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1 魔女弟子の日常


 「―――最後にエリヒ草4束だよ。」

   


 「――・・・たしかに!いつも助かるよ。――それじゃお金を確認してくれるかい?」



 「いーち、にーぃ・・・・・」



 ディアレン王国の東の小さな町ヘンデのオリオン調剤店に、月に数回薬草を卸す少女は今日も沢山の特殊な薬草を小さなポーチからいくつも取り出して納め、その見返りとして金貨と銀貨を受け取った。



 「――・・・・うん!金貨2枚と銀貨30枚。確かに受け取ったよ!」



 「それなら良かった。――丁度べーキッツ草が切れていたから卸してもらえて助かったよ!メルルまた頼むよ」



 「こちらこそ!――またよろしくお願いします!」


 

 無邪気に明るく微笑む少女メルルは、綺麗なお辞儀を披露して店を出た。



 「ふふふ・・今回は金貨2枚ももらえるなんて最高!――あ~・・・何買おうかな~」



 商店の並ぶ通りに出て待ち合わせていた男に視線を向けながらも、お金が自分の手元に沢山あるのが嬉しくて頬が緩んでしまう。


 

 「――メルル、無駄遣いはだめだぞ!おやつは3個までだからな。残りは失くさないように、ちゃんとМポーチにしまっておくんだ。――わかったか?」



 「ちょっとぉ!レイウォン!――子供扱いは酷いわやめてよ!

 私だってもう13歳のレディなのよ!おやつとかお子ちゃまな事言わないで!」 



 メルルはぷくうっと頬を脹らませて反抗する。



 「そうか?――それじゃおやつはもう買わなくていいんだな?」


 

 「え?!・・・お・おやつじゃなくてお菓子と言いたいのよ!・・・お菓子は大人のレディでも食べるからいいのっ!意地悪言わないでよぉ!」


 カラカラと爽やかな笑みをこちらに向けるレイウォンは、目が隠れそうな少し長めの艶やかな黒髪を揺らめかせながら楽しげに笑う。


 ヘンデのレディたちに美しいと評判なだけあって、蠱惑的な雰囲気が印象的なレイウォンは控えめに言っても中性的な美丈夫らしい。


 印象的なアーモンドアイの黄金色の瞳に見つめられたら、大抵のレディたちは皆頬を染めて惚けてしまう。――しかし、7歳の時からずっと一緒に暮らしているメルルにとっては、大切な家族というだけだ。――どこが魅力的なのかさっぱり理解などできない。



 「メルルは黙ってれば美人なレディなんだけどなぁ~」


 

 褒めているのか貶しているのか。――だが、レイウォンの言う通り、メルルは13歳にも拘らず、大人のレディよりも背は高めで、大人男性の平均の背丈より少し高いレイウォンとあまり変わらない。


 『見た目は大人、中身は子供』というやつだ。

 

 おかげで子供っぽい振る舞いをすると、すぐレイウォンに揶揄われてしまう。

 この見た目のおかげでお仕事が円滑に進めることができる為役立ってはいるが、必ずレイウォンが保護者面してついて歩くのだ。

 気ままに歩けない不満はある。

 だが、自分の為にレイウォンがしてくれているというのはわかっているので文句も言うつもりはない。


 親の顔を覚えていないメルルにとってレイウォンは父親のような存在なのだ。



 「今日は何買おうかな~」


 

 ウキウキ心を躍らせ眺めるのは、様々なキャンディやお菓子がびっしり並べられえたピンク色のスイーツワゴンだ。

 メルルだけではなく、ヘンデの町の子供たちも一緒に眺めている。――しかし、傍から見ればメルルは子供に引率する大人にしか見えない。――そんなメルルの姿を、いつも涼やかな微笑みでレイウォンは後方で保護者面をして見守っている。



 「――何を買ったんだ?」



 「えーっとねぇ・・このキャンディとこのちっちゃなドーナツとぉ・・あ!この小っちゃなキャンディがたっくさん入った瓶詰は、レイウォンとメリーの分ね!あと――」



 満足気に買ったものを紹介するメルルに、レイウォンは優しく頷きながら頭を撫でた。



 「――別に俺たちの分はかわなくていいのに」



 「え?なんで?ネリーにもレイウォンにも食べて欲しいもん!」



 「その金は――・・メルルが集めた植物を売った金だろ?・・自分の為に使えよ!」



 「え?・・・・私は自分の為に使ってるよ?」


 

 「はぁ?・・・・どこがだよ!」



 「皆で食べたら美味しいもの!だから二人の分も買ったんだよ?」



 さも当然とばかりに笑顔で告げるメルルを、レイウォンは眩しいものを見るように目を細めて呆れ顔で微笑んだ。



 「――ならありがたくいただくよ!ありがとうな」



 「どういたしまして!――さ、いっぱいお店も見て回ったし、そろそろ帰りましょ!きっとネリーも待っているわよね!」

 


 「それがいい、ネリーは心配性だから極力心配かけない方がいいだろう。そうしないと飛んでくるだろうからな!――来たら煩いから早く帰るぞ!」



 苦い表情を浮かべネリーの顔を思い浮かべながらレイウォンは話す。



 ヘンデから会話を楽しみながらしばらく歩くと、シェルム森林の入り口が目に入った。



 王都から10キロ程離れた場所に存在するシェルム森林は、育ての親であり師匠でもある魔女ヴィセラの魔力によって守られている不思議な場所だ。

 ヴィセラのマナが溢れているおかげで、植物は他とは違う進化を遂げこの森でしか育たない特別な植物が多い。

 今日森から5キロ程離れたヘンデのオリオン調剤店に卸した植物の多くが、シェルム森林以外では育たない貴重な植物ばかりだ。


 本当はお金が稼げるので毎日でも卸しに行きたいところだが、あまり悪目立ちすると狙われるという理由で月に数回と決めて卸しに行っている。


 何故かシェルム森林には不法侵入者しようとする者が多く、ヴィセラは結界を張っている。

今ですら外出する度にシェルム森林に挑む者たちが何人もいるので、現在進行形で結界は張られている。


 条件というのは―――

 ディアレン国の民であること

 心身共に強い者であること――だ。


 メルルには内緒にされているが、メルルに害意を持たない者であること。と、いうのも条件には含まれていた。


 条件を満たしているかを確認するのは森自体だ。


 シェルム森林に侵入しようとしたものが現れると、森の木々や植物が審判者として彼らの前へ妨害しに現れる。


 

 ちなみにメルルがこの森に来てから、侵入に成功したものは見たこともない。




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