃね?


 そう思わずにはいられない。


 さっきのお姉さんも色っぽくて凄かったけれど、こちらもまた凄い。幼い顔つきと相まって背徳的な気分にさせられる。


 どちらも、男を虜にする魅力で溢れすぎていた。


 あまり顔つきは似ていないが、姉妹だろうか?

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